30話〜妹たちと学校について〜
夏ですね。
夏ですよ。
香恋ちゃんと出会った季節ですよ。
作中が季節に追いついちゃいましたよ。
本当、更新が遅くなりごめんなさい。
こんな作者ですが、引き続き物語りを楽しんで頂けると幸いです。
「あぅ、おいしかったよぉ〜」
「それは良かった」
幸せそうな顔をする香恋ちゃんに俺は微笑んで答える。
お昼ご飯は思ったより静かに終わった。
立花兄妹がいるからもっと騒がしくなるかと思ったけど、香恋ちゃんが黙々と幸せそうに食べるもんだから、みんなもそれに倣って食事に集中してた。
春樹は「これがリアル『至福ぅ〜』か!」と笑ってたけど、確かに恍惚とも言える香恋ちゃんの顔は至福とも言えなくない。
けど、春樹。
香恋ちゃんに色目を使ったり家から叩き出すからな?
いや、まあ、楽しんでるだけみたいだから実際には叩き出しはしないけど。
俺は食べ終わった食器をさっさと片付ける。
途中、「あっ、レンレンのお兄さん、私手伝いますっ!」ってなっちゃんが申し出てくれたけど断った。
お客さんに洗い物させたくないし、なっちゃんには香恋ちゃんの相手をしてもらいたいしな。
俺が洗い物を終えて席に戻っても、香恋ちゃんは余韻に浸ってるのかぽわんぽわんしてたけど、まぁ良しとしよう。
うん、眼福、眼福。
「あっ、お兄さんご馳走さまでした!
美味しかったです!」
「優っちは相変わらず料理上手だよなぁ。
将来はそっち系に進むん?」
と、席に戻った俺になっちゃんと春樹が交互に感想を言ってくれる。
「どういたしまして。
それと、俺は別に料理人になるつもりはないぞ」
「えー、もったいなくねー?
男子でそこまで料理できたら、目指そうと思わないん?」
「んー、料理は別に料理人になろうと思ってた訳じゃないからな。
作る人は俺ぐらいだったし、どうせ食べるなら美味い方がいいじゃん」
実際、母さんが亡くなってから、美華伯母さんとか麗姉が色々してくれてたけど、料理ぐらい自分でやろうと思ったのがきっかけだしな。
「まあ、そうなんだろうけどなぁー。
あっ、でも再婚したって事はこれからどうすんの?」
「どうすんのって?」
春樹の言いたい事がわからない。
「いや、今までは家事がどうのこうのとかで部活にも入ってなかっけど、これからは自分の時間が増えるじゃん。
なんかやりたい事とかないん?」
「あー、そうだなー」
俺はちょっと考える。
来週には香澄さんも仕事を辞めて、家事に専念するって言ってたし、春樹の指摘通りに自分の時間が増えるだろう。
「って言っても、今更、部活に入る気にはならないしな。
香恋ちゃんとの時間は作りたいし、何だかんだで次回の生徒会選挙で生徒会に入ってもいい気はしてる」
西高は文武両道で部活をやってる奴はかなり真面目にやってるから、今更そんな奴らの輪に加わろうとは思えない。
初めの頃は結構勧誘されたけど、今じゃあ声もかからなくなったしな。
生徒会なら1学期の間で麗姉に手伝わされた分、馴染みやすいだろうし。
俺がそう考えていると、春樹が目をパチクリとさせていた。
「そんな面白い顔してどうした?」
「いや、優っち。
生徒会長に生徒会の仕事させられる度、げんなりしてたのにどんな心変わりなん?」
あー、確かに1学期の頃は嫌々やってた時もあったけど、麗姉も最近丸くなってきたし。
なんだかんだで誰かのサポートをするのは性に合ってる気がする。
「んー、まあ最近色々とあったから、別にそれも悪くないなぁと思っただけだよ」
「色々って何さ?」
「まあ、色々とだよ」
春樹の言及に俺は笑って誤魔化す。
なっちゃんがいる前で話すことでもないしな。
「あっ、レンレンのお兄さん!
私からも聞きたい事があるんですけど、いいですか!?」
大人しく聞いてたなっちゃんが口を挟む。
「うん、別にいいけど、どうしたの?」
「最近、レンレンが西高に行きたいって言ってるから、私も西高を志望しようと思うんですけど、お兄さんの目線から見た西高ってどんな高校ですか!?」
なっちゃんが目を輝かせ興味津々に聞いてくる。
香恋ちゃんも余韻に浸るのをやめ、興味深そうに俺をみてくる。
「どんな高校って、春樹から聞いてないの?」
「いやぁ、アニキからは色々聞いてますけど、それだけじゃあ意見が偏っちゃうんで、お兄さんの意見も聞いてみたいっす!」
あー、確かに1人だけだと意見が偏ることはあるか。
春樹に至っては要領が良くて頭の出来がいい妹から馬鹿にされないために頑張って西高に入ったって聞いた事もあったしな。
多少誇張してある所はあるかもしれない。
それにしても、西高がどんな所か。
「んー、西高はいい所だよ」
無難に答えると、
「具体的には!?」
と、なっちゃんが食い気味に聞いてくる。
うん、春樹に似てテンション高いな。
「先ずは歴史が古くて、施設はしっかりしてるよ」
「そうなんですかっ?」
「うん、元々は4大財閥には入らなかったけど、かなり有力な実業家が若者の教育のために始めた学校だからね。
戦後の高度経済成長の発展にもかなり貢献したみたいだし、各分野にも割と強いパイプはあるって聞くかな。
それが西高ブランドの名をより高めてるし、今も恩義を感じてるOBによる後援会からの寄附金は他の高校と比べても桁が1つ違うぐらいだし」
「へぇー、思ってたよりすごいんですね」
なっちゃんが感嘆し、春樹が初耳って顔をする。
てか、なんで春樹が知らないんだよ?
