サラ 親友の気になる人
昔からの友人が恋をしたみたい。
私、サラ・ポートイェート。公爵家の長女。国でも上位の家格の家で育ち、容姿にも恵まれ、優しい両親と兄が2人。自分でもとっても恵まれてるってわかってる。家格に負けない様に勉学マナー共に幼い頃から頑張ってきた。
お母様のお友達の子供で同年代のリリィは私の幼少の頃からの数少ないお友達。友達は他にもいるけど、家に媚を売ってくる方や私の容姿に嫉妬して陰で悪口を言っている方も多く、なかなか打ち解けられる友達はいなかった。
その点リリィは物心つく前から知ってるし、「可愛いんだろうけどサラになりたいとは思わないなぁ〜大変そう〜」と明け透けに言ってくるので裏表がなくてとても好き。大事な親友。
そんなリリィがある男性を忘れられないなんていつもの女子会で告白するからすごく…びっくりした。
私達女子仲良し3人は恋愛に憧れはあるもののこの人!といった現実味のある話は今までなかった。だから一番仲良しのリリィが1人の男性を忘れられないなんて、なんてロマンチックなんだろう!と憧れてしまった。
聞くと相手はリアお姉さま(同じ幼馴染なのでお姉さまって呼んでるの)の結婚式に参列していた殿方で、私には理解できないけどリリィの好みにピッタリの容姿をしていた様。痣があるって言ってたので少し心配したけど、幼い頃から少し価値観の違うリリィと仲良しだったお陰で私も痣の呪いは迷信だと思ってる。多分。迷信であって欲しい。
私も少しの好奇心とリリィへの心配からその男性がどんな方か調べることにした。だっていくら容姿が好みでも性格が暴力的だったりしたら心配だわ。
「お兄様、この前のリアお姉さまの結婚式に額に痣のある方が参列してたみたいなのだけど誰だかわかるかしら?」
結婚式に参列する為、留学先から戻ったばかりの次兄のザックお兄様にきいてみる。するとお兄様は驚いた様に私を見てこう回答した。
「ああ、サラ、どうしたんだい?痣のある方といえば大体察しはつくけど、痣の有無で判断する偏見のある子ではなかっただろう??」
「いえ、痣の呪いを気にしての質問ではないのです。お兄様。どこの誰か、性格や恋人の有無を知りたくて…」
「!!サラ!お前は王太子殿下と懇意にされてるのでは?相手が誰だろうとお父様が許さないと思うぞ!?ああ…王太子殿下に聞かれたら大変だ…ただでさえツンデレなのにヤンデレまで加わってしまう…」
最後の方はブツブツと私の分からない単語を並べ立てて独り言し始めたお兄様。聞き方を間違えて勘違いさせてしまったわ。
「違うの!ザックお兄様!私ではなくリリィが…とても気にしていて…」
あ〜ごめんなさいリリィ。私がこっそり調べるとかそんな事できるわけなかったわ…勉強は出来ても社交での裏の裏を読む…とかが苦手な自分に嫌気がさす。
「…リリィか…確かにあの子ならあり得るな…」
我々家族全員、リリィの考え方がちょっと変だなって事は知ってる(ごめんね、リリィ)。お兄様も納得したみたい。
「多分だけど…額に痣があり、背が高く痩せ型、目鼻立ちがハッキリした男だったら、ダンテ・オーロストックだよ。西の辺境伯の三男で私の2つ上かな?結婚はしてないと思うけど、彼女や婚約者については知らないな。貴族学校時代の先輩ってだけで親しくはなかったからね。」
さすがザックお兄様。社交性が私の3倍はあるお兄様は情報も流行もお手の物なのだ。
「現在は騎士団所属じゃなかったかな〜?あれ軍隊か?ちょっと調べてみるからまだリリィには話さない様に。曖昧な情報で惑わせるのは本意じゃないからね」
と実の妹の私にウィンクをしてみせる。お兄様は優しくて社交性があり、容姿も優れていて、貴族女性達の憧れの的なのだ。ウィンク一つで何人の女性を虜にしてきたのだろう…
「そうですわね。わかりました。お兄様の情報網はすごいですものね!リリィには幸せになって欲しいのです。お兄様よろしくお願いいたします。」
お兄様もリリィは本当の妹の様に思っているはず。きっとちゃんとした情報を仕入れてきてくれると確信を持った私はお兄様に安心してお任せしたのだった。