22話〜妹と従姉と委員長と②〜
「大変お待たせ致しました。
お席にご案内致します」
サイザに着いて待つ事数十分。
俺達5人はようやく席に案内された。
案内されるまでお通夜状態だったので空気はやたらと重かった。
案内の人の顔が若干引きつってるのは気のせいではないと思う。
案内された席はソファーと椅子のテーブルだった。
俺と香恋ちゃん、麗姉がソファーに、
委員長と佐藤が椅子にそれぞれ座った。
「ご注文はお決まりですか?」
案内の人のオーダーに、
「あっ、俺はナポリタン特盛り」
「わたし、タラコスパゲティ♪」
「ミートドリア」
と、待ち時間でメニューを決めていた俺、香恋ちゃん、麗姉が順番に注文する。
「ん、ドリンクバー単品2つ」
委員長は泣き止んだものの、何だか意気消沈しており、代わりに佐藤がそれだけ注文した。
「畏まりました。
ドリンクバーはご自由にお取りください」
と、決まり文句を言って、店員が下がっていく。
委員長と佐藤はドリンクバーを取りに行く気配はないが、この後どうしようか?
香恋ちゃんは人見知り発動中なのか、関わろうとはしない。
むしろ、頭の中がタラコスパゲティでいっぱいに見える。
タラコスパゲティが好きなのかな?
今度作ってあげよう。
と、思考が逸れた。
麗姉は特に何も言わずに動向を見守っている。
気になったのは時折委員長を可哀想な子を見るような目で見るぐらいか。
委員長に関して言えば、居たたまれない。
なんで泣いたかも、こんな意気消沈してるかもわからない。
分からないと言えば佐藤もだ。
普段クラスで不思議ちゃんと呼ばれてるのは伊達ではなく、今こうして対面に座られてても、何を考えているのか分からない。
全員と面識ある俺が何か話を振った方がいいんだろうか?
話を振るにしても何を話せばいいのかわからん。
俺がそう悩んでいると、
「ん、私は佐藤冴。
こっちは佐藤萌。
小鳥遊と同じクラスメート。
貴女は誰?」
佐藤が自己紹介を始め、香恋ちゃんに話を振る。
香恋ちゃんは佐藤の問いに少し考え、
「わたしはお兄ちゃんの妹の香恋です」
と、おずおず答えた。
佐藤は委員長と一瞬目を合わせ、
「小鳥遊は一人っ子のはず。
そういうプレイ?」
と、遥か斜め上の答えを返して来た。
「いや、なんでだよ」
その返しは考えてなかったわ。
ふぅと俺はため息をつき、端的に答える事にする。
「香恋ちゃんは、つい最近親が再婚して出来たばかりの妹だよ」
「それは初耳」
「学校のやつらには誰にも言ってないからな。
知ってるのは麗姉除いたら、2人が初めてかな」
「そう。
つい最近って具体的にはいつ?」
「正式に妹になったのは一昨日かな」
「その割には仲いい」
「そうなのか?
兄と妹なんてこんなもんじゃないか?」
「傍から見たら異常」
「異常って、おい」
俺からしたら、普段話さないクラスメートから淡々と詰問されてる現状の方が異常だわ。
「ん、小鳥遊妹はわかった。
小鳥遊が生徒会長とペアルックなのはなぜ?」
「ペアルックにした覚えはないけどな。
麗姉が選んだ服が偶々そうだったとしか言いようがない」
「なるほど、理解した」
佐藤は香恋ちゃんと麗姉を一瞥する。
香恋ちゃんはその視線にビクッとし、
麗姉は睨み返す。
「ん、よくわかった」
よくわかったって何が?
「小鳥遊は小鳥遊妹と生徒会長についてどう思ってる?」
「どうって言われてもなぁ」
「質問に答える」
「普通に可愛い妹と従姉だと思ってるよ」
「それだけ?」
「ああ、そうだと思うけど」
何だ?
佐藤は何が言いたいんだ?
「なら、萌については?」
「委員長について?」
「冴ちゃんっ!?」
佐藤の質問に対して委員長がビックリして声を上げた。
「萌、静かに。
悪いけど、私は小鳥遊に対して激おこ。
容赦はもうしない」
「激おこって、俺はお前に対して何かしたか?」
「そんな事もわからない。
小鳥遊は萌を泣かせた。
萌が何で泣いたかもわからない。
違う?」
それは……否定出来ない。
現に、ここに来るまでも、ここに座ってからも皆目見当がつかなかったからだ。
「お待たせ致しました!
ナポリタン特盛の方ー!」
話の途中で、空気を読めないウェイトレスが料理を持ってくるが、
「邪魔、後にして」
「し、失礼致しましたっ!」
と、佐藤がウェイトレスを追い返す。
「で、小鳥遊は萌が泣いた理由はわかる?」
そして、佐藤は何事もなかったかのように話を続ける。
「いや、委員長には悪いが見当がつかない」
俺は正直に答える。
「ん、知ってた。
小鳥遊、鈍感だからって誰かを傷つけていい理由にはならない」
佐藤はバッサリと俺を切り捨てる。
鈍感って俺がか?
「冴ちゃん!
私はそんな事お願いしてない!」
委員長が涙目で佐藤にそう言い募る。
「ん、されてない。
でも私は言った。
『萌の告白の邪魔をするものは私が排除する』、
『私が好きでしてる事だから感謝しなくていい』とも。
1番の邪魔は生徒会長じゃなくて、小鳥遊自身」
「俺自身?」
「ん、小鳥遊は異性として、女性から好かれてる事を自覚するべき」
「俺が、異性から好かれてるって?」
そんな事を言われても告白された事ないし、
年齢=彼女いない歴の俺がか?
そんな戸惑う俺を、佐藤は許さない。
「ん、本当にわからない?
小鳥遊は小鳥遊妹から妹ではなく異性として好かれてる。
生徒会長からも従姉ではなく異性として好かれている。
もちろん、萌からもクラスメートで仲がいいではなく異性として好かれている。
なのに、小鳥遊はそれに気づかない。
前兆があるのに気付こうともしない。
正直、殺したくなる」
と、佐藤がいつもの眠たげな表情ではなく、あからさまに殺意を乗せた視線を俺に向けてくる。
何だこれ?
俺の目の前に座ってるのは誰だ?
「3人の恋愛の邪魔した事については謝る。
それぞれ理想の告白を妄想してたと思うけど、それはまた仕切り直せばいい。
告白はゴールじゃないから。
私は別に小鳥遊が誰を選ぼうが文句は言わない。
幸せになれるなら3人選んでも構わない。
誰かが不幸になるような一夫一妻制度は死んでいいとすら思う。
けど、誰かの好意に気づかず、
誠実に対応せず、
今後も誰かの好意を無視し続けるなら――」
そこで、佐藤は席を立ち俺を見下ろす。
「その時は本当に殺す」
佐藤はそう言い残して、千円札を机に置いてからサイザを後にした。
呆然と座り込む俺達4人を残したまま、
佐藤は1人帰っていった。
副題 <ラスボスの後には裏ボスがいました>




