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可愛い妹が出来たので愛でます  作者: Precious Heart
第2章ー怖い従姉が舞台に上がりましたー
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9話〜従姉は生徒会長様〜

 



「優、貴方(あなた)いったい何様のつもりかしら?」


 生徒会室に入るや否や、眉間に皺を寄せ目くじらを立てた麗姉が俺に聞いてくる。


「唐突に何様のつもりと言われても意味がわからないし。

 てか、何でそんな怒ってんの?」


「別に怒ってなんかいないわよ」


「そ、そう?」


「ええ。とりあえず、適当に座りなさい」


「あ、あぁ」


 触らぬ神に祟りなし。

 俺は大人しく近くにあった椅子に腰掛ける。

 そして、見慣れている生徒会室を眺めて一言。


「てか、なんで他の役員がいないの?」


 俺は入室して気になっていた事を麗姉に訊ねた。

 生徒会室はロの字に机が囲まれており、

 その一番上座、つまり生徒会長の椅子に麗姉が座っているだけだった。


「何を言ってるのかしら?

 今日は生徒会会議がないのだから、他の役員がいるわけないじゃない?

 そんな事も分からないとは、私は優をお馬鹿さんに育てた覚えはないんだけど?」


「俺もそこまで言われる覚えはないよっ!

 えっ、てか会議がないなら何で生徒会室に呼んだわけ?

 しかも、放送部員まで使ってアナウンスしてさ?」


「放送部員は私の手足なのだから特に意味はないわね。

 生徒会室に呼んだのは単に嫌がらせよ」


「嫌がらせ?」


「ええ」


 そこで、麗姉はスッと目を細め、


「1学期も終わるというのに、

 未だに優が誰のものかも分からず、

 勝手に手を出そうとした身の程知らずの小娘に、

 この世の辛さを教えたくなったのよ」


 えっ、怖っ。

 てか、


「いやいや、俺は別に麗姉の物じゃないし。

 委員長は話しかけてきただけだし、

 そもそもなんで麗姉が俺のクラスの様子を知ってるのさ!?」


「あら、そんなの私の信者から、

『委員長が優に手を出しています! どうしますか!?』

 って密告があったからに決まってるじゃない」


「決まってるとか言われても、そんなもん知らないからっ!

 それに信者って、なに!?

 麗姉は新世界の神様にでもなったの!?」


 うふふ、と麗姉が不敵に微笑む。


「優は中々おかしい事を言うわね。

 今時、熱狂的なファンクラブの会員の事を信者とも言うらしいわよ?

 それと、氏子(うじこ)の1人でしかない私を神様と一緒にするなんて、優は氏子としての自覚が足りてないんじゃなくて?

 今度、氏神(うじがみ)様に謝りなさい。

 ついでに私がたっぷり調教してあげるわ」


 ヤバい、藪蛇を突いた。

 俺はその場で土下座をして、


「調教とかマジで止めてください。

 お願いします」


 そう、麗姉に懇願する。


「まあ、そこまでされたら仕方ないわね。

 私も鬼ではないのだから、立っていいわよ」


 その許しの言葉に俺は立ち上がり、改めて麗姉の事を見つめる。




 麗姉。


 本名、小鳥遊 麗華。

 歳が1つ上の従姉にして、宗家の1人娘。

 性格はお察しの通り、傲岸不遜(ごうがんふそん)にして天上天下唯我独尊。

 顔は綺麗系であり、髪型はロングでウェーブがかかっており、体型に至ってはモデルにすら引けを取らない、正に神に愛された美少女。

 この名門私立西高等学校においては、1年時に生徒会長となり、麗姉に逆らえる者は教師を含めこの学校にはいないとすら言われている。

 ご存知の通り、俺も麗姉には逆らえない。

 筋肉や体格とか喧嘩とかなら俺の方が強いはずだが、麗姉はそんな次元にはいないのだ。

 因みに、学校で麗姉は皆から「生徒会長」か「絶対女王」と呼ばれ親しまれている。

 麗姉は意外にも「二つ名みたいで楽しいわね」と容認していた。

 まあ、麗姉が信者と呼ぶほどの熱狂的なファンクラブの存在すら容認していた事については驚きであるところだが。




 閑話休題。




「てか、用件は特にないの?

 それなら春樹と龍弥と遊びに行く予定もあるから、さっさと帰りたいんだけど?」


 短時間で精神力をごっそり持っていかれた俺は心情を素直に吐露する。


「あら、そうなの?

