No.003 Let's play with the situation of the death flag.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「今日は一学年選抜だったな。ようこそ諸君、よく分からない集まりへ」
「――ハーシィーが逃げようとしてた」
「新作のえろげか?」
「なな、何の事かしらねぇっ! そんな事より来て上げたんだから、さっさと進めなさいよっ!」
「うーい」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十二分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「えーっと、僕達メンバー唯一の常識人、六条から受けた今回の指令は……死亡フラグシチュエーションで遊ぼう、だそうです」
「――ホラーでありがちな、とか?」
「ちょうどいいから、それにしましょうよ」
「リカさんや……あんた、ホラーダメだったよな……?」
「だ、誰が?! 余裕よ、余裕っ! 余裕なんだからっ!」
「…………この前、ホラー映画見てトイレ行けなくなった挙句、漏らし」
「――あ、ナオちゃん、それ」
「それ以上言ったらコロスわよっ!」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「くっ……僕とした事が、あっさり死亡フラグを立ててしまうとは。ツンデレお約束の、言ったら殴るわよ、と言いながらすでに殴るパターンをすっかり忘れてしまっていた」
「誰がツンデレですってぇっ?」
「――ナオちゃん、もう一回死にそう」
「露霧っ、ここは僕にまかせて先に行けっ! 心配するなっ、後から必ず行くっ!」
「あんたなんて、全くこれっぽっちも役に立たない状態で無駄死によ」
「くっならば……せ、先生ぇっ! 先生っ! お願いしますっ!」
「――いいだろう」
「それ、どっちにしても先生を呼んだ人間がやられるパターンじゃないのよ。似たようなので、雇っている側じゃなくて、雇われている下っ端が死ぬパターンもあるわね」
「あれか。報告申し上げますっ! か、館内に敵ぐあああああああっ!」
「――部屋へ入る前にノックするかしないかが、生死の分かれ目」
「し、しまったぁっ! 僕とした事がっ!」
「あんた、どれだけ死亡フラグに精通しているの……少し見直したわ」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十九分。
放課後、空き教室。
初口、緋内ハーシィーリカリッタ。
「悪いけれど、これ以上は話せないわ。詳しい事は会ってから話したいの」
「な、なんだと?! それってもしかして……告白っ?!」
「ミステリー系によくある死亡フラグを言ってあげたのよっ! だ、誰が、あんたみたいなのに、ここ、告白なんてするものですかっ! 勘違いしないでよねっ!」
「……なぁ、露霧。今回の指令、死亡フラグで遊ぼうじゃなくて、よくあるツンデレパターンで遊ぼうの方が良くないか?」
「――ハーシィーの一人勝ち。私達が何もしなくても、ハーシィーが全部やってくれる」
「後は頼んだぞっ、ツンデレ隊長っ!」
「あたしはツンデレじゃないって、何度言えば分かるのよっ!」
「う、うわっ、止めろっ! ツインテールでビシビシするんじゃねぇっ!」
「――テールの先端に毒が仕込んであるの」
「どうりで……身体がだんだんと……。くっ、もう少しだけ……もう少しだけ持ってくれよっ僕の身体っ!」
「本当に凄いわね……どの台詞を取っても、よくある死亡フラグじゃない」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十二分。
放課後、空き教室。
初口、露霧風華。
「――私、この戦いが終わったら、故郷に帰るんだ」
「なんて心に響く言葉なんだろうな……まぁ、死ぬんだけど」
「風華の場合、風華を相手にした方が帰れなくなるじゃないの」
「……露霧、リアルで強いもんな。お前ならどんな死亡フラグを発言したって、絶対死なないよ」
「やっぱり死亡フラグがお似合いなのは、あんたね。死亡キャラとしてオファー殺到じゃないかしら」
「嫌だよっ、そんなのっ! 僕だって最後まで生きたいんだよっ!」
「あーじゃあ、あれよ。呼び名がいかにもギャグ専で、ボンバーなんて名前を付けられてさ。大爆発をしても建物が倒壊しても、髪型がアフロになって最後まで生き残るお笑い担当キャラ」
「それならカッコいい言葉残して死んだ方がマシじゃんっ?!」
「――ホラーだったら、チョコバーを両手に、その食欲から幾度と無く本人が気付かないまま、危険を回避して生き残るパターン」
「露霧後輩…………それ、死亡フラグって言うかさ、身体の健康状態に対して使う、脂肪フラグっす」
「ナオ……上手い事言うわね…………」
「リカだって、キャラ的に死亡フラグ立てているのを、理解しているのか?」
「……え、いや……知らないけど」
「金髪で女だと、スラッシャー映画ではだいたい一番初めに殺されるんだよ……」
「う、そう言われると確かにそうね……」
「――ハーシィー、大丈夫。ナオちゃんと恋仲に落ちれば助かるよ」
「それ、僕が主人公って前提があっての話だろ? 前提が無ければ、イチャツクカップル死亡フラグに成りかねないじゃないか」
「あ、あ、あ、あんたなんかと、だだ誰が恋仲になんてっ! いい、イチャツイたりもしないんだから! 絶対っ! 変な気、起こさないでよねっ!」
「何て言うか、リカの発言があまりにもベタ過ぎて、二次元好きとしては聞いてて、むしろ嬉しくなってくるわ」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十五分。
放課後、空き教室。
初口、露霧風華。
「――他には、天候が荒れて酷い日に田畑の様子を見に行ったり、屋根の補修をしたり」
「それ、現実の死亡フラグだよっ! ラノベとかアニメとかゲームでのシチュエーション区切りを忘れないでっ!」
「――スティーブンを敵に回す。無条件で死亡フラグ」
「あれかっ?! 沈黙の人かっ?! いや、ちょっと待って! だからね。ラノベとかアニメ、二次元で言ってくれるかなぁっ?!」
「あたし、何で沈黙って付くのか最初は分からなかったのよ。でもね、ふと気付いたの。ムービーが終わってみると、その船だったり要塞だったりの場所には、誰も応答する人がいなくなっているのねって」
「なっ、なるほどっ! 全く気付かなかった……そんな意味を含んでいたなんて……」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十八分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「もう一度言う。二次元に有りがちなシチュエーションで、だからな?」
「――ペットの近くでゲームをプレイする」
「やめてやめてっ! そんな恐ろしいフラグ立てないでっ! 二次元じゃなくてリアルだけと、止めてっ!」
「間違えてセーブデーターを上書きしてしまう」
「いやぁっ! 恐ろしいっ!」
「――念願のアイスソードを手に入れたぞ」
「くっ! ゆ、許してくれ……許してくれよ、ガラハドっ……仕方無いんだ……」
「ナオ……殺してでも奪い取ったってわけね……鬼畜だわ」
「――ちなみに、リメイク版では、力ずくで奪おうとすると戦闘になるの」
「え? マジで?」
「――うん。1ターン目で使って来る吹雪ってのが異常に強くて、大抵返り討ちにあうんだよ」
「ナオみたいに奪い取る連中がたくさん過去にいたから、積年の恨みを晴らそうって事なんでしょう」
「――それで返り討ちに遭ったプレイヤーは、叫ぶの。はい、ナオちゃん、名台詞を」
「な、なにをする、きさまらー!」
「いつになく……とんでも無く楽しそうよね。やっぱりナオは死亡フラグキャラ決定よ」
次回予告 サンゲキ
「全ての終わりの始まりは、あの夜のサンゲキから。あなたは、その出来事から目を背けられますか?、と言う話では無くて、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」