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第1話 七瀬桜
飛行機が羽田に着陸する。
ノースリーブから覗いたなめらかな肩が、しっとりと光る。
飛行機の小さな窓から見える、無機質なビルの群れが、陽炎のようにゆらゆらと揺れ、少し目眩を覚えた。
遂に来た、七瀬桜は、目を輝かせた。
空港のカーペットをヒールで歩きながら、何年ぶりだろうと指で数える。
そうだ、7年ぶりだ。23才で東京を後にしたんだ。
地元の友達は、次々と派手な結婚式をあげ、次々と元気な赤ちゃんを産んで、ママになった。
しかし、東京の友達は、一人残らず未婚だった。
桜も、2人の男と付き合ったが、結婚には至らなかった。
1人は店を持つバーテンダーで、桜の一目惚れだった。
俺とおまえは合わないと思うんだ、と言うセリフと共に、田舎臭い女と結婚してしまった。
もう1人は、ゆくゆくは姑になる婆が酷かった。
挨拶も返して貰えず、部屋は覗かれ、ついに胃潰瘍になってしまった。
しばらく、男はいらないと思っているうちに、30才になってしまった。