もう遅いったらもう遅い。絶対に遅いおれは、遅さに遅く遅遅遅大会で一番遅くなる。
やばい、遅れる!
おれ、遅遅遅遅は、いま遅れそうだ。
おれが遅れそうになっているところは、ここからだいたい300マイル離れた所ある。
そこには世界のいたるところから来た遅れラーたちが、その遅さを競い合って遅れてくるのだ。
おれは異世界からきたので、遅れ具合としては世界ランク2000-3000位が狙いそうな位置に遅れている。
加えて、仲間たちが俺のことが本当は必要なのに、追放してくれたので、「もう遅いポイント」が加算された。これは大きなプラスだ。もしかしたら1000位代まで食い込めるかもしれない。
今おれが参加しているこの遅遅遅大会は遅さを競う大会で、延期に延期を重ね、やっと今回、参加者のほぼ全てが「大会またどうせ延期だろうな」と思ったタイミングで、開催された。
もちろん大会の主催者の挨拶は、まだ行われておらず、応援と観客もまだ聞こえないが、それもおいおい遅れてやってくるだろう。
だが実際そんなものはあまり関係がない。これはプライドをかけた漢の戦いなのだ。え?なんだって?女の参加者もいるから、そうやってフェミニズムを無視した発言をするなだって?
うるさい。どんな女が時間におくれてやってくる?まともじゃないやつに決まっているだろうが。そんな奴、女とは呼ばない。つまみだせ!
おっと少し取り乱したかな。ドドスコスコスコLOVE注入❤️
はい、これでよし。
こうでもしないと、最近の流行にのってしまうからな。気をつけなければ。
強烈なライバルとして、3月生まれがいる。おれは2月生まれなので、ポイントは高い方だが、3月生まれは間違いなく一番遅いことが約束されているから、不公平だ。どうやったら3月31日に生まれることができるのか。
しかも彼らは脳と体の発育が他より比較的遅く、まるでこの遅遅遅大会に参加するべくして生まれてきたかのようだ。心底、羨ましい。
人によっては、この競技を簡単でチープなものと見るがそれは大きな間違いだ。遅れるためには遅れないよりもよっぽど忍耐と努力、根回しが必要なのだ。
例えると、友達と会うとなって遅れることは「友達を待たせる」ということである。10分やそこらならまだ友達も待つかもしれないが、1時間、2時間となると全てその友達の自分に対する好感度等が関わってくる。
つまり、準備と根回しが事前に必要なのである。おれはプロの遅れラーであるから、「待てば待つほど報酬が増える」などそういった、確実性の高い方法を好んで使うが、これを読んでいる未来の遅れラーくんちゃんたちには「常に状況をラインで報告する」または、「ネタ動画を送信し続ける」などから始めるといい。
最近の若者は遅れないことが何やらこの上ないことだと思っているようだが、これを読んで、実際に遅れないことの簡単さと労力の要らなさに気づいてもらいたいものだ。