「成り立ちとしてはそんな所で、学校方針としては『義理と人情』、『文武両道』が二本柱かな。
割と古臭いと感じられる所はあるけど、それが西高の特徴と言えば特徴かな」
入ってすぐは馴染めない生徒もいるらしいけど、2〜3ヶ月もすればすっかり西高の色に染まってる感じはする。
「ふんふん、学校行事だとどんな感じです?」
「学校行事はかなり多い方だと思うよ。
1年の1学期だと親睦を図るための課外演習とか球技大会、後は各部活の応援活動。
2学期は学校をあげての文化祭に音楽祭、秋の遠足という名の強歩大会なんかあるかな」
「応援活動ってどんな感じなんですか?」
「応援活動は応援部にチア部、それと吹奏楽部が主体で活動していて、一般生徒は今は任意かな。
運動部は特待生制度があるぐらい力入れてるし、一応、一般生徒でも申請書を出せば公欠扱いで応援に行けるよ」
男子は授業がサボれるならって仲の良い奴の部活の所に応援しに行くし、女子に至っては男子を物色しに行くみたいで結構盛り上がる。
昔は全生徒強制だったらしいけど、今は反発する声もあって任意になってる。
けれど、体感的には何かしら応援しに行く生徒の方が多いかな。
「へえ、メッチャ面白そうですね!
それに吹奏楽部の出番が多そうなのはテンション上がりますっ!
それに対して、ウチのアニキは部活にも入ってないとか」
なっちゃんが春樹を冷たい目で見るが、部活に入ってない俺としても勘弁して欲しい。
「部活も今は強制じゃないからね。
昨今だと部活に入りたがらない世間の風潮はあるし、学校側もそれを踏まえてサークル活動の拡充とかアルバイトの斡旋とか色々やってるから。
若者の多様化ってのは最近学校側も力を入れて考えているみたいだよ」
「へー、そんなもんなんですねー」
なっちゃんが納得はしないけど、理解はしましたーって顔をして、俺は苦笑する。
この辺の活動に関しては、生徒の取りまとめでもある生徒会の議題によく挙げられるし、俺も手伝いとして関わった分全く知らないって訳でもない。
学校斡旋のアルバイトだと卒業生が始めた家庭教師の会社のアルバイトが評判いいらしい。
時給は高いし、受講生からも現役の西高生から学べると評価もいいとの事。
俺なんかは家庭の事情的な所があって部活に入ってなかったけど、春樹はアルバイトをしたいってのもあって部活に入ってないはずだ。
まあ、春樹なら可愛い妹のためとか、遊ぶためとかが理由だと思うけど、自分で金を稼いで好きな事に使うのは立派だと思う。
俺が口に出す事じゃあないから言わないけどな。
簡単に学校について話してみたけど、俺から言える事と言えば、
「とりあえず、百聞は一見に如かずっていうから、9月に行われる文化祭に来てみるとよくわかると思うよ。
なんだかんだ、学校見学より文化祭を見てウチの高校に決めたってやつ結構多いからさ」
「そうなんっすね!
じゃあ、レンレンと行ってみます!」
「うん、楽しみにして待ってるよ」
俺はそう言って、この話を締めくくる。
いい加減、香恋ちゃんからの『なっちゃんと盛り上がり過ぎっ!』って目線が心に痛いし、春樹の白けた目線が限界に来てたから丁度いい。
「そういえば、お兄ちゃんのクラスは何か出し物するの?」
と、香恋ちゃんが若干膨れっ面をしながら俺に訪ねてくる。
「あっ、私も聞きたいっす!
アニキに聞いてもいつも答えてくれないんで!」
と、なっちゃんも便乗して聞いてくる。
俺は『あー』と唸り声をあげ春樹を見て、
春樹も俺を同じように見てくる。
うん、心は1つって事で、
「それは当日までの秘密で」
「そうそう優っちの言う通り、楽しみは後に取っとくもんだぜー」
と、2人ではぐらかした。
どうせバレるならいつ言っても良いじゃないかと思うかもしれないけど、バレなくて済むならそれまで黙っときたいって言うのも人間の心理だと思う。
その後の妹たちからの目線がしばらく痛かった事は言うまでもない。
副題 <お兄ちゃんはツライよ(色々と)>




