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27話〜妹と明日の予定〜

 


「お、終わったー!」


 香恋ちゃんが宿題を終わらせた事に手を万歳して喜ぶ。


 今は夏休みに入ってから1週間が過ぎたある日の夕方。


 いつも通りに俺の部屋で、香恋ちゃんと麗姉を交えての勉強会をしていた。


「そう、なら見せなさい」


「はーい」


 麗姉の言葉に香恋ちゃんは終わったばかりの宿題を麗姉に渡す。


 香恋ちゃんは宿題を渡した後、万歳して床に寝転がってダラける。


 うん、集中力が切れちゃったのはわかるけど、もう少し抑えようか?


 まだ麗姉が宿題を確認してるし、薄着のトップスがめくれて可愛いおへそが見えちゃってる。


 まあ、注意するほどじゃあないからそのままにしておいていいか。


 ちなみに、俺は宿題を2日前に終わらせた。


 読書感想文で麗姉から何度も添削をもらったおかげで大分時間取られたけど。


 それがなかったらもう1〜2日は早かったと思う。


 言い回しとか、言葉のチョイスとか、誤字脱字を的確に指摘してくる麗姉はどこぞの編集者だよ? と思ったのは秘密。


 だから、麗姉。


 香恋ちゃんの宿題を確認しながら、俺を睨むのはやめない?


 言葉にしてないんだけど。


「香恋」


「ひゃいっ!」


 名前を呼ばれて香恋ちゃんがガバッと上体を起こす。


「えっと、何、お姉ちゃん?」


「最後のここだけど、計算違いしてるわよ。

 もうすぐ終わるって集中力が切れかけてたのがよくわかるわ。

 終わるまで、しっかりと集中力を保ちなさい。

 実際の試験でやったら、落ちるわよ?」


「お、落ちるって、それ、受験生には禁句だからっ!」


「言われて嫌ならしっかりとしなさい」


「……はーい」


 麗姉の指摘に香恋ちゃんは唇を尖らせながらも、間違えた所を再計算し間違えを確認する。


 ここまで若干詰め込んだ感じはあるけど元が元だし、この期間で宿題が終わったのはいいペースだと思う。


 これが受験まで続けば西高にも入れるんじゃないかな?


 勿論、このペースが続けばというのと、夏休み明けの模試でどれだけ周りが学力を上げてくるかにもよるけどね。


「さて、少し早いけど、今日はここまでにしておきましょうか」


 気づけば麗姉がそう言葉を切り出していた。


「香恋、明日の午前中が部活だったわよね?」


「うん、そうだよ」


 香恋ちゃんの部活は言うまでもなく吹奏楽部だ。


 そして、夏休みに入ってからの吹奏楽部の練習は週一回の全体練習だけとの事。


 3年生にとって最後の大会は既に終わっていて、10月の市民フェスティバルでの小中学校合同パレードがあり、それで引退らしい。


 と言っても、そこまでガチで部活をする訳ではないそうだ。


 体制としても2年生が主体で部活をまとめており、合同パレードも毎年同じ曲を演奏するため3年生は全体練習以外基本的に自由みたいだ。


 去年は新体制になり、部室に入り浸っていた香恋ちゃんだったが、今年は防音となってる自室があるし、部活よりは受験に専念する事になっている。


 と、ここまでが香恋ちゃんから聞いた話だが、閑話休題(それはさておき)


