うちの騎士団には○○しかいねぇ!-勇者カーズの憂鬱-【肉の日マッスルフェスティバル2020】
2020年2月9日(SUN)
長岡更紗さん主催「肉の日マッスルフェスティバル」企画に投稿したものです。
1~10のテンプレート + イラスト + 小話 の構成です。
キャーー!!!
見に来てくれたのねェん! ありがとォン!
アタシ見られると燃えるタチなのォ~!
(ぐびっと麦酒を飲む)ぷはーッ。さいこー!
今日はオネェでいくわよォ~♡♡
あっ! ちょちょ……ちょっとぉ! 逃げないでよ、そこっ!
ブラバしないで~っ!
【肉の日マッスルフェスティバル企画用テンプレート】
1.あなたのユーザーネームを教えてください。
うふっ♡ こた☆カンよぉ!
ショートストーリーがへぼいから、テンプレートを華やかに埋めちゃおうってワケ♡
お祭りはノリノリで楽しまなくちゃソンよねェ♡
最後まで生暖かい目で見てて ちょ・う・だ・い♡
2.ゴリマッチョ派ですか? 細マッチョ派ですか? それ以外ですか?
ゴリマッチョってどんなのォ~? アタシわかんなァ~い♡ \(^o^)/
……ってボケかましてると、企画した長岡さんにお尻ペンペンされちゃうのよ! それもイイけど♡♡
ちゃあんと真面目にGoogle検索したわ。そしたらもう……出るわ出るわ! 血管とスジが浮き出た筋肉のオンパレードよォォ!♡♡♡ キャーー!!!♡♡♡
どれもイイッ!♡♡♡ イイわァァ!♡♡♡
『ゴリマッチョ』って、ムキムキマッチョのコトね♡♡♡
『細マッチョ』はスレンダータイプの男の子♡♡♡
どっちか選べってこと? んん~っ、迷っちゃう♡
細マッチョなら、そうねえ……♡(妄想中)
ソファに押し倒され、アタシの肉々しい裸体から目が離せなくなり、赤面する美少年……♡♡♡
んふ♡ たまらないシチュエーションよォ♡♡
でも現実はね、とってもキビシイ。実行したら美少年が赤らむどころか、青くなって震えだすのよ……。挙げ句「本当にごめんなさい、許して」とか泣かれちゃって……。
ああなるともうね、すっごく切ない。乙女が勇気を振り絞って押し倒したのに、どういうことォ!? みたいな! ><
アタシ、悟ったわ……。ああいう男の子には、親指姫みたいな女の子しか近づけないのよ。仮に思いが通じたって、アタシの愛の抱擁に耐えられるカラダじゃないと、一晩どころか秒で抱き潰しちゃうもの。
細マッチョはアタシの王子様じゃなかった……。
じゃあアタシに必要なのは、誰――――?
それはたくましい雄……違うわ、オトコよ! オトナのオトコなんだわ!!!
アタシが全力で抱擁しても、しっかりと受け止めてくれる胸板と度胸を持ってるヒト。そう……ゴリまでは行かない『太マッチョ』。それがアタシの想う究極のマッチョよ♡♡
3.あなたの作品の中で一番のゴリマッチョを教えてください。
キャラ名: 星見の始祖 ラスタニウス
出演作品: 星の女神の章(外伝)https://ncode.syosetu.com/n5240ft/
出演作品: 星を見る人(外伝の短編)https://ncode.syosetu.com/n4086fu/
語りたい事があれば: 外伝のラスタニウスは大柄な若者(16歳)よん♡
名探偵じゃないほうのコナン……英雄コナンに近いのかしらね? アタシ、アレはまだ未読なの。
およそ八百年前に海を渡ってマレード島に来た西方大陸人だから、イーラ海域の民より、ずっとイイカラダ……つまり巨躯だったのよ!
