27、この薄汚ねぇブタ野郎が(真顔)
赤いコケを探しに行く→コケの親玉を怒らせて呑みこまれる→呑みこまれた先で魔族四天王の二人+魔族の生き残りとエンカウントする(今ここ)
前回から間隔が開いてしまったのであらすじ的なセリフを入れようと思ったのですが、コンパクトにまとめられなかったので↑で妥協しました。
……寒くなるとあっというまに時間が経ちますね!!(無関係)
「僕☆復活!!!」
てな感じで胸元から現れたるは空飛ぶ子豚ことナビゲーターのナヴィ。どうでもいいが私の胸リスポーン地点に設定したヤツはあれか四徹くらいしたあとだったのかマジざけんなと小瑠璃は思いつつ空中でポーズを決めているナヴィを見ていた。
「わあ~、うざ~い」
スローボールだがド直球のマムの横で、アスモデが愛らしいかつ妖艶かつなんとも言えない表情をしている。
「そいつが君の神使ぃ?」
「恥ずかしながらな」
不本意な相棒との不本意な迷宮生活。軽々しく人(というか神)の話に乗ってはいけませんという典型例だ。
別にナヴィが嫌いなわけではないけども。
(か、勘違いしないでよねっ! 別にアンタのこと嫌いなわけじゃないんだからっ!)
(…………え…………急に真顔でどうしたの……)
まだ眠らない上司さん。割とガチで引いていた。
こっちもこっちで、あ、普通にキモイなと自分で思ったその台詞は予想以上に小瑠璃の心を深く傷つけたが、そんなことはどうでもよかった。
「まあコレのことは「コレだなんてひどいや!!」……置いといて、建設的な話をしよう」
ナヴィをハンドグリップ代わりに握力を鍛えながら、とりあえず閑話休題。
ベル子ちゃん見る限り魔族ってナヴィのこと嫌いみたいだし、なるたけ触らない方が吉だろう。このまま話題を変えてしまおう。
と、思ったのだけども。
「ちょっと待っててねぇ。その話、そこのブタを洗脳して自殺させるゲームに飽きてからでもいーい?」
「あのブタさんの皮、欲しいです~。……雑巾に」
遅かった。案の定ヘイトカンストしてた。
前にベル子ちゃんがちょろっと話していたが、どうせ誰も覚えていないだろうから説明しよう。
魔族は、実は大昔この世界に転生してきた転生者たちの末裔で、神様に(といってもブタ神様とは別神だが)半ば騙されるようにこの凶悪迷宮アレーナに飛ばされたという経緯を持ち、そのせいで神様とかそういうのの関係者に恨みを持っているのである。
「小瑠璃……この娘たち、目が怖いよ!」
「もう好きにすればいいよ」
ストレス発散してからの方がおしゃべりもしやすかろう。小瑠璃!? と叫ぶナヴィはどうせたいしたダメージは受けないのでスルーした。
そして世界スプラッタ劇場(だが無傷)を経て、やっとまともな話し合いがはじまったのだった。
「で、どーするよ」
小瑠璃としては即時脱出を主張したい。
このままコケに栄養吸われてみるのも一興と言えば一興だが、いかんせんベルに心配かけてしまうのがネックだ。いや、よく考えたら黙って出てきてる時点でアレな気もするけど。
まあいいか。
まともな感性の持ち主ならそろそろ心配する頃だろうが、ベルのことだ。これ幸いとばかりにグータラしているにちがいない。
しかし万が一ということもあるため即時脱出を主張……できればいいのだけれど、まあ、それは目の前の二人もきっと同じわけで。そしてそれができない事情があるわけで。
「そぉだねぇ。ボクたちも、仲間から死人が出る前になんとか脱出したいとは思ってるんだよね」
「でもいかんせん~、私たちでは攻撃力が足りなくて~」
「攻撃力とな」
ぶっちゃけそれは私も自信ないぞと思いつつ、アスモデの話を聞く。
「ボクら四天王の中ではリーダー……もう死んじゃってるのが一人いるんだけどね、その人がメインアタッカーでさぁ、そのサポート兼準アタッカーがベルフェゴールで、ボクたち二人はどっちかというとトリッキータイプなんだぁ」
確かに、『色欲』も『強欲』も大火力攻撃が得意なイメージは皆無だ。『憤怒』を持つ『上司さん』はその点、色々とうってつけだったのだろう。
まあ、じゃあなんで『怠惰』のベルが火力職扱いなんだよということも言えるわけで、結局は『大罪』スキル抜きでの個人の資質も関係してくるのだろう。
(ま、スキルの取得方法とか知らない私が考えてもしょうがないことか)
スキル云々についてはちょっと無知過ぎることを認めなければならない。そもそもスキルの新規取得が可能かどうかも知らない体たらくだし。
『憤怒』を取得したといえばしたけれど……あれは特殊すぎるか。
(ちなみにナヴィ、この二人のステータスは?)
