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SkyBlue  作者: 皇雄
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第一話:始まり

ある街に、三人の男がいた。


三人の男は暇があると心霊スポット巡りをしていた。


特に霊感があるわけでもなく、いまだかつて幽霊と遭遇したことが無かった。



ある事件に巻き込まれるまでは………。




梅雨も過ぎ、少し暖かくなってきたある日の午後。


昼食をとった後の授業とはなぜにもこんなにやる気が出ないものか?



教室を見渡すと何人かは夢の中のようだ。


寝てこそいないものの、真面目に授業に取り組む気にもなれず男は窓の外を眺めていた。


「おい高橋!黒板は外にはないぞ!」


不意に教師から罵声を浴びる。


寝ている奴らを差し置いて怒られたことに納得がいかず、高橋と呼ばれたこの男はしかめっ面になった。


「じゃー夢の中にはあるんですかね?」


高橋は寝ている奴らをみわたしてやった。

高橋の返しにクラスはドッと笑いに溢れ、教師は

「確かにそうだな」と、寝ている奴らを起こし始めた。



高橋京介、中学二年生、趣味は心霊スポット巡り(ただしここ二・三ヶ月の話)。


授業も終わり、京介が帰る支度をしていると、二人の男が話し掛けてきた。


渡辺勝気、中学二年生、趣味、以下同文。


空羽皇騎、中学二年生、趣味、以下同文。



「いぁ〜参った参ったぁ〜、いきなり怒られるんだもの〜」

勝気はどこからか椅子を持ってきて座り始めた。


「当たり前だ馬鹿たれ、授業はちゃんと聞けよ」


皇騎は勝気のおでこをつっついてやった。


「そーだそーだ」


「お前も先生に注意されてただろ?」


「そだっけ?」


そーだよ!と皇騎にほっぺをグリグリと指で突かれた。


皇騎は三人の中では突っ込み役で、今は普通だがその内ハリセン持って

「なんでやねん!」とか言いださないか、京介は内心期待している。


なぜかって?優等生で通っている皇騎のキャラではないからだ。


「ところでさぁ〜、今度の土日どっか行こうぜ〜、できればスポット巡りが良い〜」


勝気は背もたれを抱き、足をバタバタさせ子供のようにはしゃいでいる。


「穴はこないだ行ったしなぁ、京介どっかある?」


「思い切って樹海にいってみる?」


「え〜?ダメだよ〜、樹海は夏休みにいくんだよ〜」

勝気はぶーぶーと顔を膨らませてみせた。


「つーか樹海は止めようぜ、帰ってこれなくなると困るし」


樹海とは自殺の名所で知られるあの樹海だ。

樹海に入った奴が行方不明になったという話も聞く、皇騎が止めるのは、そういった話がただの噂ではなく、本当に起こっているからだ。



「まぁ確かに、かと言って地元のスポットはそんなに無いからなぁ〜」


三人が話に詰まっていると、不意に声をかけられた。

「やぁ、なんの話をしているの?」


いつのまにかその男は皇騎の後ろに立っていた。


「ん?」


「いや、土日の予定を立ててるんだよ」


「そぅそぅ、どっか心霊スポットみたいな所ない〜?」


「心霊スポットかぁ」と、男は暫らく考えている仕草をとると、

「あるよ、たぶん誰も知らないところが」

本当に〜?と勝気はまた足をバタバタさせ喜んだ。


「うん、○○山の頂上から行くんだけど、休憩所に道があって、さらに進むとまた休憩所があるんだ、そこをさらに進むと、廃屋があるらしいよ?」


「へぇ〜、そんな所あったんだ?京介知ってた?」


「いや知らん、面白そうだな?行ってみようぜ」


「きっまり〜」


三人は行くところも決まり、準備はどうするか?時間はどうするか?と話に華を咲かせた。


「そうだ、お前もくるだろ?」


京介は、行く場所を提供してくれた男を誘おうと話し掛けたが。



「あれ?」


「え?」


「ん?」


いない、先程男が立っていた所には机があるだけだった。



「あれ?帰っちゃった?」

「つーかアイツ何組の奴?」


「知らないよ〜」


「俺も知らない」


一瞬場が静まり返った。


誰も知らない男、いきなり現われ、誰知れずと消えた男、普通ならここで気味が悪くなるところだが三人は違った。



「幽霊かな〜?」


「だったらなおさら面白そうだな!」


「よし!決まり!」



今だ幽霊の類に遭遇したことが無い三人は大いに喜んだ。


恐怖より好奇心、ただそれだけで彼らは動いていた。



翌日金曜日、皇騎と勝気は例の男を探したが、見当たらなかった。



「これは、もしかするともしかするかもな」


皇騎はニヤリと笑みをこぼした。


放課後、三人は今夜行われるイベントの最終確認を行っていた。


「じゃー確認するぞ〜、決行は今夜九時!○○山の駐車場に集合だ!各自懐中電灯を持参してこいよ!」

「お〜〜!」


「おう!!」


三人の勢いは止まらなかった。


誰一人、正体不明の男を疑いもせず、幽霊なら大歓迎とはしゃいでいた。


今だ幽霊と遭遇していないという無念さと幽霊を見てみたいという思い、それと今まで怪我という怪我をしていないという安心感。


言葉を変えると調子に乗っていたのだ。


なにより、誰も知らない廃屋というのが彼らの興味をそさいでいた。


三人はそれぞれの思いを胸に解散した。



京介が駐輪場で自転車を出していると皇騎がやってきた。



「よう、どうした?」


「途中まで一緒に帰ろうぜ」


「おう!」



途中までと言っても京介の帰り道の途中に皇騎の家は在る。


京介は自転車を引きながら皇騎と肩を並べ帰路を歩く。


「そういえばさぁ」


「ん〜?」


「今日、美波がしきにり俺の事心配してきたんだけどなんでかな?」


「美波が?」



美波とは皇騎の双子の妹なのだが、彼女は無口無表情で友達と言える友達もおらず、家でも家族とはあまり口をきかないらしい。


その妹がしきりに兄のことを心配するのが珍しかった。



「今日、廃屋いくからじゃね?」


「いや、美波には言ってないんだよなぁ今日の事」


「まぁ無口の妹に心配されて嬉しいかぎりだろ」


「ある意味不気味なんだけどなぁ」



ははっと笑う二人に、夕日が哀しげに沈んでいった。


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