その子孫にあたる星見の首座プロウスが、次点のゴリマッチョね♡
ラスタニウスの血はかなり薄れて、プロウスの肉体は普通サイズになってるけど、あの脂身を剥がせば、すっっごいカラダが出てくるのよォ~♡♡♡ 想像するだけでゾクゾクするわ♡
(※星見=宗教団体 首座=大神官)
4.あなたの作品の中で一番の細マッチョを教えてください。
キャラ名: 赤き勇者カーズ
出演作品: 二番目の勇者は不惑の女 https://ncode.syosetu.com/n6292fl/
語りたい事があれば: カーズは日本人で、騎士タイプの勇者(転移者)ねェ♡
うちの方では「異世界」という単語は極力使わないようにしてるの。だって、よその世界(惑星)があるなんて、調和神以外は知らないもの♡
騎士団(第三師団)の連中はムキムキすぎて、女の子には人気がないのよ。平民の騎士と魔術師なら、魔術師のほうが高給取りだし。だから独身者が多いんだけど……まあ、それはともかく、カーズの細マッチョボディは非常に目立つってワケ。男にもモテちゃって魔術学園の上級学部(騎士科)時代は大変だった筈よ♡
――で『城の女たち曰く「色気のある体」で密かに人気がある』って設定をつけてあげたわン♡♡♡
5.あなたの作品の中で、一番好みの筋肉をしているキャラとその体つきを教えてください。
キャラ名: 砂の国の王子。名前は未定。
出演作品: 二番目の勇者は不惑の女(予定)
体つき: カーズにもう少し筋肉を足したような体+褐色の肌。
語りたい事があれば: アタシの理想はもう2番目の項目で言わせて貰ったから、こっちは「絵になる的な好み」として上げてみたわ♡
ツヤのあるココア色の肌のオトコって、すっごく魅力的よねェ~♡♡♡ 頭の中には、ぼんやり姿があるのよ。まだラフにすらしてないけどねェン♡
6.漫画、アニメ、ゲームキャラの中で好きな筋肉の部位を1〜5箇所あげてください。(例:DBのベジータの大臀筋が好き等)
①週刊少年サンデーの『MAGI』(大高忍の漫画)に出てくる筋肉全般がイイわァ!♡♡
線が柔らかくて、バランスがよくて、表情豊かで(女キャラが怖すぎる時があるけどォ)、絵柄が好きっていうのが大きいかしらね♡♡♡
②『はじめの一歩』(森川ジョージの漫画)の、幕之内一歩が背中を丸めてガードしてる時の、広背筋と三角筋。なんか好きなのよねェ♡♡
らるるあぱるるおーざのテレカ持ってわよ♡ ちなみに鷹村と宮田さんが好き♡
③テレビアニメ『筋肉マン』(原作:ゆでたまご)のロビンマスクの筋肉全般ね。絵的にバランスが良くて好きよ♡♡ 青いし♡
ペンタゴンも羽根が生えてるので好きだったわ。
テリーマンは声が好きだけど、顔とパンツと肌色が好きじゃなかったの。なんでかしらねェ……。
④週刊少年ジャンプで連載してたころの『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』(萩原一至の漫画)D・シュナイダーの肘から下。前腕伸筋群と前腕屈筋群かしら?
剣に蛇がまきついてる6巻の表紙なんかイイのよ……あらら、ロゴで見えなくなってるわねェ。
他にもあると思うんだけど、今思いつくのはこのぐらいかしらね?
7.一番好きな筋肉の部位はどこですか?(何筋フェチ?)
筋肉に貴賤は無いじゃない!?
全てがサイコーよ!!!!♡♡♡
でもォ……発達しすぎてると、アタシ的に(´ε`;)ウーン? ってなる部位も、実はあるの……。
骨盤のあたりの腹斜筋を鍛えすぎて段差ができてる(盛り上がってる)状態は、アタシの美的感覚でいうと「そこはそんなに付けなくても良くなくない?」ってなっちゃうのよねェ。腹斜筋でも上の方……前鋸筋と引き合うあたり(肋骨の脇のほう)がギザギザして見えると、ウホッ♡♡♡ ってテンションがあがるんだけど♡
日常生活で見かける範囲なら……そうねェ、長袖をまくった時に見える肘の骨から手の甲までの筋肉、かしら。前腕伸筋群と前腕屈筋群?