とりあえず、こみ入った話はここを切り抜けてからにしよう。そのために必要だろうと思われる情報は積極的に収集しておく。
そして、
(すぐに解析するよ!)
と言ってテレパスで送られてきたのが以下である。……尻文字じゃないことに違和感を覚え始めていてヤバいなと思う小瑠璃だった。
アスモデア・メア・ディー
LV24
力:1223
耐久:1176
器用:1121
敏捷:1253
魔力:1451
総合闘級:竜級
称号:『色欲』の継承者
アクティブスキル:〈ルストLV8〉〈魅了LV10〉〈洗脳魔法LV10〉〈サキュバスキッスLV10〉〈サキュバスキックLV10〉〈リキッド・ドレインLV9〉〈身代わりの刻印LV2〉〈夢渡りLV8〉〈クリエイトナイトメアLV7〉
パッシブスキル:〈色欲LV8〉〈夢魔LV10〉〈被共感LV4〉〈愛されキャラLV5〉〈健康美人LV3〉〈魅了の瞳LV10〉〈気分屋LV2〉〈悪のカリスマLV3〉
(スキル欄の偏りが半端ない件について)
直接戦闘系らしきスキルがほぼない上、だいたいのアクティブスキルが容易にR18的展開に繋げられそうだという驚愕の布陣。
(上司さん的には彼女の戦闘力はいかほどで?)
(そうだな…………魅了や洗脳が通じる低魔力のモンスター相手なら無類の強さだけど……耐性があったり、魔力が高すぎたりだと、クソの役にも立たないね……)
(なるほど)
(……あとは、調子に乗ってくると周りが見えなくなるし、かなり自分本位な性格だから……そういうところも心底使えない……)
(予想以上にシビアな評価をありがとうございます)
ヘルハウンドのときも割と重要な図式だったが、この世界では魔力=MP=魔攻=魔防が成立する。つまり、直接魔力によって起こされる類の『魅了』『洗脳』『呪い』などなどといったバッドステータスは、使用者より高い魔力の相手には通用しにくいらしい。
まあ、とりあえず〈健康美人〉や〈愛されキャラ〉、あと〈悪のカリスマ〉ならどれをツッコむべきだろうかと小瑠璃は思いつつ、なんかもう面倒になってきたので次に行くことにした。
マム・オルフェス・アルテトラン
LV36
力:1412
耐久:1376
器用:1397
敏捷:1432
魔力:1123
総合闘級:竜級
称号:『強欲』の継承者
アクティブスキル:〈グリードLV8〉〈強奪・スキルLV6〉〈強奪・ステータスLV2〉〈スワップステータスLV3〉〈オールダウンLV6〉〈死毒の疾風LV5〉〈パラライズストームLV5〉〈強奪:死の魔眼LV1〉〈強奪:サンダーLV1〉
パッシブスキル:〈強欲LV8〉〈強欲者の見えざる手LV8〉〈トレジャーハンターLV7〉〈審美眼LV6〉〈毒耐性LV6〉〈麻痺耐性LV6〉〈睡眠耐性LV4〉〈状態異常魔法の知識LV4〉〈盗賊の心得LV2〉
(ステータス的には意外とパワーファイターですね)
が、スキル欄は完全にトリッキー一直線な印象を受ける。トリッキーなのに一直線とはこれいかに。字面から判断するに、スキルやステータスを奪ったりと強欲に相応しい能力持ちらしい。奪ったスキルの数やレベルを見るに条件や制約はありそうだが、チートである。くれ。
あとはステータス下げたり状態異常ばらまいたりしてきそう。パラライズをストームするとかもう正気じゃない。絶対相手したくないやつじゃんと思いながら、小瑠璃は四天王パーティーのバランスの悪さに驚愕の念を禁じえなかった。
(あれでしょ? 戦士と魔法使いにプラスで何故か呪術師二人が付いてくるんでしょ? 私がプレイヤーだったらコントローラー投げてるな)
(ごめん……俺もどっちかというと魔法使い…………)
(そっと梱包しなおして売りに行きます)
いや、戦わなきゃ現実と。
アタッカーなのに回復魔法が使えてしかも〈スロース〉や他のあれこれで搦め手もできちゃったりするベルの優秀さを思い知りながら、小瑠璃は目の前の二人に意識を戻した。
「そんなわけでねえ、ボクたち二人とも、上のコケをこじ開けられる威力の技って持ってないんだあ」
まあ呪術師二人だからしょうがない。残念ながら当然、いわゆる残当ってやつだ。
「なんとか上に出ようとして~、適当な魔法ぶっ放したんですけどぉ~、全然穴が開かなくて~。逆にこっちが痺れちゃって~」
「心停止するとこだったよねえ。で、コケにも一応麻痺は効いちゃったみたいでさあ。余計怒らせちゃって、上の方、ゴーレムで大変だったんじゃないかなあ」
( お 前 ら の せ い か )
HAHAHAHA!! と笑い合う二人を小瑠璃はいつもより二割増しの死んだ目で見つめた。
(…………なんというか、こんな奴らでごめん……)
(上司さん)
(…………なに?)
