第十一話 重犯罪者ユウ
町が見えてきた。
近くで見ると結構活気があるように思える。
町の周りには壁があった。
出入りは門があるからそこで行なっているのだろう。
門の前には結構人が並んでいた。
これからあの列に並ぶみたいだ。
そういえば、なぜ人が並んでいるのだろうか?
町に入るときに危険物を持っていないか調べるのだろうか?
聞いてみよう。
「あのさ。門の入り口では何をしてるの?」
ギルトが答えてくれた。
どうやら僕の予想とほとんど同じらしい。
入り口では、危険人物がいないかを特別な魔道具で調べているらしい。
まあ、どうせ僕が犯した罪はわからないだろう。
なんたって証拠がないんだから。
証人だっていやしない。
そのとき、僕はそう思っていた。
この少し後にその考えが甘かったことを思い知ることになる。
とうとう僕たちの番がまわってきた。
門のところには人がいて、水晶のようなものを持っていた。
おそらく、あれを人にかざして判別するのだろう。
ギルトとアリスが通った時は青く光っていた。
分かりやすいシステムだ。
そして、僕が通った時、水晶が赤色に輝いた。
その時、僕は一瞬思考が止まった。
その一瞬の間に兵士達が出てきて僕を囲んだ。
周りの人たちの顔は怯えや蔑みの感情を持っているように見えた。
ふと、ギルトとアリスと目があった。
その目に前のような親しみや優しい色はなく、ただ侮蔑などのマイナスの感情を持っていることがわかった。
僕は兵士の人達には話せば分かるだろうと思い、どのような状況だったかを説明しようとしたら、
「何かしようとしたら殺す。」
と言われた。
どうして話を聞いてくれないのかと思っていたら顔に出ていたらしい。
「お前みたいな重犯罪者に生きる権利はない。弁明など不要だ。」
こいつらは頭がおかしいと思う。
僕みたいな子供のことをどうしてそう簡単に殺そうとできるのか。
でも、今回は殺さない。
だって、彼らに僕のことを殺すことは不可能だからだ。
一応教えておいてあげようかな。
きっとそうすれば諦めるだろう。
「君らじゃ僕を殺せないよ。それなのに僕のことを殺そうとするのって無意味じゃないかな?」
そう言って挑発をしたら、
兵士は茹で上がった蛸のように顔を真っ赤にして僕に襲いかかってきた。
でも、こいつらの動きは僕からすると止まっているように感じるくらい遅く感じる。
せっかくだし魔法を使ってみよう。
相手の体の温度をどんどん下げていくイメージをしよう。
温度が下がるということは、原子の動きをゆっくりにしていけばいいのだろう。
原子の動きが止まるということはつまり、絶対零度の状況ということだったはずだ。
きっと綺麗に砕け散ってくれるだろう。
意外にイメージするのが大変だったから発動するためにキーワードを作った。
こうでもしないと発動しようとしてもイメージが崩れてしまって上手く発動できなさそうだったからだ。
よし、じゃあ兵士達を凍らせよう。
「絶対零度」
そう呟いたら、兵士達の足元や手先の温度が急激に下がり始めたらしく、武器を落とし、歩みを止めた。
次第に胴体の温度も下がり始めたみたいだ。
寒さでガタガタ震えている。
先ほどまで怒りで真っ赤になっていた顔は、寒さと恐怖で真っ青になっていた。
とうとう、体が動かなくなった。
そして、指先から砂が崩れるようにサラサラと崩れ落ちていった。
とても綺麗だ。
人を殺そうとするなら、自分が死ぬことも覚悟すべきだ。
手足が冷たくなったぐらいで武器を落としてはダメだ。
あーあ、もともと殺すつもりはなかったのに、殺そうとするから殺さなきゃいけなくなった。
まあいいや。
そう思って町から離れようとしたらとても強そうな気配を感じた。
後ろを振り返ると剣を持ったとても強そうなおじいさんがいた。
「冒険者の二人が大変な事が起きたと聞いてきてみたら本当に大変な事態が起きてあるようじゃな。」
話の分かりそうなおじいさんだ。
「おじいさん。僕はさっきの兵士達に殺されそうになったから自分の身を守っただけだよ。」
おじいさんは頷きながら
「確かにそのようじゃな。先に手を出したのはあの実力差すら分からぬ愚かな兵達のようじゃな。じゃが、おぬし、赤色の重犯罪者じゃろ?なら、おぬしに生きることは許されぬよ。」
そういっておじいさんは戦闘態勢に入ったようだ。
周りの気配が変わった。
結局あのおじいさんも兵士達と同じじゃないか。
また殺さなきゃいけなくなる。
めんどくさいな。
でも、気を抜いたら僕もやられてしまいそうだから本気を出そう。
そう思って殺気を全開で出した。
魔力を固めて剣を作り右手に持ち、周りには魔力で作ったカードを浮かべた。
僕の準備ができたらおじさんが
「一応なのっておこうかの。わしは『剣聖』
エスカトスじゃ。」
ここは僕も名乗っておこう
「僕の名前はユウ。一般人だよ。」
そういって戦いは始まった。
まず、剣聖が僕に向かって剣を振るった。
斬撃を飛ばしたみたいだ。
でも、僕はそれが見えたから、斬撃のエネルギーが集まってい核のような所をカードで破壊した。
その途端斬撃は消滅した。
剣聖は特に驚いた様子もなく、僕に斬りかかってきた。
僕が殺した兵達とは強さの次元が違うように感じた。
動きに無駄がないため、こちらも決定的なダメージを与えられていない。
剣だけで戦えば僕と剣聖の勝敗は五分五分だっただろう。
でも、僕はカードをたくさん展開しておいたのだ。
この、気を抜いたらやられてしまうような状況でカードを操るのはとても難しいが、やらなければ死んでしまうかもしれないのでやるしかない。
タイミングを見極めて、
今!
その瞬間、剣聖は背中をざっくり切られた。
僕も油断したせいか、一太刀浴びてしまった。
でも、物理攻撃が効かないので衝撃が来ただかだった。
しかし、生きた心地がしない。
そんなことを思っていたら剣聖が、
「おぬしと別の形で出会っていたら互いを高めあえる存在になっていただろうか。」
と聞いてきたので、
「なれたかもしれないし、なれなかったかもしれない。結局、もしもの話なんて意味ないよ。」
といってあげた。
剣聖はそうかといって死んだ。
もう僕を止める者はいないみたいなので町を出よう。
この後どうするかはまた後で決めよう。
僕の後ろでは兵士達の家族、剣聖の弟子達が声をあげて泣いていた。




