No.009 I tried conversation at the Traffic Safety Committee.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十一分。
放課後、空き教室。
初口、宮原橋ユナ。
「あ、おかえりなさい、ナオさん」
「ただいま」
「どうでしたか? 車、充電出来ました?」
「明日もう一回行ってくるよ。外……多くてさ、あんまり時間掛けられないんだよ」
「そうなんですか。でも、本当に増えましたよね。増えた、と言うよりも出来上がった、と言うべきでしょうか。式葉先輩に聞きました」
「そっか。たぶん、そう言う事なんだと思うけど、あれじゃあ際限が無いから、明日の充電が終わったらここを出るつもり。電子ロックが不調な事は」
「知ってます。それで、次の行く当てはあるんですか?」
「そこは六条にまかせてある。湧水が出る箇所を調べてくれているから、その場所が籠城するに適していればそこに。ダメそうなら、また別の学校に、って計画」
「どうして学校、なんですか? ビルなんかもあるじゃないですか」
「学校ってだいたい造りが同じようなものだろ? ガスや電気がまだ使えるから、今までのように家庭科室使って調理が出来て、シャワー室だって完備していて、保健室にはそれなりに薬もあって、何よりも建物自体が頑丈」
「そう言われると確かに籠城するには、とても適していますね」
「だろ? 次も学校で待機する事になったら、電子ロックの防火扉じゃない場所にしないとだけど」
「文明の利器に頼り過ぎるのも、ダメって事ですね」
「だな。六条なんて今はメモ帳に色々必要な事を書いているっぽい。スマートフォンは便利だけど、頼り切っているのも良く無いからってさ。気になる事で調べたいものがあれば、ユナもメモ帳に書いていった方がいいかもよ。幸いここは学校、ノートなんて探せばいくらでも出て来るし」
「そうですね、そうしておきます」
「ところでユナは何か個人的な荷物ってある? あれば車に積んでおくけど」
「んー、そうですね…………いや、特別無いです。ところで私からの聞いていいしょうか?」
「うん、なに?」
「式葉先輩や私を連れて行ってもいいんですか? 私達は今、生きるだけでも大変なんですよ? 人間が二人増える、言って見れはそれは邪魔者が増えるわけじゃないですか、それなのに…………加えて、私なんて足が不自由で……」
「生きる為、だからこそだよ」
「どう言う意味ですか?」
「僕と六条、そこへヒトミにユナ。二人じゃ出来ない事があっても、四人なら何とかなる事が増えるだろ?」
「でも、さっきも言ったように……私が足が…………」
「それは関係無いって。僕だって出来ない事がいくらでもある。それなら、お互いに出来る事を分担して、出来ない事はみんなで頑張ればいいじゃないか。邪魔になる、なんて事は無いんだよ」
「……そんな考えでは、いつか痛い目を見ますよ?」
「ま、その時はその時」
「それに式葉先輩、或いは、私が二人に取って害になり得るかもしれないんですよ? あの人達と同じようになる前に……今の人間のまま、二人を騙したり、出し抜いたり、裏切ったりするかもしれません」
「…………僕はさ、散々弄られているけど、友達なんてホント、いなかった。それでも……人を見る目はあると思ってる。二次元好き、舐めるなよぉ? リアルの人間と付き合いが無いからこそ、人間の本質に気付き易い」
「だといいんですけど……いまいち、心配です」
「心配だと思うなら、ユナが気を付けておいてよ」
「だから、その私自身が害悪だったら、どうするんです?」
「大丈夫だって。あの破天荒なヒトミと一緒にいたくらいだし、本当にユナが悪い人間だったら、ヒトミの行き当たりばったりな所をすでに見限っているんじゃないか?」
「式葉先輩は、あれはあれで頼りになりますけど……そう、かもしれませんね」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十六分。
放課後、空き教室。
初口、式葉ヒトミ。
「今日は、交通安全委員会で行ってみようかー。あかねっちのとこはあった?」
