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可愛い妹が出来たので愛でます  作者: Precious Heart
第2章ー怖い従姉が舞台に上がりましたー
13/35

11話〜振袖姿の妹を愛でます〜

 



 俺がやらかした後。


 お昼ごはんの時にはぱっと見、香恋ちゃんは普通の様子に戻っていた。

 父さんや香澄さんにもバレている様子はなかったので、ホッと一安心する。

 マジでワンちゃん家から叩き出されるのを覚悟していたからだ。

 俺は感謝の意を込めて、香恋ちゃんと目を合わせる。

 すると、


「ツーンっ」


 と、唇を可愛く尖らせ、香恋ちゃんにそっぽを向かられてしまった。





 どうやら、まだ少し時間がかかるみたいである。


 自業自得であるとは言え、お兄ちゃん寂しいよ?





 昼食後、


「優、俺は香澄と香恋ちゃんを送ってくるから、時間になったらお前も着付けろよ?」


 父さんが俺にそう伝えてきた。

 俺はこの流れにデジャヴを感じつつ、


「あれ、着付けは3時からでいいんじゃなかったっけ?」


 そう疑問を投げかけた。


「着付けは3時からでいいかもしれんが、女性は髪型とかメイクとか色々あんだよ」


「えっ、と着付けてから髪型をセットするんじゃなくて、髪型をセットしてから着付けるの?」


「ああ、そうだ。

 ずっと着付けてたらただでさえ暑いのに可愛そうだろうが」


 室内の冷房が効いた部屋にいるとついつい忘れがちになるが、今は夏である。

 しかも、今年の夏は連日35℃超えの猛暑日が続いている。

 お披露目会をお昼ではなく夕方にしたのも、その辺りの配慮があったのだろう。


「なるほどね。

 気をつけて行ってらっしゃい」


「ああ、じゃあ後は頼んだ」


 父さん達はそうして荷物を持って出かけていった。


 俺は食器を洗い片付けると、部屋に戻り夏休みの宿題にさっさと取り組み始めた。


 もちろん、宿題が終わらなかったら麗姉が怖いからである。






 ビピピピピ


「おっ、ともう時間か」


 スマホのアラームが鳴り、3時を教えてくれる。

 特に記述するような事もなく、

 あっという間の2時間だった。


 俺はクローゼットから紋付羽織袴を取り出して、鏡を見ながら1人着付けを行う。

 昔から年に数回は着る機会があり、1人でも余裕である。

 以前春樹から普通の家庭は和服すら持ってねぇよと言われた時は軽いカルチャーショックを受けたものだ。


「うし、これで良し」


 俺はおかしな所はないか確認してから、時間を確認すると30分程経過していた。

 女性だとさらに時間がかかるから後1時間は宿題が出来るだろう。

 しかし、集中力が切れた俺はリビングに降りて、3人の帰りを待つことにした。





 ブロロロ。


「おっ、帰って来たな」


 リビングで明日の香恋ちゃんとの買い物先をピックアップしたり、宿題や夏祭り、盆踊りなどなど春樹と龍弥と『ライス』で遊ぶ予定を組んでいると、門から車の音が聞こえてきた。

 時間は16:40になったところだった。

 これから参拝する東護稲荷神社(とうごいなりじんじゃ)まで徒歩で5分程なので、すぐに出かける事になるだろう。

 俺はプレゼントでもらった印伝の合切袋に貴重品とスマホを入れ、鍵を掛けてから3人の所へ向かう。


「お帰り」


「おう、ただ今。遅くなって悪かったな」


 と、黒紋付羽織袴姿の父さんが、


「お待たせしました」


 と、紋付色留袖姿の香澄さんが、


「た、だいま……お兄ちゃん」


 と、恥ずかしがった様子で香恋ちゃんが車から降りてきた。


「えっ、と、ど、どうかな?」


 香恋ちゃんが肘を90度に曲げ、袖を綺麗に見せながらそう聞いてくる。


 どうかと、言われるとメッチャ可愛い。


 効果音にしたらズキューン!


 と、胸に何かが突き刺されるレベルである。


 具体的に言えば、ピンク色の薄い夏生地に散りばめられた赤い菊模様の振袖が可愛い。


 普段はストレートな髪型も、後ろ髪が上で軽く留められ、そこからふわりと垂れてるのが、香恋ちゃんの雰囲気に合ってて可愛い。


 なによりも、照れながらも俺に感想を聞いてきてくれる香恋ちゃんが1番可愛い。


「えっ、と、そんなに見つめられると、恥ずかしいよぅ」


 香恋ちゃんが手をもじもじとさせる。


「あっ、ごめん!

 香恋ちゃんがあまりにも可愛く、つい!」


「本当にそう思ってる?

 お世辞じゃなくて?」


「もちろん、お世辞なんかじゃないよ!

 可愛すぎてそのまま俺のスマホの壁紙にしてずっと眺めてたいレベル!」


「えへへ、そう?

 お兄ちゃんがそうしたいんだったら、そうしてもいいよ?」


 ふにゃりと香恋ちゃんが相好を崩す。

 あっ、よかった、いつの間にか機嫌もすっかり良くなっている。


「あー、お二人さん。

 兄妹で盛り上がってるところ悪いが、時間もないからそろそろ行くぞ?」


 父さんが呆れた顔で俺らに言うと、返事を待たずに神社へとやや早めに歩き出す。

 その父さんの横には香澄さんが並んで歩いている。

 俺と香恋ちゃんは2人を慌てて追いかけるが、


「あっ、と」


 草履に慣れていないのか、躓きそうになった香恋ちゃんの手を掴み事なき得る。


「あはは、ありがとう、お兄ちゃん」


 香恋ちゃんは照れ笑いして、歩き出すが見ていて危なっかしい。


「ほら、危ないから、俺の手を捕んでな?」


 俺はそっと左手を差し出す。

 香恋ちゃんは一瞬躊躇うが、


「うん、ありがとう、お兄ちゃん♪」


 と、俺の左手を右手できゅっと掴んだ。


 それから神社に着くまで、俺と香恋ちゃんは手を繋ぎながら歩いた。





 香恋ちゃんの手はちゃっちゃくて、

 温かくて、スベスベしていて、

 俺の手とは全然違っていた事だけ、

 ここに明記しておく事にする。





 副題 <赤い菊の花言葉は『あなたを愛しています』>





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