そして戦場へ
「で、飛彩? 女の子にあんなこと言っちゃうんだから、何か作戦はあるんでしょーね?」
「は?」
「何も策なしだったら、ホリィちゃんじゃないけど流石に幻滅よ?」
「俺はいつも通り戦うだけよ」
「はぁ? あの様子だと、戦うことに怖くなっちゃってんのよ? 何かいいこと言ってあげるとか……」
「そういうのは熱太やエレナ先輩の仕事だろ」
突き放したような言葉に詳しいことを知らぬ蘭華でも面食らってしまう。
世界展開を入手してから、刺々しいもの言いが少しは治ったと思っていたがそれも撤回しようと頭を抱えた。
対する飛彩は通信機器で黒斗とカクリに連絡を入れていた。
相手が渋っているのか、飛彩の声がどんどん荒く大きくなっていく。
そうなった以上、こそこそ話す必要はないというのに蘭華に聞かれないように近づくと離れるを繰り返していく。
「……心配すんな! 世界展開がありゃあなんとかなるだろ!」
押し切るように通信を切った飛彩はカバンの中に忍ばせていた小太刀を取り出し、戦闘時のように強く握りしめた。
「出撃命令出てないのに勝手に行く気なの?」
「ヒーローに俺たちが出来ることって言えばただ一つ……守ってやることだけだろ?」
その言葉を皮切りに、飛彩の背後の次元が割れた。
それはまさしくカクリの空間転移の能力であることに間違いなく、蘭華は目を見開く。
「ちょっ!? あんた何やって……!?」
「お前は来るんじゃねーぞ? じゃないと意味ないからな」
船の上からダイブするように後ろに倒れる飛彩は次元の裂け目に消えていく。
蘭華が手を伸ばすよりも早く、その入り口は閉じられてしまった。
すぐさま蘭華もカクリと黒斗に通信をつなぎ、何をしたのかを問い詰めにかかる。
「ちょっと司令官! カクリ! 飛彩に何させるつもり!? だいたい私も通信いれてよ!」
「お前は親か……」
「だ、だって飛彩さんが蘭華さんは入れるな、って……だいたい、その場にいるんでしょう? 何も聞いてないんですか?」
「アンタの能力でとっとと送っちゃうから何も聞けてないから」
怒涛の勢いで司令室にいる二人を圧倒する蘭華。
一兵卒にすぎない彼女だが、恋する乙女の迫力には上司も敵わないのだろう。
「で、飛彩は何を考えてたんです?」
「一人で戦うそうだ」
「なるほど……って、はぁ!?」
司令室に響く甲高い声にカクリは縮こまって耳をふさぐ。
他の通信士も苦い表情を浮かべているが、黒斗は毅然とした表情のままだ。
「敵の反応は一体、しかもランクHの最低ランク。それに最近落ち目のレスキューワールドをフォローするように仕組まれた因果律も出撃する……人材不足の今、過剰なほどの戦力供給だ」
「それはヒーロー側の理由じゃないですか!」
通信機越しに蘭華が駆け出したのが黒斗たちにも伝わる。
蘭華もそれ以上の追求はやめた。カクリもやりたくもないことを無理矢理やらされただけなのだろうと察したからだ。
走り出したのはカクリの能力を濫発させない心遣いではあるが、何か動いて発散せねばやっていられないと思ったからかもしれない。
「——だが、実際我らは飛彩に頼らなければならない」
「くっ……」
大規模侵攻後、働き詰めな時点で気づくべき事項だったのだろう。
蘭華は歯噛みしながら一気に走る速度を上げる。
黒斗も飛彩の申し出を了承しなければならない一つの事実、それはまさしく護利隊の人員不足を示していた。
何百体のヴィランを用いて侵攻してきたギャブランとの戦いで、日本が支配下に置かれなかっただけでも僥倖というもの。
ヴィランたちの侵攻頻度が減ったとはいえ、生き残ったヒーローや護利隊員だけではもう賄いきれないほどの疲弊が襲ってきているのだ。
「……もう、何考えてんのよ、飛彩……!」
組織に対し、義理堅い訳でもない飛彩。
何故無謀な戦いをするのだろうかと脳内に色々な思考を巡らす。
そして、すぐに飛彩が言い残していった「ヒーローに出来ることは守ってやることだけ」という言葉を思い出した。
「まさか、あいつ……」
ヒーローとしての存在意義を自問自答する翔香……!
沈んだ彼女は本当にヒーローをやめてしまうのか!?
これからも書き続けますので、面白いと思っていただけましたら
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『次章予告』
失意にくれる翔香の心を救うため、飛彩は何と一人でヒーローを守りきると宣言!
現れたヴィランに対し快調に勝負を進めていくが、異世から招かれざる客が舞い降りた!
次回!
『『『舞え、悪の蝶』』』
「守ってやるぜ! ヒーローの変身途中!」