(私は自分が好き放題やらかすのは大好きだけど……他人にやらかされるのは迷惑だ)
(クズだね)
まあ過ぎたことは振り返るまい。
これでもクラスメイトからはオールウェイズ人間暴走機関車などと呼ばれていた身……そう、振り返らず全力疾走こそ人生の華。過ぎたことをネチネチ根に持っていては前に進めない。
――と、以前楽しみにしていたカップのアイスを食べられたことを理由に半年ものあいだ兄へ毎日地味な嫌がらせをし続けたという伝説を持つ小瑠璃は思う。
「あー、私もなんか広範囲殲滅魔法をぶっ放したい気分」
しかし、残念ながらそんな火力技は持っていないのである。無念。
持ってさえいればこんなコケだらけのものすごく陰気なところは脱出して、コケだらけのすごく(※ここの違い重要)陰気なところまで戻るのだが。
天井を見上げると、高さはおよそ十五メートルほど。マンションで言えば……四階くらい? まあそんな感じのほぼ垂直な壁に囲まれているというのが現状だ。
前世なら軽く絶望状態だが、今はコケさえ消し飛ばせればよじのぼるのはそう難しくなさそう。それだけに火力技を持っていないことが悔やまれた。
…………待てよ。
あるじゃないか、つい最近取得したヤツが。
そう、〈ラースオブゴッド〉ことラスゴである。
あの超絶威力ならコケの天井を突破するなど造作もないだろう。
上司さんに止められているのは、あくまで彼が残留思念になってくっついていると明かすことで、『憤怒の簒奪者』であることを隠しておけなんて一言も言われていないし、そもそもヘルハウンドを倒したと言った時点で隠しようがない。
よって〈ラスゴ〉を使うことに何の問題もないはず。
(『憤怒の簒奪者』……君のことはただのデメリット付きの中二病な称号だと思ってたけど、認識を改める必要アリだな)
なにはともあれ、打開策は見つかった。
よーしやるかーと、コケに埋まった手をずぼっと抜いて天井へと伸ばしながら、小瑠璃は上司さにと言った。
(ではボス、使用許可を)
(……え? …………あ、うん。いいんじゃないかな、別に…………)
とことん投げやりだな、この人。
(ていうか、いい加減寝なくていいんですか。あんた当初の予想よりはるかに私のプライベート侵略してて迷惑なんですが)
(いや……疲れてるのに妙に目が冴えるって、ない? 明日朝早くから仕事なのに寝れない……みたいな)
(ありますあります。私の場合学校だけど)
(今、それなんだよね……)
(あー)
共感よりもなによりも、この人の休眠ってそんな日常の就寝レベルのことだったのかという驚きというか、こうなんとも言えない感情が小瑠璃の胸中を満たした。
しかし、とにもかくにもお許しは出た。
〈ラスゴ〉を発動させるべく、天井へと突き出した右手へ、なんかこういい感じに魔力を込める。
(前にヘルハウンドが使っていたときの威力を見るに余波すごそうだけど、まあいいだろ。死にはせんだろうし。たぶん)
よっしやるぞー、と、思っていたところ、ナヴィが怪訝な表情(〈憤怒〉のせいかむちゃくちゃ腹立つ)をして聞いてくる。
「ねえ小瑠璃、君はさっきから何をやっているんだい?」
「いや、〈ラスゴ〉でコケの天井を突破できないかなーと」
現状それしか手はなさそうだし。
まだまだピンピンしてるマムとアスモデは別として、衰弱してる魔族の皆さんをいつまでもこんなところに置いておくわけにはいくまい。
とりあえずさっさと皆でベル子ちゃんにサプライズかましてやろうぜと言うと、ナヴィは「え……何を言ってるんだい?」と、哀れみと嘲りが1:9でブレンドされたような表情で小瑠璃を見た。
そして言った。
「小瑠璃の魔法の才能はほぼ〈無敵〉で消費されてるから、そんな大魔法は持ってても発動できないよ?」
「死ね」
―以後使わない(かもしれない)故の用語紹介―
〈トレジャーハンター〉:金目の物を感知できるようになる。
〈強欲者の見えざる手〉:欲望の対象が自動的に手の中に転がり込んでくる、因果干渉系のスキル。限度はある。
〈審美眼〉:物品の価値を見抜く眼力。
〈健康美人〉:所持者の健康と美容を守るスキル。
〈リキッド・ドレイン〉:生命力吸収効果を持つ液体を作り出し、操る。
〈身代わりの刻印〉:この刻印を受けた者は使用者の代わりにダメージを負う(LVによって限度が変化する)。ただし、刻印には相手の同意が必要。
〈愛されキャラ〉:知的生命体と接するとき、相手がスキル所持者に好感を持ってくれやすくなる。
〈ルスト〉:対象を強制的に発情させる魔法。このとき全ての耐性(スキル他、魔力による耐性含む)は無視される。発動した瞬間R18展開必至の禁じ手。