このへんの筋肉が発達してると「あぁん、たくましい……♡」って感じちゃう。
重いものをグッと掴んで持ち上げた時に出る筋もイイわァ♡♡♡
……え、お前も出るんじゃないかって?
そうね、アタシも結構出るわよォ?(笑)
8.あなたにとって筋肉とは何ですか?
まず、外面的な男らしさの象徴ね♡ そして、肉体を描く上で欠かせないものだわ。
アタシ自身の肉体の筋肉は、アタシを生かし、自由を与えてくれるもの。アタシがアタシであるための、武器の一つ……かしらね?
ウィキペディアで「筋肉」と検索して、そこの「性差と魅力」って項目にあったものを、ここに引用しておくわン♡
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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E8%82%89
筋肉組織は人間では性的二形である。筋肉組織の性差は上半身で最も明確であり、平均して、男性は女性よりも60%多い総筋肉量と80%多い腕の筋肉を持っている。したがって、男性の上半身の強さは女性よりも約90%高く(ゴリラのオスとメスの違いに匹敵する)、平均的な男性は99.9%の女性よりも強い。これらの筋肉質の著しい性差は、攻撃性における強い性差の証拠とともに、人類の進化を通じて男性において物理的対立によって課せられた選択圧力を反映している。
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これが正しいのなら、いかにオトコが強いかってコトよね。
オンナを守るべき、なんてアタシは言わないわ。でもオトコは『力がある』ってことを忘れちゃダメ♡♡
9.筋肉キャラの絵を載せてください。絵を描かない方は10にお進みください。
細身のファッションモデル画像をスケッチして、資料も見ないで肉付けした絵だから、ちょっと筋肉が適当なのよォ^^; ごめんなさいねェン♡
カーズは体育会系イケメンあるあるの「自分に自信があるタイプ」のオトコよ♡♡
広島県の漁師の息子で、本名は寿雄。ふふっ♡
14歳のときに召喚されたの。で――「勇者カズオ」と呼ばれるのがイヤだったから、アダ名の「カズ」から、「勇者カーズ」って名乗ってるのね。
左眼には赤い魔眼『真実の瞳』が入ってるわ。
この魔道具は相手の心の内や、過去を視る力もある。……でもねェ、カーズは魔力が少なすぎて衣服を透視する程度しかできないのよ。暗器の確認とかには便利だけど、実用レベルは低いってコト。
頑張れば扉ぐらいは透視できるんだけど、うっかりすると魔力を使いすぎて失神しちゃう。
魔眼と対になっている黒革の眼帯をはずすと、魔眼が待機状態になるから、基本的に眼帯を外さないし魔眼も使わないわ。
うン? 魔眼で覗きをしないのかって?
