No.008 Let's play with the situation of wax.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「今回は露霧さんと私です」
「うーい」
「それでは指令です。液体のあの場面で遊んでみよー」
「――液体のあの場面?」
「なんだ、それ?」
「ワックス。これで分かったかな?」
「あぁ、なるほど……床掃除の時のあれかぁ」
「実際あんな事になったら、とっても大変だと思うんだよー。制服はクリーニングに出さないといけないでしょ? 身体だって、洗わないといけないし。その場面をよくあるシチュエーションにする、紬くんが大好きな二次元世界は女の子に酷な事をするよねぇ」
「あれがいいんだよっ! 夢と希望がぎっしり詰まってるシチュエーションなんだからっ!」
「――要するに白い液体をセイむぐぐぐ」
「そ、そう言う事を、いつもの表情のままさらっと言うんじゃない……いいか? あくまでもあれは、床掃除用のワックス、ワックスなんだよ。大事な事だから、もう一回言っておく。ワックス、だからな」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十八分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「白色なら何でもいいのかなぁ?」
「……だろうな」
「――カルピス」
「少し薄め?」
「意味深だなぁおいっ!」
「バニラのアイスとかも?」
「――その時は決まって、着ている物がスクール水着」
「だよなっ、それだよなっ! なっ?!」
「私に同意を求められても、ちょっと困るかも」
「――生クリームもあり?」
「少し濃いめ?」
「だからその言い方は止めろっ!」
「牛乳は?」
「……アリと言えばアリだろうけど、その後が大変そうでならない」
「牛乳は匂いが残っちゃうからねー」
「――ナオちゃんの言う、夢と希望も半減だね」
「ヨーグルトで夢と希望を復活させるっ!」
「飲むヨーグルトの液状感だったら、ホントにそれっぽいよね?」
「六条さんの言う事は真面目に意味が深過ぎるんですよぉっ!」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「どろどろ液体最高」
「それは男の子からすればいいんだろうけど、逆の立場だったらどお? とっても嫌でしょ?」
「…………男キャラに白い液体シーンは無いわ。止めてくれ」
「――白濁液」
「言い直さなくていいからっ!」
「え? でも、女の子だって場合に寄っては、白く」
「優等生キャラなんだから、もっと言葉には気を遣ってっ!」
「えー、私、優等生キャラじゃないんだけどなぁ」
「成績優秀で品行方正、これでどこがどう優等生じゃないって?」
「外面が良い、って事なんだよ?」
「自分で認めちゃうのっ?!」
「そうだよー、私、紬くんが思ってるよりもずっと悪い子だよ? ねー、露霧さん」
「――うん」
「え? 何、どう言う事よっ?! 露霧は悪い部分の六条を知ってるって事っ?!」
「――うん、知ってる。誰も居ない教室の机の角とかで」
「とかでっ?!」
「はーい、それ以上は禁止です」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十三分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「くっ、良いところだったのに……」
「まぁまぁ、それはまた機会があったらって事でね。それにしたって、いったい誰が始めたんだろうね? ワックスだったりアイスクリームだったり」
「誰かは知らんが……そんなん思い付くだろ?」
「え、いやぁ、普通は思い付かないと思うよ」
「六条だって充分そのターゲットとして選ばれるかもしれないんだぞっ! もしもの場合に備えて、しっかり準備しておくがいい」
「おくがいいって言われてもなぁ」
「――ナオちゃんが六条先輩に、白濁液をぶっ掛ふぐぐ」
「だからお前はサラリとそう言う台詞を言うんじゃないっ!」
「んー、じゃあ、掛ける前は言ってよね?」
「えっ?! それってオッケーサインって事っ?! その台詞にドッキドキしたんだけどっ!」
「――じゃあ、私も。無色透明だけど六条先輩にぶっふぐぐぐ」
「露霧の発言は違う意味でドキドキするだろうが……」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十五分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「二人とも、何か新しいパターンは無い?」
「えっと、何をかけるのかって事?」
「そう言う事だ」
「――私は六条先輩へ、無色透明の液体をふぐぐぐ」
「そ、そんなに掛けたいのか……。それは、六条と交渉してくれ……僕にはどうして上げる事も出来ないからな。それはいいとして、新しいパターンだよっ!」
「布団を掛ける」
「そうそう、やっぱり布団は羽毛だよなぁ……すやぁ…………一瞬寝ちゃったけど、掛ける意味が違うでしょっ?!」
「――三かける五」
「十五……も意味が違うってのっ!」
「はい、これ」
「うん、白いご飯にはやっぱりのりたま、うんまぁ…………いやね、かけてるけど、そうじゃないんだって……」
「あ、もしもし、紬くんのお母さんでしょうか? 紬くんとお付き合いさせて頂いている六条茜と言います」
「僕の家に電話かけて、おかしな事実作らないでくれるかなぁっ?!」
「――ナオちゃん、この蓋がキツクて」
「ふぬっ、ぐぐっぐぐぬぬぬっああああああっ! 締め過ぎっ! もっと開けやすいようにしておいてよっ! って、かけるから開けるになってるんだけどっ?!」
「はい、紬くん。この文字を裏声使ってシャウトしてみてね」
「…………ポウッ! これ、マイケル! ケルしか合って無いっ!」
「猫の方かな?」
「それ、マイケル違いっ!」
「えっと、他のマイケルは」
「マイコゥから離れてっ!」
「無駄に発音がいいね」
「――ナオちゃん、これで元気が出るから飲んで」
「んぐんぐんぐぐっ! ぷはぁぁっ、これはユンケル!」
「紬くん、ちょっとだけ鬱陶しいくらい喜びを表現してみてくれないかな?」
「いやぁっはぁっ! これ、ハジケルっ!」
「――うちの庭、草木が凄い事になってるの」
「それは生い茂るっ! もう……原型留めて無いっての……」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十八分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「大丈夫?」
「……毎回毎回、ツッコミに疲れるんだけど」
「――頑張らなければいいのに」
「どうしても、反応しちゃうんだよ……」
「ユンケルの力も効果が無いみたいだね」
「勢いで飲んだけど、苦いだけだった……」
「後々効果は出て来るかもねっと」
「ん? 六条、どうした? どっか行くの?」
「あーうん、後は露霧さんに。じゃあ、ね。露霧さん」
「――うん」
「…………」
「――ナオちゃん、私、眠気が辛い」
「……もう、ダメなのか?」
「――うん。起きているのはやっと」
「そうか…………それで、どうするんだ?」
「――家に帰るよ」
「送って行こうか?」
「――ううん、ここでいいよ」
「…………そうか」
「彩瀬名とリカには?」
「――さっき言って来たから、大丈夫」
「…………そうか」
「――ナオちゃん」
「ん?」
「――楽しかった」
「だな。うん、それは僕も同じだよ」
「――うん」
「…………」
「――それじゃあ、私、行くね」
「……分かった。露霧、楽しかったよ」
「――うん。バイバイ、ナオちゃん」
「…………」
次回予告 ヘンイ
「もし自分の姿が変化すると知っていたら、あなたは、その姿を親しい人へ見せる事が出来ますか、、と言う話では無いけれど、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」