第九話 町へ行こう
「おい、起きろ。」
そう言われて目が覚めた。
「そろそろ出発するぞ。」
もうそんな時間か。
「分かりました。」
とりあえず、そう返事をしたら、
「そんなかしこまらなくてもいいぜ。」
と言われたので
「分かった。」
と返事をし直した。
そんなことをしていたら、女の人が
「そういえば私たち自己紹介してなかったわね。私の名前はアリスよ。」
と言ったので男の人も
「俺の名前はギルトだ。よろしくな。」
と言った。
この流れは僕も自己紹介しなければならない流れだ。
「僕の名前はユウだよ。」
と自己紹介をした。
そしたら、二人から
「よろしくね。ユウ君。」
「よろしくな。ユウ。」
と言われた。
この人たちは本当にいい人達だ。
僕がこの先にある町を破壊した張本人だと知ったら悲しむだろうか?
まあ、バレないようにするが。
そんなことを考えているとギルトが
「よし、じゃあ行くか。」
と言ってみんなで歩き始めた。
道中はとても平和だった。
おかしい。
なぜ僕の時はあんなに動物が好戦的だったんだ。
まあ気にしてもしょうがない。
おそらく僕は運が少しばかり悪いだけだろう。
町だったところに着いた。
とても驚いていたが、すぐに気を取り直してこれからどうするかを話していた。
僕は、両親が死んだ件について心の整理がついていたと思っていたが、まだ整理しきれていなかったようだ。
とても悲しいし、泣きたくなってきた。
町のやつらに対する憎しみや、両親が死んだ悲しみなどの感情がごちゃ混ぜになって心に黒いものがたまっていくような気がした。
知らないうちに涙が溢れていたのか、
ギルトとアリスが慰めに来てくれた。
そんなに優しくされたら本当に泣いちゃうじゃないか。
でも、僕が泣くことは許されない。
だって、僕のせいで両親が死んだから。
涙を拭って大丈夫と二人に伝えた。
そしたら、二人から今後の予定について聞かされた。
とりあえず、一番近くの町(僕が行こうと思っていたところ)に戻ってギルドの人に伝えるらしい。
そんなに大変な事態なのか、と聞いたら
「普通、魔獣が町を襲ったとしてもこんなに粉々にはできないし、何より、すべての人間が誰かに殺されたかのように致命傷を受けている。こんなにキレイな死体はありえない。もし、人間がやったとしても粉々になった町の説明ができない。」
と言っていた。
ギルトは
「とりあえず、急いでここを離れた方が良さそうだぜ。これをやった奴が近くに潜んでいる可能性があるかもしれねぇぞ。」
と言って早いペースで町へ向かった。
そしたら、途中で全身が透明な何かで作られた熊?が出て来た。
そしたら、ギルトとアリスは顔の色が白くなって絶望した表情になった。
「な、なんでこんなところにクリスタルベアがいるんだよ。」
アリスは
「なんでなの、私達、死んじゃうのかしら。」
と言って泣きそうになっていた。
僕はこいつなら殴っても汚れなさそうだ。と思ったのでとりあえず殴ってみることにした。
でも、普通に殴っただけだとかだけなさそうだったから、相手の体の内側でエネルギーを暴走させるような殴り方にすることに決めた。なんでそんな殴り方を知っているかというとおそらくスキルの力だと思う。
殴ってみた。
結果。
熊が砕けた。
やったね。
結構硬かったけど、途中で相手の体に魔力も追加で注いで暴れさせたからなんとか壊せた。
この透明なかけら。
高く売れるのかな?
そんなことを考えていたら、ギルトとアリスがこっちをみていた。
また怖がられちゃったかな?
と思ったらアリスから
「ユウ君ってすごい強いのね。ありがと。助けてくれて。」
と感謝された。
ギルトからは
「ユウのこと守ってやろうと思ってたが、逆に俺が守られちまったな。ありがとよ。ユウ。」
と言われた。
なんだか心があったかくなった気がした。
ギルトが
「あと少しで町だからこのクリスタル持って戻ろうぜ。これって結構高く売れるからユウはいい装備をその金で買えよ。
多分、今の俺らと同じくらいのレベルの装備が買えると思うぜ。」
と言っていた。
でも僕はそこまでいい装備が欲しいとは思わない。だから
「それよりもみんなで美味しいご飯を食べようよ。」
と言った。
そしたら、
「装備はいいのを買うべきだれけども、それでもまあまあ余ると思うからそのお金で食べましょ。」
と、アリスが言った。
とても幸せだなあ。
と思いながら町へ向かった。