リリィ 気になる人
女の子3人しかいない伯爵家では長女が婿取りをして家を継ぐ事になっていた。長女は2年前に結婚して義兄も同じ家に住んでる。優しい義兄と結婚できてお姉ちゃんは幸せ者だな、と思う。
二番目の姉ももうすぐ結婚だ。姉は相手の家に入ってしまうので結婚したら一緒には暮らせない。わかってはいるけとちょっと寂しい。
もうしばらくしたら私もそろそろ誰かと…という話になるハズ。もう17歳にもなるので。
結婚かぁ。私はできれば恋愛結婚がいいなぁ。
前世の記憶では恋人はいたけど結婚まではしてなかったしな〜
自分の将来に思いを馳せた。
そんな次女の結婚式で私は運命の人と出会ってしまった…!招待客の中にいた、スラっと背が高い、顔がハッキリしていて凛々しい男性に見惚れてしまった。とんでもない美形だった。アイドルじゃん!!ただ、こちらから話しかけたりは出来ないので名前もわからないまま、結婚式とお披露目パーティーは終わってしまった。
いつも通り、サラの家の自慢の庭にある東屋でお茶会という名の女子会。ある程度会話もしてゆっくりとお茶を楽しんでいた。
「はぁ…」
自分でも知らぬ内に深いため息をついた私にサラとアリが心配してそうに聞いてくる。
「さっきからため息ばかりついて、どうしたの?悩み事?」
「悩み事って程ではないんだけど…」
見つめてくる2人の目。無理には聞かないけど心配そうにしている。まぁ、この2人だし…と意を決して私は説明した
「リア姉の結婚式に参列してた男性があまりにも格好良くて忘れられない…」
「…!!」
思ってなかった突然の恋バナに2人は眼を合わせて驚き、興味深々で質問してきた。
「なんて言う人?」
「わからない」
「家柄も?」
「わからない」
「リアお姉さまの旦那様のご友人かしら?」
「多分…でもわからない」
「…」
そう、何にもわからないのだ。どうしたら良いのだ…!まぁ、例えどこの誰か分かっていてもどうしようもないのだけど。一応貴族の令嬢だからグイグイいくわけにはいかない。
「式ではどの辺りに座っていた方かしら?見た目も教えて」
サラもお姉ちゃんの結婚式に参列していたのでもしかしたら見ているかもしれない。縋る想いで説明した。
「席は後から4か5列目くらいに座ってたかな?背が高くて細身で顔立ちがハッキリしてて…」
「…」
それは『あまりにも格好良い』ではないのでは…?という2人の視線は気づかないフリをする。2人は私の美的感覚がすこーし違うというのはわかってるから。
「あ、額に大きめの痣があったわ!あれだけは残念だけど、まぁあんだけ美形なら痣のハンデくらいどうって事ないわよね」
「…」
「リリィ、あんたの好みについては知ってるからとやかく言うつもりはないけど、痣があるのはいただけないわ。昔から痣は呪いだって言われてるでしょ?大切な友人が不幸になるのは見たくない」
「そんなの迷信よ、生まれてきた時から痣がある人が本当に呪われてたら既に死んでるわよ」
そう、この世界では痣は悪いモノとして取り扱われる。過去の記憶がある私としてはなんじゃそりゃ〜!って感じなんだけど、もうそれが常識になってしまっている今世では頭の良いアリでさえ信じている価値観だ。
「それはそうかもしれないけど…」
「後ろの方の席ってことは職場関係かしら?私もそれとなく家族に聞いてみるわね。」
「サラ〜〜ありがと〜サラ女神!!!」
心配そうなアリ、優しく微笑むサラ、態度は真逆だけとどっちも私を思っての対応なので特に気にはしない。別に結婚したいとかじゃないけど(できるなら結婚するならあんな人がいいとは思うけど)出来ればもう一回だけ見てみたい。さらにお話くらいしてみたい。
サラ女神お願いします〜〜!!