「明日は午後から勉強見る予定だったけど、急用が入ったから明日はなしにしとくわ。

 それと、香恋の理解度もわかったから、明後日は参考書を買いに行くからそのつもりでいなさい」


 香恋ちゃんが「あ、新しい参考書……」と軽く項垂れるが、俺は麗姉の急用が気になった。


「急用って何かあったの?」


「ええ。詳しい話は明日訊くけど、文化祭実行委員が準備にあたって近隣と問題を起こしてくれたみたいね。

 お陰様で明日は午前中から実行委員に事情聴取して、午後はその対応をしないといけなくなったわ」


「それは、何て言うか……お疲れ様」


「ええ、全くだわ」


「実行委員会の連中、どうしてくれようかしら」と独り言をしながら浮かべる笑顔が怖い。


 何をしてくれたかはわからないけど、実行委員会の人達が無事に済むように祈ろう。


 今は俺の出る幕がなかった事に安堵する。


 基本的に生徒会の役員は麗姉を始めとして人使いが荒い。


 麗姉はちょっとした雑用でも俺を使うし、それ以外の役員もかなり癖が強い。


 生徒会副会長の茜さんがマシと言えばマシの部類に入るだろうか。


 今回は雑用レベルの話ではなく、学校レベルの話だから役員ではない俺が手伝わされる事はないだろう。


「優は明日、どうするのかしら?」


 麗姉からの質問に俺はうーんと悩み、


「特に予定はないけど。

 あっ、香恋ちゃん、明日お昼どうする?」


 と、香恋ちゃんに訊ねる。


 香澄さんは今月いっぱいはまだ働いてるし、家で食べるならお昼の準備をしないといけない。


「うーん、家で食べると思うよ?」


「わかった、じゃあ明日のお昼ご飯は作っとくね」


「やった! お兄ちゃんの手料理だ!

 何作るの!?」


「それは明日のお楽しみで」


 その言葉を聞いて香恋ちゃんが「何かなぁ〜」と笑顔を浮かべて、色々想像する。


 別に秘密にするほどではないけど、たらこスパゲッティを作ってあげるつもりだ。


 以前、サイザで美味しそうに食べてるのを見てから作ってあげようと思ってたけど、まだ作ってなかったしな。


「なら、優は明日は1日家かしら?」


「まぁ、そうなるかなぁ。

 午前中は買い出しと家事をするだろうけど、何で?」


 珍しく奥歯に何か挟まったかのような感じの麗姉の言い方が気になる。


「いえ、そろそろ優の友達のあのお調子者が騒ぎそうな気がするのよね」


「ああ、春樹か」


 何度か会った事があるが、麗姉は春樹が何て言うか苦手だ。


 ノリがどうも合わないらしい。


 春樹は春樹で良いところはあるんだけどな。


「あのお調子者のせいで予定が崩れるのは嫌だから、予定がない内に遊んどけばと思っただけよ」


「なるほどね」


 麗姉の言葉に俺は納得した。


 それにしても春樹と龍弥か。


 最後に遊んだのは終業式の日にファイナルラウンドに3人で行った時かな?


 夏休みに入ってからは『ライス』でやり取りはしてたけど、何だかんだずっと勉強会で遊べてなかったな。


 たまには遊ぶのはいいかもしれない。


 まあ、龍弥は部活動があるから、明日は来れないかもしれないけど。


 それに香恋ちゃんの事はまだ言ってないけど、いつかは分かる事だろうし、ここらで話しておくのもいいかもしれない。


 正直、気乗りはしないんだけどな。


「うーん、香恋ちゃんは明日、俺の友達を家に呼んでも大丈夫?」


 香恋ちゃんが嫌なら呼ぶのを止めようと思って聞いてみると、


「うん、大丈夫だよ、お兄ちゃん。

 お兄ちゃんの友達なら会ってみたいし。

 あっ、そう言えばなっちゃんが遊びに来たいって言ってたけど、なっちゃんを誘ってもい〜い?」


 と、笑顔で答えてくれた。


「なっちゃん?」


 って、誰だっけ?


「なっちゃんは同じ吹奏楽部で私の友達だよっ♪」


「あっ、そうなんだ。

 別に来ても構わないよ」


「お兄ちゃん、ありがとう!

 じゃあ、後でなっちゃんに『ライス』してみる!」


「それじゃあ決まったらまた後で教えてね。

 ご飯の人数の都合もあるから、もし部活終わって更に人数が増えるようなら早めに『ライス』してくれると助かるかな」


「は〜い♪」


 香恋ちゃんはルンルンと鼻歌を歌い、上機嫌になる。


 俺はそれを見ながら明日の段取りを考える。


 まずは春樹と龍弥に『ライス』して、


 明日は午前中に買い出し。


 父さんと香澄さんにも話しをして、もし他に買う物があるならついでに買っておこう。




 色々やる事はあるけど、久々の息抜きに俺の気持ちも高揚していた。




 副題 <逝くな、実行委員。胃薬の貯蔵は十分か?>




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