第10話 支配者と神話会と戦艦と
[鋼鉄の支配者]と[永氷の支配者]の戦闘は、一般人は目で追えないほど白熱していた。
「投降しなさい! さすれば貴方の命は救われ、新世界の創造をその目で見ることができるでしょう!」
しかしセイはそんなものには耳を貸さなかった。
「投降しろ? そんなのは俺のセリフだ!」
セイの[永氷の槍]とブラトの鋼鉄がぶつかり合う。
「フフフ……ハハハハハハ!! いいでしょうそこまで命が惜しくないのなら……貴方を再創の糧に!!」
周囲のあらゆる鉄がブラトの周囲に集まっていく。そして形成されたのは、ブラトが乗る鉄製の巨人だった。巨大な鉄の塊の拳がセイに襲い掛かる。
「悪の組織の次は巨大ロボかよ……」
セイには[物理攻撃完全無効]がある。が、それでは押しつぶし攻撃を防ぐ事はできない。セイは上へ跳んで避けた。
「ミカ! 重力で拘束を!」
「は、はい!」
ミカの重力魔法で、ブラトの動きを制限した。もともと重さを[鋼鉄の支配者]でカバーしていたが、強力な重力により制御を失った。
「[魂を滅す者]!!」
アリスは、魂を斬る技を使用した。これは、[静夜を呼ぶ者]の「対象の性質を無視して斬る」効果があるため、ブラトの巨人の手足を斬るのにちょうどよかった。
(ブラトを確実に倒す方法……1つあるな)
2つの神話級スキルを組み合わせることだ。
つまり[永氷の槍]に[運命干渉]の効果を掛けるのだ。重力で拘束されたブラトは、鉄を生成してもアリスに斬られる。
「はあああ!!!」
高出力で発射された[永氷の槍]は、ブラトに命中。ブラトの運命は無に帰したのだった。
その時、高所で謎の黒いローブを被った剣士がセイを見ていた。しかしセイは気付くことはなかった。
「あの子なら大丈夫そうね」
そういってその剣士は、一瞬にして姿を消した。
『ブラトの魂および身体の消去確認』
『[鋼鉄の支配者]の所有者が死亡したことにより取得可能となりました』
「取得する」
『神話級スキル[鋼鉄の支配者]を取得しました』
見ていた警備隊があっけに取られている中、「神話会」が[支配者]同士の戦闘が起きたとして仲裁に駆け付けた。
神話会とは、神話級スキル所有者を中心に構成される、主要次元連盟の秩序を守る組織で、神官以外で唯一の神々の代行者と言われている。主要次元連盟全体の政治の一部も担っており、絶対的な知名度と権力、武力を持った組織だ。リベルはもちろん、あらゆる犯罪者の行動を抑制し、スキルという強力な力が存在する世界の治安を維持する役割も担っている。
「決着はついてしまったか……」
「まぁ私たちが来るのも遅かったし仕方ないわね」
「てことで寝てきて良い? 眠いんだけど……」
「お前がなかなか起きなかったから遅くなったんだぞ」
金と紫の甲冑を身にまとった男【魔神剣騎士】テヌドットと気楽そうな女【舞水の支配者】ユナが口喧嘩しながらこちらへ来る。
【魔神剣騎士】テヌドットは[支配者]系ではないにも関わらず、第一次元の武闘大会では神話級の頂点と謳われる[支配者]達を全員ほぼ無傷で倒し、現代最強と言われている、神話会会長兼執行委員長というとにかくすごいお方なのだ。
そして、テヌドットの持つ二つの神話級の剣も強力だ。聖剣[アミリクス]と魔剣[ゾルディクス]。本来「光」と「闇」属性のスキルや物体は反発しあうのだが、テヌドットの制御力がそれを上回っているそうだ。
しかも戦闘面だけでなく、顔もかなり美形で、女性人気もかなり高いというステータスが高すぎる男なのだ。
「事情を聞かせてもらおうか」
テヌドットは落ち着いて問う。
流石のオーラだ。最低でも伝説級じゃないと立っていられないだろう。
「まさか放送を聞いていなかったのか?」
しかしセイは呆れたように答える。
「あの放送ジャックをしたのは君だったか。だがそう簡単に信じられる話ではない」
テヌドットは強気に、そして疑うようにセイを睨みつけた。
そこでセイは、[運命の支配者]で作り出した亜空間から、リベルとベルクリア研究所の取引時の物と思われる手紙を中心に数々の証拠をテヌドットと周りの警備隊にみせた。
「これらはすべてリベルの拠点にあった物だ。俺が言いたいことは分かるな?」
セイがどこからともなく出してくる数々の証拠にテヌドットは黙り込み、少し考えた後、
「本部に持ち帰り、調査しよう。もしこれが本当にリベルの拠点から発見された物なら、これらの証拠の信頼性はかなり高い」
「それと一応ベルクリア研究所関係者全員と君達も取り調べを行わせてもらおう」
「ああ」
セイは静かに了承した。
流石は神話級の集まりといったところか。
翌日、全ての証拠が本物と断定され、ベルクリア研究所は一時的に閉鎖となった。
それからはセイ達の取り調べは簡単なもので済み、すぐにベルクリア研究所関係者は全員取り調べを受けた。
取り調べの結果、1350名程いるといわれている研究所の3割の人間がリベルとつながっていたことが分かった。
セイ達には礼として、スピーカージャックの件は不問とされ、同時に「神話会」への勧誘を受けた。
だがセイは断った。やりたいこと、リベルの壊滅に使える物をこの研究所で見つけたのだ。(なお持っていく許可はとっていない)
飛行型戦艦ストラシア。
ベルクリア研究所がひそかに開発していた、ぱっと見はただの飛行船に見える飛行戦艦、神々が暮らす神域にでも攻めるつもりだったのだろう。ミサイル、巨大なガトリング砲がついていたり、内部の前方部分では戦闘機が発着する滑走路もある。明らかに殺意が高い船だ。
セイはアリスとミカに戦艦ストラシアの事を言い、先に乗って出発の準備をしておいてくれと密かに伝えた。
アリスとミカはただのセイの手下として、少し早めに取り調べが終わっていたので先に乗るように伝えたのだ。
なぜセイがこの一見ただの飛行船にしか見えない戦艦が欲しいか、それはこの戦艦は次元間渡航機能がある事が分かったからだった。まぁ神域に攻め込もうとしているなら必要の機能ではあるが。
通常、飛行船やロケット、宇宙船など巨大な物は、次元間の移動ができない。
そもそも別の次元へ移動するには、各次元に数個から数十個ずつある[次元間転送陣]の上に完全に乗らなければならない。この[次元間転送陣]の大きさは半径数メートルの円で、小さめの自動車が限界なのである、巨大な物を移動する場合、一度バラバラにする必要があるのだ。
後は特殊なスキルを使えば移動できると聞いたことがあるが、もはや神話級より珍しいとまで言われているので、この飛行船はかなり画期的だ。
三人は[性質干渉]で隠れながら船に乗り込む。
『[運命の支配者]の応用能力は、無機物にも使用可能です。戦艦ストラシアに永久強化を施しますか?』
「もはや何でもありだな。掛けるに決まってる」
スキル解説
神話級[鋼鉄の支配者]
鉄を操る。性質を改変する事もでき、支配権能を最大限使えば格上の相手にも対抗できる可能性を秘めている。




