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第4話

昇降口前に着くと二人の女子生徒が昇降口の端っこにあるベンチでお喋りしていた。

 しかし、園田先生が来たことに気付くと二人は起立し挨拶をしてきた。

「「おはようございます」」

「おはよう!来てくれてありがとね」

 園田先生が軽く手をヒラヒラさせて返す。面接の時も思ったが普段は結構ユルい人だな。

 俺も園田先生の後に続いて女子生徒のそばまでいくと、二人の女子生徒のうち一人は知り合いだということに気づいた。

「よう、委員長」

「あへぇっ!?安達きゅんっ!?にゃんでいるにょっ!?!?」

 すごい噛み方したな。

 彼女は倉科桃。中学の同級生で三年生でクラスが一緒になって以来、やたらと俺にお節介を焼いてくる女の子。身長は148センチでとにかくちっちゃくて可愛い。ボブカットの黒髪に何本か編み込みが入っていて、前髪を桃がデザインされたヘアピンで止めているのがチャームポイントだ。

 委員長というのは俺の中学でクラス委員長という役職をしていることに由来する。というか、みんなに委員長って呼んでいた。

「委員長も合格したんだな。おめでとう」

「あ、そっか。うん、これからよろしくね」

 俺たちが話していると横にいた女の子が委員長の頭をポンポンと叩いて話しかけてきた。

「なーなー、こいつ誰?」

 こちらを指差して委員長に質問する。

 第一印象は『背が高い』だった。俺が少し見下ろす程度なのだ170センチはありそうだ。

 肩まであるダークブラウンの髪をヘアバンドでまとめていて、綺麗なおでこが全部出ている。きめ細やかで白い肌がリップのピンクを際立たせて可愛らしい。

口調の割に優しい目つきなのが更に美人度を増している。

 しかし、人のことを指差していきなりこいつ呼ばわりしてくる相手なので、警戒していると、

「もう!こいつなんて言っちゃダメだよ!安達海斗くん、私のクラスメイト」

 委員長がすかさずフォローを入れてくれる。やっぱり委員長は頼りになるなー。

「どうも、安達海斗です。サッカー部に入る予定だからよろしく」

「どーも、あたしは東雲朱莉。よろ〜」

 軽いなぁ〜、などと思っていると、突然朱莉は俺の顔面の数センチ前までぐいっと顔を近づけ目を覗き込みながら、

「それで海斗は〜、なんで女の子がいっぱいいる雪ヶ丘に入学してきたのかなぁ?」

と試すような、ニヤニヤとした微笑みとともに聞いてきた。

 あ、もうこの聞き方の時点で答え出ちゃってますね。

 しかし、ここは俺の名誉のためにも事実を言っておこう。

「入試を受けるまで知らなかったんだよ、朱莉」

 仕返しとばかりに下の名前を呼び捨てで呼ぶと(横で委員長が頬を膨らませているが何故だろう)、しかし朱莉は面白いものを見たかのように、わざとらしく口の前に手を当てて、ププッと笑ってくる。

「さすがに嘘つくの下手すぎぃ〜、女好きなのは恥ずかしいことじゃないよ?」

 諭すように言ってきやがった。

 すると園田先生が

「それなんだけどね東雲さん、本当なんだよね〜」

と、苦笑いしながら訂正した。

「え、マジすか?」

「え、本当ですか?」

 朱莉だけでなく委員長までもが驚きの表情を浮かべている。

 これはむしろ女好きの設定の方がまだマシだったのでは無いだろうか。そのまま園田先生が面接の時の話をすると朱莉は微妙な表情をしてしまった。きっと俺のことをアホ認定したのだろう。そして、委員長は少し怒ったような表情をしていた。

「なんか、すまん」

 とりあえず謝っておくと、委員長は

「もう!安達くん、私言ったよね!志望校のことちゃんと調べてねって!というか、私が渡した資料読まなかったのっ!?」

と言ってきた。

「いや、見たよ。……部活のところだけ」

「それじゃダメでしょ!」

「はい、ごめんなさい。でも、あれじゃん?そのおかげで一緒の学校になれた訳だし」

「それは……まぁ……」

 良かった。委員長はい未だ小声でごにょごにょ言っているがなんとか収まった。

「そっか……海斗はアホだったのか」

と案の定朱莉が遠くの方を見ながら呟いていたが、放っておく。

「でも、本当にサッカー部に入るんだね」

 委員長が聞いてきた。

「あれ、俺がサッカー部に入るって知ってたのか?」

「受験する前に安達くんがまたサッカーやるって噂になってたんだよ?みんなはてっきりクラブでやると思ってたみたいだけど」

「うへぇ、マジか。てか、委員長って中学時代はバスケ部だったよね?なんでサッカー?」

「しょ、ひょれは安達きゅんがサッカー部に入るって聞いたから……じゃなくて、楽しそうだからかな」

「お、おう」

 もう全部言っちゃってるんだよなぁ。これで誤魔化せてると本気で思ってるからすごいよ。

「桃ちゃんがバスケ部だったことに驚き桃の木だよね〜。こんなにちっちゃくて可愛いのに」

「ちっちゃくないです!それに…!」

「おっほん、そろそろ大丈夫かな?」

 委員長たちと話が盛り上がっていたら、園田先生が先に進みたそうに割り込んできた。

「あ、すんません」

 委員長も恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「あともう一人くるはずなんだけどね」

 園田先生がそんなことを言いながら校門の方を眺めている。

 だが、俺はふと気になって委員長に小声で話しかけた。

「なぁ、そういえば富士中からは雪ヶ丘に何人受かったんだ?」

「3人だよ。先生たちも快挙だって喜んでた」

「へぇ、それで誰なんだ?あと一人って」

「それはね……あ、来たみたい」

委員長の視線を追うと、赤褐色の煉瓦造りの塀で出来た校門から悠然と歩いてくる一人の少女。

彼女は太陽の光に反射しキラキラと輝く長いプラチナブロンドの髪をなびかせている。

 そして、青い瞳、ハッキリとした顔立ち、高校1年生にしては高い身長が彼女に西洋の血が混じっていることを見てとらせる。

俺はこの少女を知っている。おそらく俺の人生で一番長く時間をともにしている女の子だろう。

「杏奈……どうしてここに?」

少女の名前は高宮杏奈。俺の幼馴染である。

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