あは~ン♡ それがナイのよねェ。カーズって女の子にモテるから覗く必要が無いのよ。だから魔眼はほぼ飾りなんだけど、本人は「海賊の親玉から奪ったお宝だぜ!」ってご機嫌なの。
10.あなたの作品のキャラを使って、200字以上の筋肉SSを書いてください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
タイトル: うちの騎士団には○○しかいねぇ!-勇者カーズの憂鬱-
(※不惑の女の時系列でいうと、スペアの入学後~お披露目式の間の出来事です)
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
首座プロウスは足元に転がる養子を見た。
「どうしたカーズ、だらしないぞ」
名を呼ばれた若者は、苦しげに口を開いて息を整えるのが精一杯だった。
クセの強い黒髪が汗に濡れて、毛先がくるりと巻いている。生成りのシャツは上半身にべったりと貼り付いて、彼のしなやかな筋肉――――城の女たち曰く『色気のある体』で密かに人気がある――――を浮き上がらせていた。
もっとも、土にまみれた姿では色気など皆無だったが。
「くっ……そ! 中年太り……のクセに……、動きが…早ぇえんだよ……親父!」
唾を吐いて立ち上がり、木剣を拾って構えつつ相手を見る。すでに三本勝負の二本を取られており、これが最後の仕切り直しだった。
九年ほど前、勇者として召喚されたカーズに、共通語と剣を教えたのはプロウスである。左眼の無い少年に対して、元騎士が本気で打ち込める訳もなく、稽古では常に手加減があった。
それが悔しくて、悔しくて。カーズはがむしゃらに体を鍛えた。
でも、何をしても一度も勝てない。
自分が子供だから、体の大きさに差があるのだと思っていた。
そうでなければ、あんなに太っているプロウスに負ける筈がない。本気でそう信じていた。
――――親父の剣の腕前は、きっと並の騎士より下だ。
――――俺が騎士になれば、簡単に勝てるようになる。
それがとんでもない間違いだったと、今、痛感している。
舐めてかかり、手加減して挑んだ一本目で目が覚め、本気を出して臨んだ二本目でプロウスの実力に気づいた。
(最低でも互角だと思ったんだが、化け物じゃねえか)
足運びの速さだけならカーズに分がある。しかし攻撃範囲の広さ、打ち込みの強さに大きな差があり、木剣を振り抜く速さでも僅かに負けている……ように思う。
(とはいえ、こちとら現役なんだからな、せめて一本は取らねえとマズい……)
じりじりと距離を詰めつつ、カーズは相手の足の運びに集中した。
大神官の衣を腰元まで下ろしたプロウスの体は、あれからさらに太くなっている。弛みこそ無いが引き締まっているとは言い難い、固太りな体型。腹は丸く出ており、背中にもたっぷりと脂が乗っていた。
だが、その下には分厚い筋肉が健在で、騎士だった三十年前とほとんど変わらぬ速さで動き、自在に剣を振れた。
「――――ふっ!」
カーズが仕掛ける。一つ二つと正面で打ち合い、右から中段を薙ぐ。それをプロウスは難なく受け止めて弾き返した。
この返す力が恐ろしく強いのだ。
先程からこれで体勢を崩され、攻め込まれて二本取られている。
だから今回は受けずに力を流して右に回り込み、プロウスの左脇を攻め立てる作戦だった。
「っしゃ!」
「む……」
うまく回り込めたカーズは、矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。右利きのプロウスは窮屈な姿勢で攻撃を凌ぐ形になり、半身を嫌って向き合おうと、左足を引いて体を開く筈だった。
その際の引き足は攻めどころになるし、体を開かない場合は背中を狙えばいい。
それで一本取れると思った…………のだが。
「なあっ!?」
太い左腕がひゅっと閃き、カーズの攻撃を弾く。半身の状態から繰り出した鋭い手刀だった。
「――――っぐ……!」しかも重い。剣峰に岩が落ちたかと思う程だ。
木剣を落とすまいと慌てて剣先に力を込め、強引に腕の流れを変える。かろうじて次に繋ぐ姿勢を保てた。
(実剣じゃねえからって、素手かよ――――ちくしょう! まだ手加減されるのか!)
煮え立つ心とは裏腹に、カーズの右手が震える。
手刀があれなら、利き手の打ち込み……本気の打撃はどれほどになるのか。プロウスの実力の底が見えなかった。
(勝てねぇ…………)
後退しかけた心を見透かすように「来い」と左手が誘う。
「っ……うおぉぉぉぉぉ~~~~~ッ!」
咆哮とともに渾身の一撃。これは木剣で受け止められた。
次は左に。次は背中と見せて膝に落とす。必死になって攻撃を繰り出した。
幾らか有利な立ち位置は、カーズの手が止まれば簡単に覆される。単調にならぬようフェイントも織り交ぜて左脇を攻めているのだが、軽いものは見破られて、端から手刀で落とされていく。
「くっ……! 手刀がうぜえ!」
攻め疲れて息が上がり、攻撃が通用しない苛立ちが、焦りに変わる。
騎士としてはかなり細い体。それを知っているから毎日毎日鍛えて、筋肉と共に自信をつけていたのだが……それでも膂力が違いすぎるのだ。
筋肉量の違い、体格の違い、それはつまり人種の違いであり、近接戦闘において大きな差を生んでいた。
(しくった……!)