「あー、ありましたねー。忘れた事に活動があって、そんな委員会があったなぁ、と思う事が何度も」
「そもそも高校生にもなって交通安全について説かれる、と言うのも何ですよね」
「まぁ、分かっていても安全への配慮が足りなくなってるって事なんじゃないかな? ほら、例えば歩きスマホなんてのはその最たる例でしょ?」
「今の世界じゃ、交通安全うんぬんが無くなったけど、確かにそうよね。あたしは歩きながらスマートフォンなんて触らなかったけど」
「私も、ですね。使う場合は邪魔にならないような場所で立ち止まってから、使っていました」
「使うな、と言っても地図アプリなんてのは、実際使いながら歩く必要があるだろ? ダメだって言われても使うべきアプリが矛盾を起こてしているんだから、何て言うか難しいとこだな」
「そう言う調査を交通安全委員会はやっていたわよね。歩きながら使っている人が見受けられた、とか」
「だからと言って注意されても、それはそれで理不尽ですよ。元を正せば連絡をする為の手段なのですから、丸っ切り使うなと言うのも無いと思います」
「こんな世界にならなければ、そのうちきっと、人が歩いている場合には画面がロックされて機能しない、なんて事になっていたんじゃないか? 歩数計があるわけだし、それくらい技術的に簡単だろうからなぁ」
「おー、紬くん、鋭い事を言うね」
「なるほど、ナオにしては良い考えじゃない」
「そのアプリを開発して1ダウンロード100円くらいで売り出せば、案外、売れていたかもしれませんね」
「作らなくても特許だけ申請しておけばいいじゃない。特許料でウハウハよっ」
「世界がこんな事になってなければ、そうしていたかも」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十九分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「他にはどんな活動してたんだっけ?」
「えっと、自転車通学の人の自転車点検活動、なんてのもありましたね」
「あたしのマイチャリ、電動だったよの、凄いでしょー」
「学生なら自力で動かせっ!」
「だって、あたし、バイク乗りだったからっ!」
「マジか……?」
「本当ですよ。私も何度か目撃していますので」
「バイク通学が許されていたんですね。私達の所は、確か禁止だったはず」
「そうだったのか。僕は徒歩だったからその辺全く知らなかったけど」
「お年寄りが乗る、あのバイクっぽいのもアリ、なんでしょうか?」
「どう、なんだ……? それに、あれ……おっそいよね? 自力の方が速いって」
「でも、楽ですよ? 部活動帰りの疲れた生徒には受けが良いかと」
「う、うーん……そう、なのかもだけど、遅いって……」
「魔改造して、40キロくらい出せばいいんじゃないかな?」
「そんな事したら、免許取得制度出来ちゃうってっ!」
「あ、それがダメならセグウェイならどうかしらっ! セグウェイスーパーターボ的な魔改造して!」
「だから、魔改造しちゃダメだってのっ!」
「そしてあたしは伝説になるの。どこどこ峠の下り最速としてね」
「上等じゃねーか!! コーナー2コも抜けりゃバックミラーから消してみせるぜ!! ブオオオオン! ズギャギャギャギャ! …………セグゥエイだとォ! ふざけんなァ」
「ナオさん、なんだかんだ言いながらも、ノリノリじゃないですか」
「さすがにセグウェイが迫って来ていたら、ふざけんなって思うよね」
「似たような物で、お掃除ロボットを魔改造して人間が乗れるようにしてはどうでしょうか?」
「ゴミを感知する代わりに、各学校専用の白線みたいなのを作って、それをトレースして動くとか?」
「お、さすがあかねっち。なかなかイイアイディアかもしれないわよ」
「スーパーターボも是非付けましょう」
「上等じゃねーか!! コーナー2コも抜けりゃお掃除ロボットだとォ! ふざけんなァ」
「途中端折るくらいだったら、お掃除ロボットからの件だけ言えばいいじゃないですか」
「これは驚きのあまりって事なんだよ」
「車付きのオフィスチェアーでもいけるかな?」
