No.002 異世界転生ネタで会話をしてみた
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、簡易シェルター。
初口、六条茜。
「ふぅ、今日も空振り……」
と言っても、あまり時間を取って待機しているわけでは無いから、本当に空振りだったのかどうか……。
「はぁ、ホント、諦めが悪いよね、私……」
「ほむ……おかえり、あかねん」
「うん、ただいま。助けてくれたのは、華那ちゃん?」
「ほむ……援護射撃、バッチリ」
「でも、いったいどうやってこの距離から?」
「ほむ……ライフルで打ち抜いた」
「まさか、実弾……じゃぁ無い、よね?」
「ほむ……違う。モデルガンを改造して、代わりにパチンコ玉を発射するの」
「そんな簡単に改造出来るものなの?」
「それはボクのお父さんが改造したんだよ。ボクのお父さん、そう言う事、得意だったから」
「へぇ、穂奈美ちゃんのお父さん、凄いね」
「自称発明家だったから。けど、ここからヒットさせる華那ちゃんも凄いよ!」
「ほむ……余裕。百発百中、おまかせ」
「そうは言うけど、ここから相当距離があるよね?」
「ボクも試してみたけど、十回中三回くらいしか当たらないもん」
「ほむ……私には心眼があるから、目を瞑っていても、当たる」
「華那ちゃんの場合、冗談に聞こえないんだよ……」
「うーん、あながち冗談でも無いのかも。ここからグラウンドは見えるけど、だからと言って、当たるようには思えないよね」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十八分。
放課後、簡易シェルター。
初口、六条茜。
「やっぱり穂奈美ちゃんも異世界転生とかしたいほう?」
「えへぇ、ふへへへ、いやぁ、照れちゃうなぁ」
「ほむ……すでに妄想の世界へ転生しちゃってる」
「返事、聞くまでもなさそうだね。華那ちゃんは異世界転生したら、どうしたい?」
「ほむ……自堕落を強化したい」
「本当にそれは譲れないんだね」
「はっ?! ボクはいったいっ?」
「あ、おかえり。転生後の世界で、うはうはハーレム満喫した?」
「ど、どうしてそれをっ?!」
「ほむ……あれだけスケベな表情をしていれば、すぐに分かる」
「ボクがスケベな表情をしているわけ無いよ! い、いい、いつそんな顔をしたのかなっ?!」
「今度写真に撮ってあげるからね、楽しみにしてて」
「そんなの貰っても全然嬉しく無いよぉっ!」
「ほむ……撮ったら全世界へ向けて発信。ゾンビも恐れる変態顔。さすほな」
「それ禁止っ!」
「でも、異世界転生するのは大変なんだよ? 何かを得るには何かそ捨てなければいけないからね」
「ほむ……あかねん、例えば?」
「そうだなぁ。例えば、宝くじが当たった瞬間、異世界転生する」
「ボクそしたら転生したくないよっ!」
「大好きな人に告白されたら転生しちゃうって、転生もあるよ?」
「一生に一度あるか無いかなのにぃっ!」
「ほむ……可哀そうなほなみん。同情するよ」
「な、なんだろう……華那ちゃんに言われると、ぐぬぬってなる」
「穂奈美ちゃん、彼氏はいたの?」
「いいいいっ、いないっいないよぉっ!」
「ほむ……ほなみん、理想が高いから。背が高くて、お金持ちで、頭が良くて、運動が出来て、性格が良くて」
「はは、理想高いなぁ」
「いいんだよっ、あくまでも理想だもんっ! ボクだってちゃーんと現実だって見てるから。でも、こんな世界になっちゃって見付かるものなのかなぁ?」
「ほむ……あかねんが言っていた、ほなみんに似てる人は?」
「ん? 紬くん? そうだなぁ、穂奈美ちゃんの理想には程遠いけど、性格は悪く無い、かな。可愛い子みんなに優しいから」
「え~、茜さん、それじゃあ意味無いよぉ。ボクにだけ優しくしてくれないと」
「んー、きっと華那ちゃんにも優しいだろうから、無理だろうなぁ」
「ほむ……じゃあ、私が貰う」
「お? 華那ちゃんはあまりヤキモチ焼いたりしない方? 他の子と仲良くしてても、結構平気なタイプ?」
「ほむ……相手がほなみんなら、全然気にならない」
「ぐぬぬ、ボクだって女の子だし、華那ちゃんから略奪してみせるよっ!」
「おお、紬くん本人の与り知らないところで、三角関係が出来上がった」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十二分。
放課後、簡易シェルター。