プロウスの首筋を狙った攻撃が、甘い角度で入った瞬間、全身の毛が逆立つ。
これはまずい。絶対に反撃が来る――――
ゆるい攻めを見逃さず、プロウスが鋭く踏み込む。
開いた左手が、カーズの太腿を外から掬い上げ「ふンッ!」掛け声とともに勇者の体が宙を舞った。
***
「くっそ~~~、親父から一本も取れねえぇ!」
夕食時。カーズは酒杯を片手に、城の大食堂でクダを巻いていた。
その情けない声を聞いて、同席していた騎士団員たちがドッと笑う。
「だらしねえなぁカーズ」
「ま、真っ当にやった結果だろ? そりゃしょうがない」
「軟弱なアヒル肉ばかり食べているからだろう?」
「そーだぞ、雄牛の肉を食え。ほらよ!」
手前の堅パンの上に、赤黒い乾燥肉が二切れ置かれると、カーズは唇を曲げた。
「この肉、臭ぇんだよなあ……」ぼやきながら肉片を齧れば、煙で燻した香りと、ムッとする獣臭が口内に広がる。徐々に旨味も出てくるのだが、カーズはこの匂いが苦手だった。
ちなみにこの国における牛は、農耕や荷物の運搬用の使役動物である。雌牛から採れる乳と肉は歓迎されるが、雄牛の肉は硬質で独特の臭みがあり、食材としての流通はない。
島国ゆえに漁場は無数にあり、海の幸に恵まれているので『四足の獣肉――それも不味い雄牛の肉を食べるなど、山岳地帯に住む田舎者ぐらいだ』と思われているのだ。
「筋肉つけたいなら、やっぱ雄牛だろ~。少々まずくても俺は食うぞ」
クチャクチャと乾燥肉を咀嚼している男が笑えば、周りも「コッチにもくれ」だの「食うか」だのと声を揃える。
カーズはぶすっとした顔で肘を付き、仲間たちの肉付きの良い体を眺めた。
着衣状態でもわかるほどの胸筋・三角筋・上腕筋群。膝上の大腿四頭筋や腿裏筋肉は分厚く、膝下の下腿三頭筋などもみっちりと発達しており、入浴時に見かける腹筋は六つどころか十に割れていて、指で突きたくなるほど盛り上がっていた。
(背丈からして全然違うからな。人種の違いは絶対あるんだよな~)
カーズは黒髪黒眼に象牙色の肌を持つ日本人だが、周りは西洋人を彷彿とさせる茶髪やら赤毛やら金髪であり、灰色や緑色や茶色の瞳が多い。既に二十三歳だというのに「まだ成長期だろう?」とからかわれる体格の差があった。
特に今の顔ぶれ――第三師団の連中は実動部隊である。肉体で威圧できる猛者ばかりだ。
はあぁ、と息を吐いてボヤく。
「ったく、揃って暑苦しい肉体しやがって。食うのも大切だけどなぁ、普通なら筋トレだろ」
「キントレ? 組み稽古のことか?」
「え……」筋トレという言葉が通じてないらしい。「いや、腹筋とか……やるよな? あれ?」言いながら魔術学園での生活を思い返す。そういえば男子寮でも騎士科の寮でも、筋肉を鍛えるような動きをしている者は…………見たことが無い気がする。
「マジかよ。筋トレしないってことは、どうやって筋肉つけるんだ?」
「何度も言ってんだろ。力強い雄牛の肉を食べれば、雄牛の力が手に入る。だから肉を食べるんだぞ?」
「はあぁ!? なんだそりゃ…………食べると能力が身につくのか?」
「当たり前だろ。肉を食って能力を吸収するんだから。そもそも筋肉ってのはなあ――――」
そこから筋肉についての講義が始まり、カーズは衝撃の事実を知った。
まず、この場にいる騎士団員すべてが『食べることで獣の能力を得る』と本気で信じている事に驚いた。そしてそれが『実際に能力として身につく』と理解した時には、顎が外れそうだった。
