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第15話 圧倒

 雲一つない晴天。都市次元首都の中央部に実況の声が響く。

 「第2試合の対戦カードは……!

 【不滅の吸血鬼】ヴォルトデア・ドスタレトと!! 【夢物語】セフィー!!」

 「先に伝説級のセフィーから解説しよう! セフィーの[夢物語]が発生させる[夢霧]を吸い込むと、敵に強力な弱体化と状態異常を付与できる!! しかもこの[夢霧]は自身の強化もできるそうだ!」


 「続いてドスタレトだ!! [不滅の吸血鬼]はほとんど[支配者(ドミネーター)]系のスキルと変わらない性能だ! 血を自在に操る姿は正に【不滅の吸血鬼】! 神話会一の狂人の実力やいかに!?」


 すると会場の入り口からコツコツと足音が響く。

 「狂人とは心外ですねぇ……」

 にやりと不敵な笑みを見せながら登場したのは、【不滅の吸血鬼】だった。


 「うぅ……緊張するけどやってやる!」

 反対の入り口から姿を見せながらセフィーも入場した。


 「両者そろったな? それでは! 第2回戦開始!!」

 「おおーー! やったれドスタレトお!」

 「神話級を倒しちゃええ!」

 再び歓声が会場を包み込むとともに試合が始まった。


 「[夢物語]!!」

 先に行動を始めたのはセフィーだった。

 会場に怪しげな霧が立ち込める。


 「ザアアーーーー」

 すると雲一つなかった空が、いつの間にか雲に包まれ、()()()()()()()()()

 セフィーの霧は雨で消え、二つの音が会場に響いた。


 「パチンッ ザシュッ」


 それは一瞬の事だった。


 「キャアアアアアア!!!」

 勝負はついた。だが会場は歓声ではなく悲鳴でまみれた。


 「はあ…本当にあいつは…… やはり出場を許可するんじゃなかった……」

 テヌドットは頭を抱え絶望に近い表情をしていた。


 あの瞬間、ドスタレトが指を鳴らした瞬間、「パチンッ ザシュッ」 血の雨粒から無数の棘が、目に見えない速度で生え、セフィーを貫いたのだ。セフィーの頭と心臓を。彼女は血を流し立ったまま息途絶えていたのだ。


 この大会では万一死人が出た場合、ほとんど罪に問われない。そもそも死傷者が出ることがかなり稀であり、その対応が少し雑なのがこの大会の問題点だと巷では少し話題になっていた。


 すぐにテヌドットが登場し場を収めた。

 「観客の皆様、この度は神話会メンバーがご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございません。この件については、大会終了後本人に厳重注意および何かしらの刑を執行できるよう調整いたします。

 また、今大会の死傷者が出た場合の対応についても大会終了後、調整を進めてまいります。また、私が会場にいながらもこの事態を予測、阻止することができず申し訳ありませんでした」


 「私はなぜ罰されなければならないのでしょう? これは戦いなのでは? ならば命を懸けるべきでしょう!」

 会場は完全に凍り付いた。

 「お前……」テヌドットは怒りよりも呆れていた。

 同じくセイも呆れていた。

 「これが神話会一の狂人か……テヌドット、あんたも大変だな」

 「貴様に同情される日が来るとはな」


 その後、テヌドットとドスタレトはリーンカム警察の事情聴取を受けることになった。

 「えー……では、まずテヌドットさんはドスタレトさんに出場許可を出す際、こうなる事は予想出来なかったのですか?」

 テヌドットは静かに答える。

 「はい。武闘大会に出場したいと何度も何度も言ってきましたが、ドスタレトの性格はよく分かっていたので、許可を出す前に誓約書を書かせたんです。」

 「その誓約書の内容は……?」


 テヌドットは丸めた紙を取り出し、紐を解き広げた。

 そこには、[【不滅の吸血鬼】は武闘大会において悪質な殺人及び虐殺を行わないとここに誓う。これに違反した場合、ドスタレトはどのような罰でも受ける]と書かれており、ドスタレトのサインも確認できた。

 警察は続ける。

 「ドスタレトさん、この事に間違いはありませんね?」

 ドスタレトは不敵な笑みを見せながら答える。

 「……はい」


 警察は疑問に感じ、ドスタレトに尋ねた。

 「ではなぜ罰を受ける事になるのに殺人を行ったのですか?」

 ドスタレトは笑みをこぼしながら話した。

 「あれは決闘の結果としての「死」であり、決して悪質なものではありませんよ」

 その言葉に、その場の誰も言い返すことが出来なかった。

 誓約書の「悪質な殺人」という表現は曖昧であり、加えて大会の規則でも「死」に関して曖昧だった事もあり、誰も反論出来なかったのだ。


 数時間後、ドスタレトを除く神話会と大会運営、そして都市次元長で会議が行われた。

 「やはりもっと「死」に関する規則をはっきりさせなければいけなかった!」

 大会運営の幹部は、信用に関わると必死だった。

 「ねー考えるのめんどくさいから帰っていいー?」

 ユナはゲームしながら言った。

 「じゃあ帰れ」

 テヌドットは冷たく返し、会議を続ける。

 「やはり故意的でもそうでなくとも殺人は刑事的罰則を課さなければ行けませんね」

 その場のほとんどはこの意見に賛成し、最終的にこの事が発表された。


 「第2試合を含め、これ以降の試合で故意的でもそうでなくとも死傷者がでた場合、逮捕は可能になる」


 これによりドスタレトは失格になり、逮捕されていった。


翌日、雨が降ったことによりドーム天井を閉じての開催となった武闘大会2日目は、テヌドットとミカが余裕で勝ち上がったが、神話級がこの2人しかいなく、昨日程の歓声はなかった。

強いて言うならテヌドットが登場した時に少し歓声が上がった程度だった。


そして3日目、今日はきちんと晴れていた。

今日はついに俺の出番。

俺はこの大会の決勝でEX神話級である事を公開する。

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