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24話〜現状認識と妹の今後〜

 




 池袋で俺にハーレムが出来た後の話。


 サイザを出るまでに3つのルールが決められ、俺達は家路に着いた。


 帰宅した俺は自室のベッドで横になり、そのルールについて考える。




 ルール1




 [このハーレムはあくまで一時的である事]




 言い換えると、このハーレムには期限がある。


 期限のリミットは俺が高校を卒業するまで。


 早ければ俺が特定の誰かを正式に恋人にした時に自動的に解消される。


 元々が俺の心の整理がつかないからであるので、俺もキチンと考えていかなければならない。


 むしろ、よくそこまで猶予を貰えたとも思う。


 3人としては俺の卒業と同時に籍を入れるのが理想らしい。


 俺としては籍を入れる方に猶予が欲しいところではある。




 ルール2




 [優先順位はローテーション制]




 これは予定がブッキングした時に、3人が喧嘩しないようするらしい。


 厳密には詰めてないみたいだけど、喧嘩しない事に越した事はない。




 ルール3




 [このハーレム期間中、エッチはなし]




 これは麗姉が決めた。


 当然と言えば当然である。


 なのだが、この話を聞いた時に委員長が冷や汗をかいていたのが印象に残っている。


 委員長は俺を押し倒す気だったのだろうか?


 そう思うと、俺も冷や汗が出てきてしまう。


 委員長と会う時は理性を強く保とうと心に決める。




 と、まあ、現状はこんなところか。


 基本的には今まで通りに俺にアピールする事には変わりないらしい。


 ……いや、本当、気づかなくてすみません。


 誰もいないが心の中でそう謝る。


「よしっ、現状認識終了!

 宿題進めるか!」


 俺は顔を両手で叩き、気持ちを入れ替える。


 このままベッドで横になりそのまま寝たい欲求を抑え、勉強する事にする。


「と、そういえば香恋ちゃんの勉強を見る約束してたんだっけ」


 俺は忘れかけていた約束を思い出し、『ライス』で香恋ちゃんに『いつから勉強やる?』とメッセージを送る。


 が、すぐに既読にはならなかった。


「まあ、いっか」


 20〜30分もすればメッセージに気づくだろう。


 ずっとスマホを見てる事もないし、もしかしたらもう勉強してるかもなと思い、自分の宿題を進めた。




 ♪ ♪ ♪




「あ〜、疲れた〜」


 俺は椅子の上でグッと背伸びをし、凝り固まった筋肉をほぐす。


 スマホを確認すれば17時を回った所で、1時間半近く集中していた事になる。


『ライス』を一応確認してみるが、香恋ちゃんからの既読はまだついていなかった。


「あれ、寝てるのかな?」


 気になった俺は直接香恋ちゃんの部屋に向かう事にする。


 そして、廊下に出た所で香恋ちゃんの部屋からトランペットの音色が僅かに漏れていた事に気付いた。


 もしかして……


 俺は香恋ちゃんの部屋をノックする。


「香恋ちゃん?」


 俺は声をかけると、トランペットの音色が止まり、ドアが開かれる。


「お、お兄ちゃん、どうしたの?」


「いや、勉強を見るって約束してたから『ライス』も送ったんだけど、気づいてないみたいだったから」


「ああっ! 忘れてたー!」


「わたしのばかーっ!」と香恋ちゃんはしゃがみ込み自分を責める。


 ドアの隙間からはトランペットとセッティングされた譜面台が見えていた。


「えーと、ずっと吹いてたの?」


「ず、ずっとじゃないよっ!

 帰って、お兄ちゃんとお姉ちゃんからもらったプレゼントを眺めてた時間もあるから!

 吹いてたのは多分1時間ちょっとだよ!」


 そう慌てて否定してくるけど、意味ないからね?


「うん、要は勉強してなかったんだね?」


「ソンナコトナイヨ?」


 香恋ちゃんは目を逸らしつつ、指を遊ばせる。


 えーと、香恋ちゃんって受験生だよね?