 それじゃあ、優で遊ぶのはここまでにして、手早く用件を終わらせましょうか」


 用件、あるんかい……


「用件は3つ。


 1つ目、優、成績はどうだったのかしら?」


 俺はあれ? と意外に思った。


「麗姉なら既に知ってるんじゃないの?」


「質問に質問で返さないで。

 時間の無駄よ。

 優の口からキチンと言いなさい」


「わかった。

 麗姉のご指導ご鞭撻のおかげで音楽の2を除けばオール5だよ」


「そう。まあ、私が面倒を見て、それ以外の結果はありえなかったわね。

 というより、優の音痴はむしろ天災レベルと言えるのかしら?」


「天才とか天災とか俺はもう知らん。

 2つ目は?」


「2つ目は明日、優の新しい母と妹のお宮参りの後の段取りについて。

 終わったら社務所の会議室を借りて氏子入りのお披露目会と言う名の宴会になるわ。

 参加者は宗家と近場の分家、有力氏子の35名。

 優は新しい妹を連れて全員に挨拶する事。

 これは宗家当主であるお父様の命でもあるわ」


「宗家当主の命、確かに仰せつかまつりました」


 俺は恭しく傅く。


「いい、心がけね。

 初めからそうしていなさい。

 3つ目、今年の合宿は8月の4週目の全部を使って行うわ。

 それまでに夏休みの宿題を終わらせ、予定を全て空けておきなさい」


「えっ……?」


 俺の目から生気が失われる。


「優、返事はえっ……? ではなく、はい、よ」


「はい」


「よろしい。

 下がっていいわよ」


「はい。

 ……じゃねえ!」


 俺は大人しく引き下がる前に待ったをかける。


「ちっ」


「今、舌打ちしたっ!?」


「あら、私がそんな真似するわけないじゃない。

 ところで、私との旅行がそんなに嫌なのかしら?」


「そんな可愛い物じゃないだろ!?」


 あれは合宿とか旅行とかそんなちゃちな物じゃない。

 控え目に言って修験僧の修行。

 大げさに言えば地獄である。


「あら、優が何を言っても宿はもう抑えたし、

 そもそも優に拒否権はないわ」


「ないの!?

 てか、マジで今年は無理だよ!?

 可愛い妹を家に残して、1週間も家を離れられるかっ!」


 俺が思わずキレると、


()()()、妹?」


 麗姉が眉間に皺を寄せ、俺を睨んでくる。


「あ、ああ」


 何で美人の怒った顔って、こう、威圧感が半端ないのかね?

 キレてたはずなのに、思わずたじろんでしまう。


「新しい妹はそんなに可愛いの?」


「香恋ちゃんは天使だと思うぐらい可愛い妹だよ」


 思わず、俺は即答してからしまったと思う。

 俺がこんな言い方したら、麗姉が興味を持つに決まってるじゃないか……


「へぇ、それは面白いわね」


 麗姉の口角が上がる。


「いいわ、優の新しくできる妹も一緒に連れて行ってあげましょう。

 それなら文句はないでしょう?」


「文句ありまくりだよ!?

 俺じゃああるまいし、受験生の子を連れ回すな!」


「あら、私の手にかかればこの学校だって首席で合格出来るわよ?」


「確かにそうだけどっ!」


 その実現例が俺自身だから否定できない。


「思えば、優の妹も明日で氏子入りして小鳥遊家の一員になるのよね。

 私とした事がすっかり失念していたわ。

 小鳥遊家の一員として恥じぬ様、しっかり可愛いがってあげるわ」


「うふふ」と麗姉が不敵に微笑む。


「香恋ちゃんを麗姉のペースに巻き込むなよ?」


 俺は麗姉の目をしっかり睨む。

 声が自分でも低くなり怒った口調になるが知った事か。


「へえ、優の割には言うじゃない?」


「可愛い妹のためなら言う時は言うさ」


 俺と麗姉はしばらくお互いの目を睨み合う。

 その間、重苦しい空気が生徒会室を埋め尽くす。

 気の弱い人間ならば発狂するかもしれない。


「まあ、いいわ」


 先に折れたのは珍しい事に麗姉だった。

 珍しいと言うより初めてかもしれない。


「一旦、合宿の件については保留にしておきましょう」


「あ、ああ」


 あまりにも物分かりの良い麗姉の姿に、逆に不安を覚える。


「下がっていいわ。

 お友達と約束があるんでしょう?

 小鳥遊家の一員以前に人として約束はしっかり守りなさい」


「貴重な時間を無駄にしたのは麗姉だけどな」


「あら、何か言ったかしら?」


「いえいえ、何も言ってませんよ?」


 これ以上、麗姉を刺激する前にさっさとトンズラするか。

 俺はカバンを持ち生徒会室から出て行く。

 その寸前、


「ねぇ、優?」


 後ろから麗姉に声をかけられる。


「明日のお披露目会を楽しみにしておくわ。

 あまり私をガッカリさせないでね?」


「ああ、また明日」


 俺は背中を向けたままそう返事して生徒会室から今度こそ出て行く。





 明日のお披露目会が荒れないように、

 もし荒れたとしても妹に被害が被らないように守らなきゃと胸に刻みながら。






 副題 <ラスボスがログインしました>








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