この島に生まれた男子を騎士に育てる場合は、歯が生え揃ってから十六歳の成人までの時期に、食事によって適性のある体(筋肉量の多い肉体)を作るのだと言う。その後は筋肉を維持するために、定期的に獣肉を摂取するのだそうだ。
「そのキントレってやつをしなくても、子供のころにしっかり食べておけばいいんだよ」
「お前が来たのは十四歳だったか? 成人までの二年が勝負だったが……星見の宮ではさすがに、雄牛の肉は出さないだろうな」
同情の眼差しを受けてカーズは頭を抱えた。
(食べるだけで筋肉がつく上に、動かなくても衰えないって、何だよそのチート! おい、人種どころか種族が違うんじゃねーか……!)
九年ほどこの国で生活しているが、今までこんな話は聞いたことがない。目眩がした。
尚、カーズが日課にしている腹筋や、腕立て伏せや、走り込みなどは柔軟だと思われていたらしい。『無意味ではないだろうが、筋肉をつけるという意味では効果が薄い』と切り捨てられた。
「俺は筋トレで筋肉をつけて来たんだぞ!?」と主張したのだが、皆、筋肉痛の経験すら無いのだと言う。
これは説得しようと考えるだけ無駄だった。
「牛頭人身かよ! ……くっそ、俺の周りは牛しかいねえし、親父も牛か! 力で勝てるワケねぇわ!」
「ああ、首座様か。あの方が若い頃は騎士だったんだろう? ならば幼少期から体を作ってきただろうし、ラスター家の血は特殊だと聞く。かなりお強いだろう」
「ん、そんなに違うのか?」
「マレード史で習わなかったか? ――――若き王が海を泳いで渡り、神の祝福を受けてこの地に居を構え、国を興した――――ってやつだな。ラスター家の初代は遠い大陸出身で、背丈が二メートル半ほどもある大男だったと言われている。さすがに背が高すぎるし、誇張されてるとは思うんだが……まあとにかく、あそこの男は皆怪力で、大階段の石……アレを一人で運んだらしいぞ?」
「………………。」
その後トレーニングを重ね、いくらか自信がついたカーズが、再三プロウスに手合わせを申し込むも、あえなく宙を舞って惨敗したのだった。
(おわり)
●おまけの小話「くそチビ」
(白銀の勇者スペア:外見は十歳の少女で男装中。中身は不惑の女。本編の主人公)
「――――で、なんで俺がお前のトレーニングに付き合わせられてるんだ?」
「そりゃあ、同郷の人間が白銀しかいないしな。他のヤツに話したって分からねえだろ?」
カーズは自室で腹筋のトレーニング中である。その足首に乗っているのは貴族の少年の装いをしたスペアだった。
ちょっと話したいからと呼び出されて、迎えの馬車に乗って魔術学園からやってきたのだ。どれほどの内容かと思えば、スペアにとってはほぼ世間話である。
「お前なあ……電話感覚で呼び出すのやめてくれよ。俺だって暇じゃないんだぞ。勉強しなきゃいけないことが山ほどあるんだからな」
むっすりとした顔をカーズに見せて、スペアは不満をアピールする。
しかしカーズは二十三歳で、かつての世界では新入社員ぐらいの年頃だ。中身が不惑(四十)を超えたスペアからすれば、まだ子供と言えなくもない。
幾らか優しくしてやるかと、口調を変えて言葉をつけたした。
「まあ、気持ちは分かるけど。……少なくとも俺とマリニアーラは、違うって感じた点があったし」
「やっぱり人種の違いって、あるか」
「あるね。あとなんだっけ、ウルの脛毛の――えっと、プルーフだっけ?」