初口、如月華那。
「ほむ……ほなみんがもし本当に転生したら、絶対スライムになると思う。ボク、悪いほなみんじゃないよ」
「回復が得意なスライムと一緒は嫌だよぉっ!」
「名前、どことなく似てるもんね」
「いやいや、茜さんっ、ボク、穂奈美っ穂奈美だからねっ?! ほなみんじゃないよっ?!」
「図らずとも自分で名台詞を言っちゃってるね」
「ううう、何たる巧妙な罠」
「ほむ……足が何本もあるから便利だと思う」
「あの子は、タコなのかな? イカなのかな?」
「くらげ?」
「あぁ、そうなのかもね。海にくらげとして出て来るし」
「ほむ……さすがほなみん、さすほな」
「定着して全国の穂奈美の方々に迷惑が掛かるからそろそろそれ止めてっ!」
「やっぱり転生すると、漏れなくハーレムになるのかな? 穂奈美ちゃんが転生した場合、逆ハーレム?」
「え、えぇ~どうしようっ! ボク、一人になんて絞れないよぉ! えへ、えへへぇ~」
「ほむ……ほなみんも所詮人の子。ハーレムには憧れると、ただし、周りはみんなくらげ」
「うわぁ、痺れる様な恋が出来ちゃうね」
「それきっと本気で痺れちゃってるから……」
「なかなか体験出来る事じゃないよ。身体の芯から痺れるような恋愛なんてね」
「茜さんの言う事が、何処まで本気なのか計り知れないのが余計怖い……」
「私、冗談は言うけれど、嘘は付かないよ?」
「ほむ……なんて曖昧な境目を突いた言葉なんだろう。ほなみんの思考回路がショートして、目を白黒させてる」
「冗談……は嘘じゃなくて、嘘も……冗談じゃなくて……えっと、えぇっと……なにゅ~」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十五分。
放課後、簡易シェルター。
初口、六条茜。
「うん、これなら明日から行かなくて済みそう」
「始めからこうしておけば良かったね」
「ホント、その通りだよね。私、冷静さを欠いていたのかも」
「あの中へ通い詰めていたんだから、普通では無かったんじゃないかなぁ…手」
穂奈美ちゃんからの提案によって、私はこの簡易シェルターの窓から、双眼鏡を使い、今まで通う事が日課となっていた学校を見張る事が出来るようになった。
考えればすぐ思い付く事だったのに。
しっかりしないと……。
でも、懸念は……正直言うと、ある。
もし別のルートからあの学校へ入った時。
それから、私が単純に見逃しちゃった時。
やっぱりあの学校内へいたほうが得策だと思う…………。
はぁ、ダメだなぁ。
どうしても紬くんが無事である事を前提で考えちゃってる。
これからの事だってちゃんと考えないといけないのに。
差し当たって。
「二人は、ずっとここに籠城するつもりなの?」
「うん、そうだよ。華那ちゃんちのこのシェルター、凄く便利だもん」
「ほむ……世界がおかしな事になった時、お父さんが発注したの」
「そうなんだ。ちょっと圧倒される話だけど、簡易シェルターの”簡易”の域を超えてるよね。太陽光発電とか、水の浄水ろ過装置とか。屋上に一角に、栽培環境まで整ってるんだもん。まぁ、でも、それならここを動く必要は無いよね」
「うん、だから茜さんもここで一緒に暮らそうよ」
「ほむ……それがいい」
「んー、それは嬉しい申し出なんだけど」
「やっぱり、その男の子、紬くん? が気になるの?」
「あ、ううん、それも理由の一つなんだけれどね。今まで二人だけだったのに、そこへ一人追加されるってだけでも、食料の問題やら出て来るから、それは悪いなって」
「気にする必要無いよ。ほら、茜さんだって車の中ににいーっぱい、役に立ちそうな物、詰め込んで来ているよね?」
「ほむ……みんなで助け合って生きていける」
「そう、だね。ここには幸い水も確保できる場所があって、野菜の種を植える事も出来る。もうちょっとだけ考えさせて貰うけれど、その時は、甘えさせて貰おうかな」
「うん、そしなよっ! みんなで頑張って生きて行こっ!」
二人とこうして過ごして行く事で、紬くんがもう……来ない事を受け入れられるようになる、のかな?
もう少しだけ様子をみて、考えよう。
ここで……二人と一緒に生きて行く事にするのか、を。
次回予告 シルシ
「そのシルシがとても危険だと感じた時、あなたはどう行動に移りますか? 移れますか? シルシの持ち主があなたの大切な人であったなら、切り捨てる事が出来ますか? と言う話では無いけれど、未定」




