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神話 伝説 歴史 詩集

古代中国詩『始皇帝讃歌』

掲載日:2022/07/24

 世界の神話伝説や歴史を題材にした詩、第6弾は古代中国、春秋戦国時代~秦の時代を舞台に、史上初めて中国を統一した始皇帝の、波乱に満ちた生涯を歌います。一応、古代中国の神々や聖王の名前も出てきますが、神話伝説のような雰囲気は薄めです。この詩を、漫画『キングダム』の作者・原泰久先生をはじめ、古代中国を愛するすべての方々に捧げます。

 かつて王、いんとう王、しゅう王――数多の王が治めし中華の地、黄帝こうてい末裔(すえ)住む地を分かち、争う七つの国ありけり。

 斉・楚・趙・燕・韓・魏・秦。

 それら七国 一つにまとめ、四千年の中華史上 初の帝国築きし英雄あり。

 秦王・嬴政えいせい――御身こそ、巨人・ばんが天地を分かち、そのむくろより万物生まれし創世以来、初めて中華の皇帝名乗りし王者なり。


 若き嬴政、秦の王となりし後、じょうしょうりょ不韋ふいを退けて、自らまつりごと行いたり。

 東の六国りっこく次々平らげ、築き上げたり、大帝国。

 いにしえの聖王、ふくじょ神農しんのうぎょうしゅんら、三皇五帝を超越したる 君主の称号 新たにつくり、「ちんは皇帝なり」と宣言す。


 かくて生まれし初めの皇帝、始皇帝。

 その姿、性は如何なりけるや?

 鼻は高く尖りて、眼は切れ長、声はさながら山犬のごとし。

 たかのごとく盛り上がりたる 胸に宿すはろうの心。

 他人ひとに恩を感じることはなく、情けをかけることもなし――後世の歴史家・司馬遷は『史記』にかく記したり。


 おお——口をつぐめ、目を伏せよ! 耳を澄ませて聞け、あの足音を。

 豪壮なる宮殿、ぼう宮の大広間、

 数多の文官武官、臣下居並ぶ朝廷に、始皇帝がご来臨!

 頭上に美々しきたますだれ 揺れる冠いただきて、絹の衣を身にまとい、剣をきて玉をび、威風堂々大股に 歩みを進め、上座へ向かう。

 帝座につきし始皇帝、そうしゅう広げて胸を張り、眼光鋭く睥睨へいげいすれば、丞相・李斯りしら大臣や、王翦おうせん蒙恬もうてんしんら武将も皆かしこまり、床に手をつき平伏す。


 かくのごとく権勢振るい、帝国治めし始皇帝。

 その業績は数多く、後の世まで知られたり。

 まず手始めに、国を三十六の郡に分け、郡の下に県を置き、治めさせたり、かんに命じ。

 さらに、文字や貨幣、りょうこう車軸しゃじくの幅を統一し、数多の厳しき法をもて、中華に秩序をもたらしたり。

 また、北の草原に住む遊牧の民、きょうの侵入防ぐため、他国が築きし城壁繋げ、万里に連なる長城となす。

 されど、そのため酷使されし民は数知れず、多くの赤き血、汗と涙が流されたり。

 各地で上がる怨嗟の声。始皇帝死して後、ちんしょうこうの乱を皮切りに、彼方かなた此方こなたにて反乱起こり、秦はたちまち滅びたり。


 無慈悲な暴君、始皇帝。されど御身も人の子なれば心あり、その奥底は如何なりけん?

 嬴政、幼き頃は不遇の身。秦より遠く離れた異国にて、人質の子として生受け、育ち、御身がめたる世の辛酸(しんさん)、重ねし苦労は如何ばかり?

 父とは早くに死に別れ、母は愛人・嫪毐ろうあいと はかりて反乱起こしたり。

 父母の愛に恵まれず、他人を信じることもあたわずに、孤独をかこち、心を閉ざしたるがゆえ、非情に振る舞いけるにやあらん。

 晩年、死への恐怖に取りかれ、不老不死に憧れて、方士・じょふくあざむかれしも、心の弱さの表れか。

 嬴政死して、その帝国が滅びし後、長き歳月過ぎたるがゆえ、今や真実まことを知るすべはなし。


 されば眠り給えよ、始皇帝。すえの兵馬八千が 並びて守る陵墓の下で、きんぎょくに包まれて、永遠とわに目覚めることなく、安らかに。

 願わくば、再び御身のごとき暴君が、世にあらわることなきように――。


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― 新着の感想 ―
[一言] 歴史は勝者によって作られる……。 始皇帝については、もちろん擁護できない面もあったでしょうが、一方で漢の時代にネガティブなイメージを植え付けられたという側面もかなりあるのでしょうね。 扶蘇が…
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