No.006 Let's choose weapons when fighting zombies.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時二十八分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「今回は六条とリカのペアか。んじゃ、早速今回の指令を」
「えーっと、今日は、ゾンビ映画における選択武器について、だよ」
「ほほー、なるほど。確かに選択する武器は重要だよな」
「あのー、六条先輩。普通じゃ手に入らないモノでもいいんですか?」
「んー、あまりにも荒唐無稽なのは無しかなぁ。実在しない物も含めて。とりあえず、手に入りそうな物からいってみよう」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「僕の一押しは、金属バット。簡単に手に入るし、丈夫で強度も申し分無し。そして人間が握り易いように作られているのだから、これ程便利なのは無いと思う」
「でも、殺傷能力が低い気がしない?」
「…………なんだか一歩引いて聞いていると、物騒な会話よね」
「リカ、それを言うな……あくまでも、ゾンビ相手だから。リカだって、生き延びたいだろ?」
「……そりゃ、あんなのに襲われたく無いわよ」
「だろ? でも、いいよなぁ。リカは強力な武器を常に持ち歩いていてさ」
「は? あたし、何も持ち歩いていないけれど?」
「あるじゃないか、そのツインテールが。それでゾンビを締め上げるんだろ?」
「出来るわけ無いでしょっ!」
ビシ、ビシ、コチ、コチ……十六時三十二分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「紬くん、ホント懲りないよねぇ」
「リカ…………ツインテール攻撃が上手くなったな…………鞭を凌駕してると思う」
「あんたを攻撃する時だけは、調子がいいのよっ」
「なんて迷惑な……」
「それで、緋内さんは、ツインテールでいい?」
「…………それだけは止めてください」
「そっかー、斬新だと思ったのに」
「…………」
「リカ、六条の事を真面目に常識人だと思ったらダメだぞ? 頭脳明晰なだけあって、その分、どっかやっぱり変だからな……」
「う、うん…………」
「えー、紬くんよりはマシだと思うけどなぁ?」
「そりゃ、こいつより酷い人間なんて、早々いませんから」
「僕をディスるのはいいからっ、武器を選択しようよっ!」
ビシ、ビシ、コチ、コチ……十六時三十四分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「似たような感じで、木刀はどうかな?」
「悪く無いな。あれ、材質が木の癖にして、めっちゃくちゃ頑丈だし」
「……そう言えば、あんた。以前、あたしに木刀をおみやげとして買って来たわよね」
「やっぱり海外育ちだから、侍アイテム好きかなぁって思ってさ」
「紬くん、十代の女の子に買って来て上げる物じゃないと思うけどなぁ」
「しかも律儀にあたしの名前まで彫って貰って……」
「だって、木刀だぞ? 中学生男子はこぞって購入するあの木刀。盗まれたら大変だろ?」
「そのおかげで……捨てるに捨てられないじゃないのよっ!」
「いいじゃないか。ゾンビが出たら、存分に使い回してくれ、な?」
「な? じゃなないわよっ!」
バチーン、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、空き教室。
初口、緋内ハーシィーリカリッタ。
「あんた……ホント懲りないわよね」
「リカの場合、武器……必要無いんじゃないかって思い始めたよ……。で、そのリカさんが選ぶのは?」
「そうねぇ、んー、あっ、鉈なんてどお?」
「嘘だっ!」
「言うと思ったわよ…………」
「緋内さんが鉈を選んだ根拠は?」
「軽くて持ちやすいし、金属バットのように手に入れやすい、斬撃に殴打と使い道は多いと思うので」
「ちょっとリーチが心許無いけど、軽い分二刀持ちも出来るか……うーん、悪く無いな…………」
「何よ、何か言いたいなら言いなさいよ」
「……絶対怒るし」
「怒らせるような事を言う、ナオが悪いと思うんだけど?」
「んじゃあ、言わないでおこう」
