12話〜妹と参拝〜
東護稲荷神社。
日本中のどこにでもある普通の氏子神社である。
鳥居に一礼してから鳥居を通ると石畳みの階段が現れる。
その階段を上がるとまた鳥居があり、手水舎、神輿や大太鼓等が仕舞われている倉庫、社務所、拝殿、そして本殿が見えてくる。
普段使う際にはそこまで意識しないが、今日は香澄さんと香恋ちゃんのお宮参りを兼ねているので、正式な作法に則り、まずは手水舎で清める。
香恋ちゃんは初めてでどうすればいいのかわからなかったみたいで、逐一俺を見ながら真似しているのが可愛いらしかった。
清めた後に香恋ちゃんが手をハンカチで拭こうとしていた時には慌てて止めたけど。
手を繋いで歩いている時に、妹の手の感触を楽しまずに、キチンとマナーについて教えておけば良かったと反省する。
注意されて悲しそうな香恋ちゃんを慰めるために頭を撫でてあげたかったけど、それもマナー違反になるのでグッと堪えて、社務所に向かう。
「小鳥遊様。本日はようこそお待ちしておりました」
「高任神主、本日はよろしくお願い申し上げます」
と、父さんが神主の高任さんに挨拶する。
なお、普段の2人は下の名前で呼び合う中の良さなのだが、これから正式参拝ということもあり、どこか堅苦しかった。
そして、高任さんの案内のもと、拝殿に俺たちは上がり、神主主導のもと正式参拝を行なった。
正式参拝については特に記述することはないと思う。
簡単に言えば、神主がお祓いをした後に祝詞をあげ、
玉串拝礼、2礼2拍手一礼するだけなのだからだ。
強いて挙げるなら、ガチガチに緊張した香恋ちゃんも可愛いかったことだ。
うん、香恋ちゃんが可愛いのはいつもの事なので、流石にそろそろくどいか。
とまあ、正式参拝はこれぐらいにして、俺の今日の本番はこれからである。
「それでは、これより直会を行いますので、会場にご案内します」
高任さんが神前に供えた物を下げつつ、俺たちを社務所の会議室に案内して行く。
普段は祭りや神事の打ち合わせ等に使うが、こう言った席でも使う事があるため、やや広めに作られている。
会議室に着くともう氏子達がみんな揃っていて、皆の前には宴会料理にお酒がズラッと並んでいた。
俺からしたら近所の気のいいおっちゃん達が並んでいるだけなのだが、香恋ちゃんは怖くなって来たのか、
「お、お兄ちゃん……」
と、俺の袖をクイッと引っ張りながら、小声で俺の名を呼んだ。
潤目で上目遣いの香恋ちゃんがとってもキュートである。
「大丈夫だから、とりあえず座ろうか」
と、頭をポンポン触ってあげ、
「う、うん……」
と、香恋ちゃんが頷く。
そうして、皆の席の前に並べられた長机の前に俺たち4人が座ると、
「それでは本日はお楽しみください」
高任さんがそう言ってから下がる。
それと入れ替わるように、信義伯父さんが立ち上がり、
「皆様、大変お待たせ致しました。
本日は我が弟の新しい家族のために足を運んでいただき、誠に有難うございます。
ただ今より、我らの新しい仲間入りをした小鳥遊香澄さんと小鳥遊香恋ちゃんのお披露目会を執り行わせていただきます」
信義伯父さんがそう開会の宣言をした。
副題 <妹ならもうなんでも可愛いお兄ちゃんと開戦宣言>




