第19話 支配者vs人類最強
「ついに準決勝! 支配者対人類最強の【魔神剣騎士】だ!
前回大会ではテヌドット選手が支配者スキルの支配能力を超越し、因果を超えた力を示したが、今回はどうか?!」
セイは緊張感を持ちモニターを睨んでいた。
(おそらく俺は決勝まで進める。つまりこの試合に勝った方が決勝での俺の相手となる!)
ちなみに2回戦目、セイは[永氷の槍]一発で勝った。
「では! 2人の入場だ!」
「マーシュ。遠慮なく来い!」
テヌドットは勢いよく叫んだ。
「はい! 全力でいかせていただきます!」
マーシュも勢いよく応え、構えた。
マーシュも新人ではあるが、神話会のメンバーだ。
「準決勝! 試合開始!!」
試合開始から数秒間、沈黙が続いた。
しかしその沈黙はすぐに終わった。
両者が同時に攻撃を仕掛けたのだ。
テヌドットはゾルディクスを振りかぶって前方へ踏み込む。
マーシュは[岩の鎧]を纏い前方へ踏み込んだ。
第1回戦が終わった後知った事だが、[岩の鎧]は[大地の支配者]のセットスキルらしい。セットスキルは基本的にほぼ全ての支配者系スキルに付属しているスキルで、魔力の消費が少なく、支配権能を掛けやすいという特徴がある。
しかし何の支配権能を掛けたかは見た目ではわからない。
直後、2人の神話級がぶつかり合い紫と金の衝撃波が走った。
「ドゴォォーーン!!!」
土埃が収まっても、2人は硬直状態だった。
しかし、テヌドットは双剣のため片手で、両手を使っているマーシュを抑え込んでいた。
「ふむ。以前の1,36倍は強くなったな」
マーシュはニヤつき応えた。
「光栄ですっ!!」
マーシュはなんとかテヌドットを押し返し、多数の岩の柱攻撃と同時に距離を詰める。
「ゾルディクス!!」
テヌドットは叫び、岩の柱を切った。術式崩壊を狙ったのだ。
しかし岩の柱は無傷で、再びテヌドットに襲い掛かる。
「岩に[術式崩壊無効]と[斬撃無効]を付与しておいて良かった……!」
マーシュは引き続き岩の柱で攻撃するとともに、柔軟な岩の触手を形成、マーシュの近接攻撃を含め3つの方法でテヌドットを追い詰めた。
「はあ、やはり[支配者]は厄介だな」
「はああ![クラック・ショット]!!」
そう言ってマーシュは岩の柱をぶつけ、テヌドットに密着した状態で破裂させた。
しかしテヌドットは落ち着いて、ゾルディクスで防ぎアミリクスで煙の中から斬りかかる。
マーシュは咄嗟に何本もの岩の柱と触手、そして岩を纏った拳を交差させアミリクスの斬撃を防いだ。が、その衝撃はほとんど弱まらずマーシュへ牙を剥いた。
「ガハッ!! ゲホッゲホッ!」
しっかり防いでも思い切り衝撃を受けたマーシュは、少し血を吐いたが、
「さあ、続けましょう!!」
ハイテンションの実況の声が響く。
「両者全く譲らぬ戦い! しかしマーシュ選手はかなりのダメージだ!」
数ヶ月前、マーシュはスキルも持たぬ孤児だった。
しかし、ある日孤児院はリベルの襲撃を受けた。
ほとんどの孤児達が死んだ中、マーシュは勇気を振り絞りキッチンの包丁でリベルの1人を刺し殺した。
その後助けを求める為教会まで走って逃げたら、たまたまスキル取得の儀式が行われていた。
「リベルへの復讐のために使えるかもしれない」
とスキルを授かろうとすると、周囲に衝撃波が走る。
『ゴッドシステム、インストール完了。
神話級スキル[大地の支配者]を取得しました』
『セットスキル[岩の鎧]を取得しました』
それを聞きつけてやってきたのが、テヌドット様だった。
テヌドット様は困惑する僕を落ち着かせ、事情を聞いた後、
「私の所で鍛えないか?」
そう提案してくれたのだ。
それからはスキルの使い方、基礎的な能力向上、スキルを応用した戦闘方法などを学んできた。
「その恩を!! 感謝を!! 今ここで示す!!」
「はあぁぁぁ!!」
「何?! 」
テヌドットは地面に打ち付けられ、立ち上がれない様子だった。
しかしそれは会場周辺の人間全員が影響を受けている様だった。
「うわああ?!」
「なんだなんだ?!」
「まさか?! マーシュ、お前…… この星を変形させたか?!」
マーシュは息切れしながらも応える。
「ご明察ですっ!」
そう。マーシュは[大地の支配者]の力でこの星を変形させ、この闘技場の重力を何倍にも強くしたのだ。
マーシュはそのまま地面を変形させ岩の牢獄で、動けないテヌドットを閉じ込めた。
「支配権能![斬撃無効]![破壊不可]!」
マーシュは岩の牢獄を段々小さくしていき、テヌドットを圧迫しようとしたのだ。
その時、
金と紫の斬撃が岩の牢獄から放たれ、マーシュを切り裂いた。
「ドォォォン!!!…………」
テヌドットは[天地光滅斬]で全ての支配権能を無視して岩の牢獄を破壊したのだ。
「なんと! テヌドット選手の[天地光滅斬]が支配権能を破ったぁぁーー!!」
マーシュは起き上がる事ができず、そのまま気を失った。
「マーシュ・イナトリス選手戦闘不能!! 決勝へ進むは! テヌドット選手だぁぁ!!」
テヌドットはマーシュを起き上がらせ、共に治療室へと向かった。
「強くなったな。大したものだ」
神童、天才、神の使い、様々な異名で人々に知られた1人の少年の今年の武闘大会は、幕を閉じたのだった。