「上等じゃねーオフィスチャーだとォ! ふざけんなァ」
「相当驚いた挙句に、噛んでますね」
「おかげで凄い臨場感よっ」
「想像すると、とてもシュールですけど」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十二分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「高校じゃなくなったけど、中学時代なんかは自転車通学の人、ヘルメットの確認もされるんだよね」
「被って無いヤツの方が多いけどな……」
「気持ちは分からなくも無いのよね。ほら、THEヘルメットって感じじゃない?」
「本格的に自転車が好きな人が被る、あのスタイリッシュなヘルメットならどうでしょうか?」
「ママチャリにあれ、だろ……? 変じゃないか? やっぱりママチャリだったらTHEヘルメットが丁度いいって」
「クマの着ぐるみなんてどうかな? ある時はクマ、そしてある時もまた……ク、マ」
「それいつでも常にクマじゃんっ!」
「黄色いヤツ? それともリラックスしてる方っ?!」
「どっち被ったって首から下とのバランスがおかしな事になりますよ」
「……想像しただけでも結構不気味だよな」
「特に黄色い方は、可愛いベクトルがちょっと違うからね。正直言うと、そんなに可愛く」
「うわぁー、わーあああっ! ストップっ! それ以上はダメだっ!」
「どうして? あくまでもこれは個人的な感覚の話しなんだよ?」
「それでも、だ……。さらっと一大事になりそうは発言するの、止めてくれ……」
「仕方ないなぁ。代わりに戦国武将の兜ならどう?」
「それこそ被り物とのベクトルが違い過ぎて、代わりとなるのかどうか……」
「こう言う場合は式葉先輩がどうにかしてくれますよ」
「むむっ、あれは……隣町のA高のやつらね。我が物顔で好き勝手にやってくれるじゃないのよ。ふっ……あたしがこの地元で下り最速だって事を、知っての狼藉なのかしらっ!」
「上等じゃ戦国武将だとぉっ! ふざけんなァ」
「そりゃ、驚くよね。追い越して来た人物が戦国武将の兜を被っていたら」
「風に煽られるくらい大袈裟な角を付けましょう」
「その角を倒すと、風の抵抗が減ってさらに速くなるんだよね」
「せ、戦国武将が、消えたぁっ?! 何ぃっ?! 右からだとぉっ?!」
「たぶん、このまま続けてもきっと同じネタでボケ続けそうだね」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十四分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「…………冗談にならないっての」
増えている、確かにそれは感じていた事だった。
けれど……ここ最近の増え方は異常を来たしている。
ついさっき見ていた世界が別の世界なんじゃないか、そう錯覚するくらいアイツ等はどんどん数を増して行った……いや、増して行った、では無く今もなお、増している。
腐敗が進んで身体が痛み出したせいなんだろう。
腕や足、身体の一部が自然と取れ……そこから人型が出来上がり、個体数が増え続けているって事だ。
そして、増えたヤツ等の身体の一部から、また同じように更に増え始める。
増えて行くに連れて、身体がどれ程痛んでいるのかなんて見た目では全く分からないけれど、その増えて行く過程を経て、いつかは増えなくなるくらい痛み切った状態になるのだろうか……?
「まったく……とんだ世界にしてくれたもんだよな……」
いつかこの状況が収まってくれるはず、その確信も無い希望にすがってるくらいなら、少しでも数を減らして来た方がいいはずだ。
日が落ちるまでには、まだ多少時間はある。
「……行ってこよう」
生き延びる為に、今、出来る事をしておかなければ。
後で後悔をしてしまう事が無いように。
次回予告 コウカイ
「あなたの選択が、例えコウカイする事が分かっていても成し遂げるべき事であるならば、迷わず受け入れる覚悟がありますか? と言う話ではないけれど、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」