「いいわよ、怒らないからいいなさいよ。気になるし」
「…………あれだろ? そのテールにも持たせて、四刀に」
バチーン、コチ、コチ……十六時三十八分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「怒らないっていったじゃないかっ! これだからツンデレキャラは信用出来ないんだよっ!」
「紬くんも多少わざとやってるように見えるんだけど~?」
「期待を裏切らない辺りが、どうもこう、分かっていてもやってしまうんだ」
「もう一遍、死んでみる?」
「金髪の地獄から来た少女じゃ説得力に欠けるわっ!」
「地獄通信もまぁ、悪く無いけれど、他には何かある?」
「……地獄通信って不特定多数は有りなのか分からないけど、後は鉄パイプとか木製バット。丈夫で長い物なら、何でもってところじゃないか?」
「手に入れ難い物でもいいとしたら?」
「拳銃はどうかしら? 警察官なら持ってるじゃない? ゾンビ化した警察から奪えるし」
「拳銃はお薦め出来ない理由があるんだよ」
「ふーん、どうしてよ?」
「だいたい死亡フラグだから。バンバンバン、カチン。弾切ぐわあぁぁぁああっ! が定番」
「無限に使えれば強いけれど、案外ダメって事なんだね?」
「そう言う事。それにゾンビ相手だから、拳銃の弾丸程度じゃ仕留められない可能性も考えられる」
「なるほど。ナオの言う通りね。納得したわ」
バチーン、コチ、コチ……十六時四十一分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「冷凍バナナはどうかな?」
「リーチが短いってっ! 解け始めたら弱いしっ!」
「じゃあ、大根は?」
「え、あ、んーっ、ダメだろ……? 持ち難いし、殺傷能力が低そう……」
「かぼちゃ」
「確かに強度はあるけど……わざわざ武器にする意味が分からん……」
「すいか」
「六条さん……お野菜から放れてください……」
「りんごや梨」
「果物も却下……」
「えー、我儘だなぁ、紬くんは」
「生死が掛かっているんだから我儘にもなりますよっ!」
「かぼちゃ…………悪く無いかもだわ」
「そこも納得しないのっ…………」
バチーン、コチ、コチ……十六時四十四分。
放課後、空き教室。
初口、緋内ハーシィーリカリッタ。
「こんにゃく」
「のっけから意味が無いわっ!」
「ちくわ」
「同じようなもんだろっ!」
「はんぺん」
「ゾンビじゃなくて、こっちの武器が潰れるってっ!」
「たこ」
「どっから持って来たのっ?!」
「がんもどき」
「スーパーだってゾンビ騒ぎで仕入れないよっ!」
「たまご」
「…………」
「あ、緋内さん。もち巾着もお願いしていいかな?」
「先輩、ナイス選択ですっ」
「私はさっき大根を持って来たから、だいたいこれでいいよね?」
「そうですね。後は、ウィンナーくらいでしょうか」
「おーい、ゾンビが来てるってのに、おでんパーティしてる場合じゃないよー」
バチーン、コチ、コチ……十六時四十七分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「…………二人がおでんを作り上げるから、食べたくなったじゃないか」
「美味しいもんね、おでん」
「野菜はそこそこあったはずよ?」
「みんなを集めておでん食べようか?」
「武器はっ?!」
「もういいじゃない、武器なんて。骨董品屋で刀の二、三本奪ってくればいいのよ」
「…………それ、いいかも」
「でしょ? さ、ほらほら、おでんの準備しましょ」
「そう言う事なら、僕はちょっと出かけて来るよっ! 厚揚げも探して来るからっ! ついでに刀もっ!」
「そこまでしなくても」
「いいのっ、必要なのっ! ちょっと行って来るから待っててくれっ! んじゃっ!」
「大丈夫なのかしら……」
「んー、露霧さんにも連絡しておいた方が良さそうだね」
「あ、それなら、あたしがしておきます」
「それじゃあ、今日はここまで、また次回、だね。さ、おでんの準備しよー」
「分かりましたっ」
次回予告 シンジツ
「あなたの知り合いが、あなたに笑顔で教えたその冗談が、本当はシンジツである事を理解していますか? 、と言う話では無いけれど、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」