第十八話 黒い雨
今回は視点を
クロモチ→魔王
というようにしてみました。
一応*の部分で区切りました。
暇だよ。
クロモチは眠ることができない。
ユウも僕と同じように眠らなかったらなぁ。
そしたら、ご飯がたくさん食べれて、楽しくて良いのになぁ。
早く朝が来ないかなぁ。
お腹減ったしつまらないなぁ。
その時、扉がゆっくり開いた。
「ひひ、あの人間は魔王に随分と信頼されてんだよな、目の前でぶっ殺してやったらどんな反応するかな、肉体は死ななくても、精神が死んだらどうなんだろな。」
なんだろう?
何かが入ってきた。
ユウを殺しちゃうの?
ご飯が食べれなくなっちゃう。
「ねえねえ、ユウを殺すの?」
「誰だ!ってなんだ、ただのスライムか、当たり前だよ。というか、みんなこいつを殺す機会を虎視眈々と狙ってる。」
みんなそうなの?
みんな僕にご飯をくれる優しい人を殺すの?
僕が一緒にいて楽しいって思う人を殺すの?
なら、みんな死んじゃえば良いのになぁ。
「なんだ?このスライム。動かなくなったぞ?まぁいいか、邪魔だし殺しとこう。」
そう言って、何かは僕を踏み潰そうとした。
お腹減ったしみんな食べちゃおう。
悪さができないように僕が全て食べてあげよう。
きっとみんな嬉しいよね。
世界平和に貢献することができるんだから。
あと、お腹の減ったスライムのお腹を満たすことができるんだから。
いただきまーす。
「ひ、な、なんだよ、やめ…」
そこそこの味、かなぁ?
ただ、量が少し少ないなぁ。
でも、まだたくさんいるみたいだし量はいいか。
はぁ、お城にいたのは全部食べちゃったよぉ。
外に行きたいのに、ドアが閉まってて出れない。
そうだ。
魔王のところに行こう。
魔王は食べれないから諦めたんだ。
確か、ここをこういって、ここを曲がって…ここだ。
このお城の構造覚えといてたかったよぉ。
「魔王ー。起きてる?」
「誰?私を殺しにきたの?」
「違うよぉ。外に出たいだけだよぉ。」
「あ、そういえば君はユウと一緒にいたスライムか。でも、なんでこんな時間に外に出るんだい?」
「食べるの。ユウを殺そうとした物を食べに行くんだ。いいでしょ。楽しそうでしょ。」
「そうなんだ。じゃあ、ここの窓から外に出ていいよ。」
「ありがとぉ。」
魔王が窓を開けてくれたよ。
でも、さすがに広いなぁ。
そうだ、僕の体を空からこのあたりに降らせればいいや。
久しぶりにやるなぁ。
モクモク。
クロモチは体から黒い煙を出した。
それは空へと昇っていき、しばらくすると黒い雨が降り始めた。
それは少しづつ、しかし着実に森を溶かしていった。
さらに時間が経つと、色々なところから悲鳴が聞こえ始めた。
「やっぱりそこそこの味だね。でも、僕ほど能力が優秀じゃないのが欠点だなぁ。もっと一瞬でそこそこの量が入ってくればいいのになぁ。喉が渇いてるのに水を一滴づつしか飲むことが許されていないような気分だよぉ。でも、不味くないだけマシかなぁ。」
そう呟いていると、体のあちこちが溶けている者がクロモチに近づいてきた。
その者は痛みで涙を流しながら助けを求めていた。
「そうかぁ、涙を流すほど嬉しいんだね!大丈夫。君は世界平和のためにちゃんと役に立ったよ。」
クロモチはそう言ってそれを一瞬で食べた。
******************
はぁ。
なんで私は魔王なんかになってしまったんだろう。
魔王にならなければ、日夜他の魔物に殺されることはなかったはずなのに。
家族や友達と仲良く、少なくとも今よりは平和に暮らせたはずなのに。
もう、泣く涙すら枯れてしまった。
誰かを信じることを忘れてしまった。
もう疲れた。
そう思って何回も自殺をしたが、しばらくするといつの間にか生き返っている。
昨日、すごい強い人間がやってきた。
私の世話をしているものが倒してきてほしいと言ってきた。
その勇姿を皆に見せつけてやれと言ってきた。
でも、私は分かっている。
この人は私がその人間に殺されるのを期待している。
もしくは、私が戦いで弱ったところを狙っている。
昔は抵抗してみたこともあった。
でも、いつも周りの人は魔王がそんな弱腰でいい訳がないと私を責め立てた。
どうせ無駄だ。
戦ってこよう。
その人間と戦ってみて、この人間は少なくとも私を殺そうとはしていないということが分かった。
さらに、恐らく私よりも強いだろう。
利用してみるかな。
私は彼に少しだけ希望を抱いた。
そして、その話をしてみると、彼は了承してくれた。
もちろん、対価を要求してきた。
無償の善意よりはよっぽど信用できる。
そしてその夜、何かが私の部屋に入ってきた。
殺されるのだろうか?
死ぬのはやっぱり怖い。
何回死んでも怖いものは怖いのだ。
しかし、入ってきたのはユウのスライムだった。
何しにきたのかを聞くと、魔物を全員食べるらしい。
確かに、いつの間にか城の中には私とユウとこのスライムの存在しか感じ取れなかった。
もし、本当にこのスライムが魔物達を殺してくれたなら、私が殺されることは無くなるのだろうか。
安心して食事をとり、夜はベッドで寝ることができるようになるのだろうか。
それはきっと幸せな生活なんだろうなぁ。




