↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

神話 伝説 歴史 詩集

古代中国詩『始皇帝讃歌』

掲載日:2022/07/24

 世界の神話伝説や歴史を題材にした詩、第6弾は古代中国、春秋戦国時代~秦の時代を舞台に、史上初めて中国を統一した始皇帝の、波乱に満ちた生涯を歌います。一応、古代中国の神々や聖王の名前も出てきますが、神話伝説のような雰囲気は薄めです。この詩を、漫画『キングダム』の作者・原泰久先生をはじめ、古代中国を愛するすべての方々に捧げます。

 かつて夏(か)の偊(う)王、殷(いん)の湯(とう)王、周(しゅう)の武(ぶ)王――数多の王が治めし中華の地、黄帝(こうてい)の末裔(すえ)住む地を分かち、争う七つの国ありけり。

 斉・楚・趙・燕・韓・魏・秦。

 それら七国 一つにまとめ、四千年の中華史上 初の帝国築きし英雄あり。

 秦王・嬴政(えいせい)――御身こそ、巨人・盤(ばん)古(こ)が天地を分かち、その骸(むくろ)より万物生まれし創世以来、初めて中華の皇帝名乗りし王者なり。


 若き嬴政、秦の王となりし後、丞(じょう)相(しょう)・呂(りょ)不韋(ふい)を退けて、自ら政(まつりごと)行いたり。

 東の六国(りっこく)次々平らげ、築き上げたり、大帝国。

 古(いにしえ)の聖王、伏(ふく)羲(ぎ)・女(じょ)媧(か)・神農(しんのう)・堯(ぎょう)・舜(しゅん)ら、三皇五帝を超越したる 君主の称号 新たにつくり、「朕(ちん)は皇帝なり」と宣言す。


 かくて生まれし初めの皇帝、始皇帝。

 その姿、性は如何なりけるや?

 鼻は高く尖りて、眼は切れ長、声はさながら山犬のごとし。

 鷹(たか)のごとく盛り上がりたる 胸に宿すは虎(こ)狼(ろう)の心。

 他人(ひと)に恩を感じることはなく、情けをかけることもなし――後世の歴史家・司馬遷は『史記』にかく記したり。


 おお——口をつぐめ、目を伏せよ! 耳を澄ませて聞け、あの足音を。

 豪壮なる宮殿、阿(あ)房(ぼう)宮の大広間、

 数多の文官武官、臣下居並ぶ朝廷に、始皇帝がご来臨!

 頭上に美々しき玉(たま)簾(すだれ) 揺れる冠戴(いただ)きて、絹の衣を身にまとい、剣を佩(は)きて玉を帯(お)び、威風堂々大股に 歩みを進め、上座へ向かう。

 帝座につきし始皇帝、双(そう)袖(しゅう)広げて胸を張り、眼光鋭く睥睨(へいげい)すれば、丞相・李斯(りし)ら大臣や、王翦(おうせん)、蒙恬(もうてん)、李(り)信(しん)ら武将も皆畏(かしこ)まり、床に手をつき平伏す。


 かくのごとく権勢振るい、帝国治めし始皇帝。

 その業績は数多く、後の世まで知られたり。

 まず手始めに、国を三十六の郡に分け、郡の下に県を置き、治めさせたり、官(かん)吏(り)に命じ。

 さらに、文字や貨幣、度(ど)量(りょう)衡(こう)、車軸(しゃじく)の幅を統一し、数多の厳しき法をもて、中華に秩序をもたらしたり。

 また、北の草原に住む遊牧の民、匈(きょう)奴(ど)の侵入防ぐため、他国が築きし城壁繋げ、万里に連なる長城となす。

 されど、そのため酷使されし民は数知れず、多くの赤き血、汗と涙が流されたり。

 各地で上がる怨嗟の声。始皇帝死して後、陳(ちん)勝(しょう)・呉(ご)広(こう)の乱を皮切りに、彼方(かなた)此方(こなた)にて反乱起こり、秦はたちまち滅びたり。


 無慈悲な暴君、始皇帝。されど御身も人の子なれば心あり、その奥底は如何なりけん?

 嬴政、幼き頃は不遇の身。秦より遠く離れた異国にて、人質の子として生受け、育ち、御身が嘗(な)めたる世の辛酸(しんさん)、重ねし苦労は如何ばかり?

 父とは早くに死に別れ、母は愛人・嫪毐(ろうあい)と 謀(はか)りて反乱起こしたり。

 父母の愛に恵まれず、他人を信じることも能(あた)わずに、孤独を託(かこ)ち、心を閉ざしたるがゆえ、非情に振る舞いけるにやあらん。

 晩年、死への恐怖に取り憑(つ)かれ、不老不死に憧れて、方士・徐(じょ)福(ふく)に欺(あざむ)かれしも、心の弱さの表れか。

 嬴政死して、その帝国が滅びし後、長き歳月過ぎたるがゆえ、今や真実(まこと)を知るすべはなし。


 されば眠り給えよ、始皇帝。陶(すえ)の兵馬八千が 並びて守る陵墓の下で、金(きん)婁(る)玉(ぎょく)衣(い)に包まれて、永遠(とわ)に目覚めることなく、安らかに。

 願わくば、再び御身のごとき暴君が、世に現(あらわ)ることなきように――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 歴史は勝者によって作られる……。 始皇帝については、もちろん擁護できない面もあったでしょうが、一方で漢の時代にネガティブなイメージを植え付けられたという側面もかなりあるのでしょうね。 扶蘇が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。