第21話 神話級一同「み、見えない?!」
セイはテヌドットとの決戦に備え、システムと相談兼作戦会議を進めていた。
「テヌドットの[魔神剣騎士]って具体的にはどんな内容なんだ?」
『神話級スキル[魔神剣騎士]は、剣を中心にこの世のあらゆる武器を使いこなせるようになると同時に、魔力を攻撃にこめると、因果を無視できるといわれています。しかしテヌドットの場合、無限の回復を司る光属性と、術式の崩壊を司る闇属性の正反対の二つの属性を操るため、より強力な力を行使する場合があると思われます』
「何か対策ってある?」
『2つのスキルを合成し、新たな攻撃スキルの作成を推奨します』
え? スキルって作れるものなの?
『[神々の業]により可能です』
「合成元はどうするんだ?」
『EX神話級[神格化]の取得により身体強化系スキルは今後不要と思われます。よって、伝説級[超:身体強化]とEXエピック級[大陸間走者]を合成します』
『2つのスキルの合成により、EX神話級スキル[明光の一刀]の作成が完了しました』
おお。みるからに一撃特化の攻撃技だ。
『[明光の一刀]は至高の斬撃であり、斬撃系スキルの中で最も大規模かつ高威力です』
「これならテヌドットの[天地光滅斬]にも対抗できるな……」
こうしてセイの、全次元の頂点を決める決戦に向けての準備は整った。
すると入り口の方から激しい声が聞こえた。
「おい! セイ! 聞こえるか?! 俺だ! ガイだ! おいっ! ちょっと話をさせてくれ!!」
何かあったのだろうか。
「彼は俺の知り合いだ。通してやってくれ」
「は、はい」
ガイを止めていたスタッフは、セイの一言でガイを通した。
「やばいんだ! お前の探していた老人、いやクラークが今朝リーンカムに向かって行ったんだ!」
セイは突然の事に一瞬困惑したが、まずはガイに尋ねた。
「待て、俺の探していた老人は、クラークというのか?」
ガイは慌てながら続ける。
「ああ! もしかすると武闘大会で何か企んでいるかもしれない! それを知らせないとと思ってな」
セイは冷静になり答えると同時に、思い付きで提案をした。
「分かった。一応警戒しておく。
……そうだ、せっかくだし試合を見ていかないか? これから決勝戦なんだ」
「え? あぁ……そうだな。じゃあそうさせてもらおう。いや決勝戦?!」
その後、ガイが落ち着くまでセイは状況の説明に全力を注ぐのだった。
対してその時、テヌドットは瞑想していた。
(限界まで集中力を高め、決戦に備える!!)
約10分後、ついに決勝戦が始まろうとしていた。
実況がこれまでにないほどの興奮でマイクを強く握りしめている。
「さあ!! ついに全次元最強が決まろうとしている!」
「私もこの前代未聞の試合の実況ができて光栄に思っているぞ!!」
「そして皆さんお待ちかねの対戦カード!準決勝終了後にEX神話級が判明した【運命の支配者】! セイ!!!
対するは、今大会3連覇中! 人類最強の【魔神剣騎士】!! テヌドットォォォォ!!」
「おお!! やったれぇ! EX神話級!」
「人類最強の力をみせてやれー!!」
観客たちはこれまでで一番の盛り上がりとなっていた。
2人が勇ましい姿で入場すると共に、会場は更なる熱気が溢れた。
「やっと決着をつける時がきたな」
テヌドットは鋭い目でセイを睨みながら、双剣を構えた。
「最初は剣術勝負とでもいこうか…!」
セイは氷の剣を生成し、構えた。
「両者準備はできたな?! では試合開始!!」
その瞬間2人の姿は一瞬消えたように見え、現れたのは会場の中央だった。
「[破壊不可]! [術式崩壊無効]!」
[永氷の支配者]の支配権能を発動し、セイはテヌドットの双剣を受け止めた。
「ガキンッ!」
鍔迫り合いとなったが、セイは序盤からスキルを連続で発動した。
「[神格化]!」
力の増幅によりテヌドットを弾き飛ばしたセイは、追い討ちをかける。
「追い討ちだ! [明光の一刀]!!」
青白い斬撃がテヌドットに襲い掛かる。
彼はそれが防御、回避が間に合わない事を一瞬で悟った。
「相殺して見せる! [天地光滅斬]!!」
いきなり互いの奥義とも言える最高級の威力を持つ技がぶつかりあった。その衝撃は第1次元全体に広がり、会場では巨大な力、魔力の衝突により爆発が起き、テヌドットとセイを巻き込んだ。
セイは氷の波で防ぎ、テヌドットは持ち前の防御力で耐えて見せた。
「お互いの一撃が激しく激突!! しかし両者とも耐えているぞ!!」
『[術式崩壊無効]を、マスター、セイに付与完了しました』
「ちょっと遅いが、まだナイスタイミング!!」
これでテヌドットの[ゾルディクス]の術式崩壊を無視できる!
2人は再び激突し、[魔神剣騎士]の剣術と[究極者]の剣術が交差する。
セイは剣術と同時に[永氷の槍]を発射しながらテヌドットに襲い掛かり、対するテヌドットは[永氷の槍]とセイの剣を全て双剣と体術で防ぎ、避け続け反撃を狙う。
ハイレベルな戦闘に、素人目線では発射前の槍が生成される瞬間と、氷の剣の青色の斬撃と、双剣の金と紫の斬撃が飛び交っている事しかわからない。
「なんだ?! 何が起きてるんだ?!」
選手控室のモニターの前にもアリスやミカ、セルトやハルミン、木田やマーシュが集まり観戦していたが、全員目で追いつくのが限界だった。
「なあ、見えるか……?」
「…槍と斬撃しか見えません……」
「落ち込むことはない。私も見えん」
木田とマーシュは互いを慰め合い、全次元最高の戦いから学びを得ようとしていた。
実況が困惑しながら叫ぶ。
「な、何も見えない?!」
「どうだ? なかなかいいだろう? つまらない世界最強は引退させてやるよ」
セイは、久々の強敵との戦闘に興奮しているテヌドットに話しかける。
「フッ。そうだな。なかなか面白い!!」
「そろそろケリをつけるぞっ!!」
セイは勢いよく叫び、[赤血の鳥籠]の発動準備に入った。
テヌドットもそれに応えるように、[天地光滅斬]の発動準備に入る。
実況や観客達は、2人の姿をようやく確認できた。が、2人はすでに最後の技の準備が整っていた。
「これは……ついに決着がつくぞ!!」
「[赤血の鳥籠]!!」
「因果を超えろ!! [天地光滅斬]!!」
天地光滅斬がセイに発射された時、テヌドットを覆うように生成される赤い鳥籠が、斬撃を防いだ。
「とった!!」
冷や汗をかいたセイがニヤつく。しかし人類最強はそれでは終わらなかった。
「まだだ!」
テヌドットは思い切り叫んだ。すると防がれて消滅したはずの天地光滅斬がセイの目の前に現れた。
「なっ?!」
『[魔神剣騎士]で因果を無視したため、再び斬撃が現れたと思われます』
「そういうのいいから何か対処法あるのか?!」
『マスター……簡単なことです。支配権能を使えば”すぐに”対処可能です』
「あ。そうだった」
その時、鳥籠がテヌドットを完全に覆い、斬撃が放たれる寸前となっていた。
(勝った!)
セイはすでに支配権能を起動させていた。そして勝負がつこうとした瞬間、
どこからか現れた青い蝶の群れが鳥籠と斬撃を消滅させた。




