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第6話

 俺たち新入生全員でお互いに軽く挨拶を済ませると園田先生が今日のスケジュールについて話し出した。


「今日は来てくれてありがとね!今日のメニューだけど、雪学のルーティンメニューを終えたらすぐミニゲームをやろうと思う。倉科ちゃんはわからないことがあったらバンバン周りの子たちに聞いてね!」


「はい!」


「じゃあ、第一運動場に移動ねー」


 第一運動場はサッカー部と陸上部が使っている場所で良く整えられた天然芝と周りを四百メートルトラックで囲まれた競技場型の作りになっており、それに対して第二運動場は土のグラウンドでソフトボール部とハンドボール部、あとは地質研究会という謎の同好会が使っていると、園田先生が教えてくれた。

 第一運動場に着くと、そこでは陸上部とサッカー部が声を出しながら練習していた。

 園田先生は俺たちを連れて芝生に入ると「鏑木さ〜ん」とストレッチをしたりシュート練をしたりしている少女の集団に声をかけた。


 鏑木と呼ばれた少女はこちらを見ると、「集合!」と声をかけて部員たちを園田先生の前に集めた。

 集合した女子の人数は合わせて6人。

 サッカーをやるには少なすぎるがこれで全員なのだろうか?だとしたら新入生を含めてもサッカーをできる人数に達していないことになる。

 相当まずい状況だ。

 園田先生が勝てないと言っていたのにはここらへんも関わってきそうだな。

 それよりも、彼女たちの容姿に目が惹かれてしまう。6人全員がそれぞれ美人で可愛いのだが、最近の女子サッカーはこんな感じなのだろうか。

 ちょっとドキドキしてしまう。

 俺が雪学サッカー部の女子を眺めていると、チラチラとこちらを見たり、コショコショ内緒話をしている部員たちが見られた。


「はーい、おはよー」


と園田先生が適当な挨拶をかます。


「おはようございます!!」


それに対し部員たちは声を揃えてハキッと挨拶をする。

おお、運動部って感じだ。


「今日は言ってた通り来年度入学してくる生徒も練習に参加します。はい、挨拶してー」


そう言って園田先生は朱莉の腰を叩いて促す。

聞いてないよと思わなくもない。

しかし朱莉は普通に一歩前に出て話し始めた。


「梅里中学の東雲朱莉です。中学時代は陸上部でした。よろしくお願いします」


彼女が言い終えるとパチパチと拍手がなった。

続いては桃の番。


「富士見中学の倉科桃です。中学ではバスケやってました。サッカーは初心者ですが頑張ります。よろしくお願いします」


拍手が終わると杏奈が話し始めた。


「富士見中の高宮杏奈です」


…………。


 え、それだけっ!?いつから、こんな図太い性格になったの!?

 前から気は強かったけれども。

 俺と同様に動揺していた部員たちもまばらな拍手をした。

 変な空気の中俺の番が回ってきた。


「同じく富士見中学の安達海斗です。試合に出ることはできませんが、皆さんのプレイの手助けをできたらと思います」


 そして、俺の登場に先輩たちは困惑しているようだった。

 しょうがないよね。男だし。

 すると園田先生が、


「来年度からはウチも共学になるからね。よかったねー、待望の男子だよ?」


と、謎の煽りをした。

 一人だけ飛び抜けて背が高い女子生徒が「わぁ〜、男子だ珍しい〜」とか、「姐さん!男子っスよ!」と盛り上がっているのは二人だけで、後はまばらに拍手したりしてくれる。


 すると明らかにヘアカラーで染めた金髪のギャルっぽい生徒が園田先生に詰め寄った。


「なぁ、うちの部にマネージャーとかいらなくね?」


 園田先生は苦笑いしつつ、


「マネージャーじゃないよー。コーチだよー」

と答えた。


 ギャル先輩は、何言ってんだという顔で園田先生を見る。


「はぁ?コーチぃ?そんななよなよした男があたしらに教えられんの?」


 なよなよは関係ないだろ!と思っていると、次は鏑木先輩が発言した。


「園田先生」


「はい。どうしたの?鏑木さん」


「部長として言わせていただきます。プロの指導者ならともかく、一学生にコーチが務まるとは到底思えません。それに、雪ヶ丘サッカー部のみんなは、人数が足りないだけで、技術は他校に負けてません。なぜ彼なのでしょうか?」


鏑木部長の意見も尤もだと俺も思う。いきなり現れた年下の男子に教えてもらうのは、中々ハードルが高いだろう。


「アタシは、全国目指してる!雇うなら、もっとまともな指導者じゃなきゃ納得できない」


ギャル先輩もそう言って啖呵を切った。


 二人のサッカーへの熱量に感心したし、二人の言い分に納得していた俺の横で、何故か、杏奈が肩を震わせながら拳を握りしめている。もしかしてと思い、杏奈に小声で話しかける。


「なぁ、杏奈。大丈夫か?トイレか?」


 それを聞いて杏奈は勢いよくこちらを振り向きキッと睨むと、何故かさらに不機嫌になって前に向き直った。

 女の子は不思議だなぁと考えていると園田先生が、


「安心して。安達くんは少なくともあなたたちよりは上手いから。それに、教える力もある」


と挑発するように言った。


「へぇ、だったら男子サッカー部作りゃぁいいじゃん」


 対してギャル先輩も、真っ当な返しをする。


「それはできないのよ、人数的に」


「アタシは、アタシたちに指導できるだけの実力を見せて貰わないと、認められねー。おい、男子、今日の練習のミニゲームで勝負しろ」


「はいっ!?」


ギャル先輩が唐突に物凄いことを言ってきた。勝負?どういうことだ?


「そこで結果を出せたら、コーチにならしてやる。ダメだったら、他所に行きな。いいだろ?園田センセ」


「わかったわ。できるわよね?」


なんで園田先生が答えるの!?でも、ここでできないと言うことはしたくない。それに、流石にこれだけのことを言われると、見返してやりたいという気持ちも出てくる。


「できます」


「じゃあ、そういうことで!ようやく練習始められるよ〜」


 そういうことは思ってても口にしないでください、園田先生。

 ウォーミングアップのため移動する途中、ギャル先輩がすれ違いざまに呟いた。


「アタシは認めねーからな」


 どうやら、俺のコーチ人生は前途多難らしい。

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それにしても、いつになったらサッカーするんだ……。

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