 いや、マジで大丈夫か?


 お兄ちゃん、妹の将来が心配だよ?


「とりあえず、お話しようか?」


「はい……」


 ガックリと肩を落とした香恋ちゃんはそう返事した。




 ♪ ♪ ♪




 香恋ちゃんの部屋で話を聞いている内に俺は頭が痛くなった。


 平日の自習時間が2時間程度だったからだ。


 学校ではトランペットの練習をして、家ではクラシック音楽のCDを聴いたり、動画サイトでプロの奏者を観て研究。


 勉強はその合間にやっていたとの事。


 香恋ちゃんのトランペットへの愛が重すぎる……


 そりゃあ、あそこまで上達するわな。


「えーと、香恋ちゃんの中学校って、中高一貫のエスカレート方式だっけ?」


 俺はこめかみを抑えながら、香恋ちゃんに訊ねる。


 それならまだ望みはある。


「で、出来れば、お兄ちゃんと一緒の高校に通いたいなぁって……」


 香恋ちゃんは可愛らしく言うけど、


「うん、無理☆」


 俺は笑顔で即答した。


「ひどいよっ!」


 香恋ちゃんが涙目になり批難するけど、無理な物は無理だろう。


 基本教科の5科目を1日1時間未満の自習程度で受かるほど、そんな甘い高校じゃない。


 香恋ちゃんは勉強しなくても出来るほどの天才には見えないし。


「酷いのは香恋ちゃんの勉強時間かな?

 ちなみに、前回の県内統一模試の結果は?

 お兄ちゃんに見せて欲しいなぁ」


「うぅ〜」


 香恋ちゃんは逡巡するが、俺が引かない事を悟ると机から模試の結果を取り出して見せてくれた。


 その模試の結果を見て、俺はさらに頭が痛くなる。


 数学と科学はかろうじて偏差値が55前後。


 国語、英語、社会については偏差値50前後。


 悪くはないけど、良くはない。


「香恋ちゃんは西高の合格目安偏差値知ってる?」


「えっと、65前後……」


「うん、それ最低ラインね。

 安全圏に持っていきたいなら70は欲しいかな」


「あぅ……」


 救いなのはまだ夏休みが始まったばかりな所か。


 今からならまだ挽回は出来る……はず。


「あっ、そうだ!

 お兄ちゃんの高校は特待生制度はないのっ!?」


「特待生制度はあるけど、音楽では取ってなかったはず。

 その辺りは麗姉に聞けばすぐにわかると思うよ」


 麗姉は生徒会長で、学校の規則や制度は網羅している。


「うぅ〜、何でお兄ちゃんはそんな高校に行っちゃったの〜

 お兄ちゃんのばか〜」


 と、香恋ちゃんは涙目になり、俺を責める。


「はいはい、現実逃避は止めようね。

 それで香恋ちゃんは本当に西高に行きたいの?」


「うん」


「ちゃんと勉強出来る?」


「頑張る」


「トランペット、自重出来る?」


「無理、かも……」


 うん、そこは正直だね。


「まあ、無理矢理やらせても身に付かないか。

 となると、俺だけじゃあキツイか」


 俺はスマホを取り出し『ライス』を起動させる。


「お兄ちゃん、何してるの?」


「麗姉に『ライス』してるところ。

 短期間で上げるなら麗姉もいた方が心強いから」


 香恋ちゃんの顔が青くなるけど、仕方ない。


 俺だとどうしても甘くしちゃうだろうから、麗姉のスパルタ式に頼ろう。


 当面の目標は夏明けの模試で偏差値60以上かな。


 俺がやる気を出して香恋ちゃんの勉強計画を頭で組み立て始める。


 その隣で絶望している香恋ちゃんは気にしない。


 気にしてはならない。


 さあ、この夏は色々大変そうだな!





 副題 <俺の可愛い妹は勉強が出来ない>







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