「ぶっ!」吹き出したカーズは床に寝転んだまま、スペアの顔を見上げた。「お前、アランとそういう関係になのか!?」
きりりとした黒眉を寄せ、スペアは心底嫌そうな顔をする。
「下衆な勘ぐりすんなよ。アランはまだ生えて無かったし、俺が見たのはローランドのプルーフだ」
脚毛とは、ウル一族に見られる身体的特徴のことだ。ウルの男は十歳ごろから膝下の体毛が濃くなり、成人する十六歳頃には踝までをすっかり覆ってしまう。プルーフの充実が成人の証でもあるので、ウルの男はこれを見せ合って毛並みを誇る習慣がある。
『ウルは狼の血を引く』と言われる所以でもあった。
「ほ~、ローランドの方か。あいつ第三師団の補欠なんだよな。時々訓練に出てくるぞ」
納得がいったという顔をして、カーズは腹筋のトレーニングを再開した。重し役のスペアは体重が軽いため、ゆらゆらと揺れる。
「へえ、騎士に補欠なんてあるんだ」のんびりした声には、この世界の常識をまだ把握しきれていない響きがあった。
珍しいものに触れて、他人事のように出した声。そこに引っかかるものを感じて、カーズは目を閉じた。
(こいつ、男の足を見る意味とか、全く分かってねえんだろうなあ……。
『こういうことは、女のほうがちゃんと知っとくべきよ』とか言って、マリニアーラが教えそうなものなんだが。まだ早いか――?)
カーズから見たスペアは天才少女だが、十歳の子供である。大人の、それも男女関係について話すべきか少し迷い「……あのな」と切り出した。
「お前は知らないみたいだから言っとくが、女が『男の生足を見た』とか言ってると、そいつとヤってる仲だと思われるぞ」
きょとんした顔で聞いていたスペアは、その意味を理解した途端に真っ赤になって「やってねーよ! おい、なんだよ、それは!」と、噛みつきそうな勢いでまくし立てた。
何だ、ちゃんと知ってるんじゃねえか――――カーズはニヤリと笑う。
「だから足を見るのも、見せるのも厳禁なんだよ。見ちまった場合はソッコー目を逸らしゃいい。とにかく、ガン見がマズい。気があるって思われるぞ」
「で、でも、俺が見たのって膝下だよ?」
「膝上のほうがヤバいが、膝下でもあんま変わらねえ」
「げっ。じゃあもしプルーフを触ったりしたりすると……」
「押し倒されるんじゃねえの?」
スペアは「ひっ」と息を飲む。あの時は男同士だったから、向こうも脚毛を見せて、触ってもいいぞと言ったに違いない。
だが既にローランドには性別がバレているのだ。本当に触らなくてよかったと思う。
大きく息を吐きながら胸を撫で下ろした。
(あれっ、そうすると私のお披露目式って、すっごく逆セクハラになるんじゃ……)
お披露目式のことを思い出し、今度は頭を抱える。
白銀の勇者として認めてもらうために勇者の証を――太ももの内側にある六芒星を、王や貴族たちに見せねばならないのだ。半ズボンを履けばいい話だから、スペア的には恥ずかしくないのだが、見る側がどう捉えるだろうか。それを考えると頭が痛くなってくる。
「ううぅ……この世界の常識って面倒くさい」
「なあ、お前の百面相を見てても、楽しいっちゃ楽しいが……何かねえか? 親父に勝てそうなネタ」
腹筋を繰り返すカーズに問われて、スペアはしぶしぶ顔を上げた。
「運動が苦手な素人に聞くなよ。……でもまあ、体重差があるなら、やっぱりスピード上げるしかないんじゃないの? あとは柔軟するとか、手首や握力を鍛えるとかは?」
「なんで握力なんだ?」
