第2話
「ただいまぁ〜」
気の抜けた声を出しながらリビングのソファに倒れこむ。こんなことならしっかり調べてから受験するんだったと後悔が波のように押し寄せて来て何もやる気がおきない。やるせなさに足をバタつかせていると、テレビゲームをしていた姉と妹が文句を言ってきた。
「カーくんうっさい!敵の足音聞こえなくなんでしょ!」
「お兄ちゃんうっさい!敵の足音聞こえない!」
日曜日に男とデートも行かずFPSをする姉妹って何なんだろう。
というかそれ俺のゲームだし。
「姉ちゃん。なんで雪ヶ丘が元女子校だって教えてくれなかったの?」
そうして俺は姉に今日あったことを全部伝えた。
「はぁ?むしろ知らなかったことに驚きよ!あたしが通ってたんだから当然知ってるもんだと思ってたわよ」
「ていうか、ロクに調べず受けるお兄ちゃんが悪い」
二人とも正論でぐうの音もでない。
この辛辣な女性二人は俺の姉と妹。姉の名前は安達花蓮。大学ニ年生。ライトブラウンの長髪は大学生らしく毛先がウェーブしている。俺の姉のくせにやたら美人。いつもはオシャレな格好をしているが、家では基本的にキャミソール1枚にショートパンツ。
妹の名前は安達花音。中学一年生。黒髪のショートヘアが如何にもわんぱくな感じで花音の性格に合っている。こいつも家では基本的にキャミソールにショートパンツ。
基本薄着なので色々見えてしまって、思春期男子には大変気まずいのだ。とは言いつつも、もっと服を着てくれと言うのは恥ずかしい。
でも、今はそんなことを気にすることができる精神状態ではなかった。
「はぁ……サッカーまたやりたかったのになぁ」
「クラブでやればいいじゃない?」
「……ガチでやるのはまだ怖い」
「そっ……」
姉に気を遣わせてしまった。なぜ俺は本気でサッカーをやるのが怖いのか。それは中学一年生の時、今の中学校に転校してくる前のサッカー部でいざこざがあったからだ。
その時のことを思い出してまた気分が落ちてきた。
はぁ……とため息を吐くと
「私はお兄ちゃんがサッカーしてるところ格好良くて好きだから、またやってほしいな」
次は妹が励ましてくれた。よく出来た妹だ。
「花音!愛してる……」
溢れる愛につい花音を抱きしめてしまった。
「やめろやめろ、お兄ちゃん!ってあぁ!キルられたじゃん!どうしてくれんのさ!」
「あー、ごめんごめん」
怒られたけど後悔はしていない。
よく考えればまだ受かっているとも限らないのだ。そういうことは受かってから考えよう。
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