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星降る夜の砂漠は井戸を秘める  作者: まりや みずうみ
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可もなく不可もなく、しかし幸せではない

人は、なぜ結婚をするのだろう。


画面いっぱいの、弾けるような笑顔。日の光に煌めく、素敵なウエディングドレス。隣で手をつなぐ、優しそうな旦那様。

「わたくし○○は、○月○日に籍を入れ、○日に結婚式を挙げましたことをご報告致します。これまで支えてくださった皆様には、、、」


ありがちな文面にざっと目を通して、真知子はFacebookのアプリを閉じる。時刻を見ると、まだ朝の4時だ。薄暗い部屋でスマホの画面を眺めたせいで、目の奥が鈍く痛む。

浅くため息をついて、布団に身体を埋め直した。今日は仕事が休みだ。二度寝でも三度寝でもしてよかろう。しかし、まぶたを閉じても、頭にちらついた疑問は鮮明になるばかりだった。


20代の半ばを過ぎたあたりから、周りの知人は次々と結婚していった。実家暮らしの真知子は、親が結婚どころか恋人の存在すら匂わせない娘を心配しているとわかっている。けれど。


なぜ結婚しなければならないの?


真知子は、小学生の時からその疑問を抱き続けている。



両親を起こさないように、忍び足で階段を降りて、洗面所へ。

結局、あの後眠ることはできなかった。

歯磨き、洗顔を終えた真知子は、自分の顔をまじまじと眺める。一重まぶたに、切れ長の目。鼻は低め、唇は小さめ。かろうじて顔の輪郭が整っているから良いが、これでふっくらとしていたら完全な「おかめ顔」である。この顔のせいで得をしたことも、虐められたこともないので、「普通」なのかもしれない。何より、真知子自身が自分の顔に全く興味がない。髪の毛も、邪魔じゃない程度に伸ばして、いつもは後ろで括っているだけだ。

下を向いて、身体を眺める。中肉中背、可もなく不可もなく。



「あー!彼氏が欲しいよー!」

駅前のカフェで、友人の美園が泣き言を漏らす。向かいに座った真知子は、ストローを口にくわえたまま器用に喋る美園に感心している。

「美園、つい最近彼氏と別れたばっかりじゃない」

「つい最近、じゃないよ!先週だよ!もう1週間も隣に誰もいない状態で私寂しいよ!もー今日真知子ちゃんの仕事が休みでよかったあ」

「私はあんたの仮彼氏かい」

「違うよお。真知子ちゃんは、私の永遠の恋人♡」

真知子の呆れた声に美園はにっと笑い返すと、

「ね、新作出来たんだ!今回はね、自信作!真知子ちゃんまたモデルになってぇ」

真知子の小学生からの友人である美園は、OLの仕事の傍、趣味で洋裁をやっている。これがかなりの腕前で、最近ではドレスに手を出し、デザインからパターン、縫製まで1人でこなす。その作品をフリーマーケットアプリに出品する際、写真のモデルに真知子を起用しているのだ。

「いいけど、何度も言うけどマネキン使えばいいのに」

真知子の素朴な問いに、美園はブンブン首を振る。

「あのね、誰かに着てもらえる、って思うだけで張り合いが出るのよ。真知子ちゃんだと遠慮なく欠点とか言ってくれるし。それに、よく雑誌とかは背の高いモデル使うけど、普通の女の子って、真知子ちゃんと同じくらいの背格好でしょ?私はそういう人たちに着てもらいたいから」




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