「だって、筋肉つけるなり速度上げるなりして、強く打ち込めるようになってもさ、握力が弱かったら当たった衝撃で武器が外れちゃうだろ?」
「ん……。それもそうか」
「だから握力。でもトレーニングしすぎて痛みが出るようなのはマズイぞ。腱を痛めても、ここじゃ手術なんか出来ないだろ? 魔術で治る訳じゃないしさ。
俺だって体に傷を付けないよう、動く時はいつも気をつけてる。ここの石鹸は脱脂力が強いから、指先がヒビ切れたりしないように、湯上がりは薬油を塗って保湿は念入りにしてるし。体のケアも大切だぞ。」
「お前ってホント、子供のくせに細かいこと考えてるのなー……。
もう文字や数字の読み書きは出来るんだろ? 夏の休暇期間は俺のとこに来て、ちょっと書類のチェック手伝ってくれよ」
「………………毎月お小遣い貰ってるし、そのぐらいは手伝ってやってもいい」
「マジか! 超助かるわ。やる気でた」
カーズは大変機嫌が良くなり、勢いよく腹筋を繰り返す。
「それにしても、プロウスってそんなに強いの?」
あの中年太りで、とまでは言わなかったが、スペアもそこが気になるのだろう。
「おう、何せ牛だからな。強いっていうか、重い。少々押したぐらいじゃビクともしねえ」
「カーズだって海賊討伐の勇者じゃん。むしろ圧勝かと思ったんだけど」
「あ――……」カーズは誤魔化すように視線を逸した。
騎士団の上層部、それもごく一部だけが知る秘術があり、カーズはそれを借りて海戦で活躍したのだ。周りの騎士たちがお膳立てして、とどめを刺せる状況を作ってくれた、というのもある。
秘術は機密事項だ。ましてや将来は宮廷魔術師――共に国を支える柱だが、騎士にとっては警戒すべき相手――になるであろう勇者には、絶対に言えなかった。
「……殺す気でやるなら色々手段がある、ってやつだ」
「ふーん」スペアの顔は、全く納得してないものだったが、追求するつもりは無いらしい。「じゃあそれはいいけどさ。前に、俺は勇者だってことを隠したいって言っただろ。人前ではハクギンって呼ぶなよな」
「面倒くせえ。ハクギンでいいじゃねえか」
カーズの膝をべしべし叩き「スペアって三文字じゃん! どこが面倒なんだよ!」とスペア。
隻眼の勇者はムッとした顔になり、小さく「くそチビ」と呟けば、小さな勇者はギャアギャアと文句をまくし立てる。
(予備なんて誰が呼ぶかよ。当てつけがましい名前つけやがって……。俺が何も感じないとでも思ってんのか――――)
召喚主不明という、自身の不安定な立場を皮肉ってつけた名前は、正しく召喚された勇者であるカーズの心を抉るものだった。
スペアの気持ちは、カーズも分からないではないのだが、いつか文句を言ってやるつもりだ。
(でもそうすっと、コイツはまた、ピーピー泣くんだよな。……ッチ、面倒くせえ)
スペアの声を聞き流して、カーズは不機嫌な顔のまま、黙々と腹筋しつづけた。
(-勇者カーズの憂鬱- 終わり)
短編は後日改変して本編に組み込む予定です(時間が追いついたら)
オネェ、難しかったです。
某フィーナさんみたいにいきませんでしたっ><
※華やか=正しくは「はなやか」です。適当にルビを振っております。良い子は参考にしちゃだめだよ!
感想・ご意見等はお気軽にどうぞです。
オネェのコテが甘いとか、この筋肉おかしいぞとかのイラストへのツッコミもお待ちしております。
戦闘シーンは描写力がどうこう以前に、立ち回りが「これでいいのか?」と悩んでるレベルです。おかしい点がありましたら、教えて頂けますと幸いです。