No.002 Let's play in the situation of morning encounter.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時二十五分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「今日は二学年選抜で集まって貰いました」
「まぁ、私は紬くんさえいてくれたら、それでいいわ」
「獲物を狙うようなその流し目で、僕を見るのは止めろ……」
「あら、何も分かっていないのね。狙うような、では無くて、狙っている、と解釈して欲しいものだわ」
「ハンターに狙われている動物達の気持ちも考えてよっ!」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時二十七分。
放課後、空き教室。
初口、彩瀬名愛結。
「今日はいったい何を話し合えばいいのかしら? 紬くんとのめくるめく一夜を話せと言うのなら、序章だけで三時間は欲しいわね」
「勝手におかしな一夜を作り上げないでっ! 六条っ、この人どんどん暴走しちゃうから、話しを進めてっ!」
「それはそれで楽しそうなんだけどなぁ。まぁ、紬くんがそう言うなら進めるね。今回は、朝の出会いのシチュエーションで遊ぼうかなぁ、と思います」
「えーっと、六条、もう少し具体的に」
「あーどうしよう、遅刻遅刻ー、どしーん、で分かるかな?」
「演技はすっごい棒読みだったけど、それ以上の説明は必要無いっ! 絶対有り得ないけどなぁっちくしょーう!」
「そこまで残念がらなくても……」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時二十九分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「私からかぁ。えっとぉ、遅刻遅刻ーと言いながら、ご飯とお味噌汁を持って走っている」
「おかしいだろっ!」
「そうね、おかしいわ。箸も持たずにどうやって食べるのかしら」
「おかしいのはそこじゃないでしょっ?!」
「あ、そうだね。お箸、必要だよね」
「必要無いからっ! 出会い頭に大惨事だよっ!」
「六条さん、おかずは?」
「んー、もう持てないから、お味噌汁を豚汁に変えようか? それならどうかな?」
「ええ、問題無いわ」
「…………豚汁はおかずじゃない」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十二分。
放課後、空き教室。
初口、彩瀬名愛結。
「遅刻遅刻と言いながら、パンを口に咥えて」
「それだよ、それっ」
「突然出て来た相手の顔面に、思い切り投げ付ける」
「投げるだけの余裕あるなら避けろっ!」
「どんなパン? ダブルソフト?」
「いいえ、超芳醇」
「あ、それなら問題無いよね」
「何がっ?!」
「ちなみに、ブルーベリージャムよ」
「ブルーベリーなんだ。凄いね」
「僕にはお前達の会話が成立してる事に、凄さを感じるよ……」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「君達っ、朝の出会いを……重要なフラグポイントをどーしてそんな風にないがしろにしちゃってんのっ! もったいないっ!」
「全く、何が気に入らないと言うのよ」
「あ、食べ物って設定がダメなのかな?」
「現金とか? そんな物が欲しいの? 百万くらい口に咥えていればいいのかしら? ごめんなさい、キャッシュじゃ持っていないから、カードでいいかしら?」
「プ、プラチナカード、だとっ?!」
「このカードを咥えた私ごと、紬くんに上げてもいいわよ?」
「自分をもっと大切にしろっ!」
「さすがに私はそんな凄いカードを持っていないから、黄金の爪でもいいかなぁ?」
「持ってたらある意味カードより凄いけど、モンスターいっぱい来ちゃうっ!」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十七分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「それで紬くんの朝の出会いシチュエーションは?」
「オーソドックスなヤツでいいんだよっ」
「パンを咥えて走っている時点で、オーソドックスとは逸脱しているんじゃないかなぁ?」
「味噌汁持たせたり、黄金の爪持たせるよりはマシだと思うんですけどぉっ?!」
「仕方ないわね。遅刻少女がよく口に咥えている物に変えてあげるわよ。そうね、一般的に多い、ドロー4カードならどうかしら?」
「確実にマイノリティーだってっ!」
「そしたら、紬くんはドロー2カード持っておかないとね」
「それルール上流せないからっ!」
「あら、残念ね。せっかくのフラグが折れてしまったわ」
「ドロー4咥えて登校してる奇抜な出会いなんて、絶対無いから……」
「ドロー4を返せたら、その子がプレゼントされたと言うのに」
「…………た、確か、校内にUNOあった気がする……探しとこ」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十分。
放課後、空き教室。
初口、六条茜。
「今回はここまで。次回は一学年選抜だから、先輩として紬くんはしっかりとね」
「……不安しかないけど、お題は変わるわけ?」
「変えるつもりだよ。それで、今回のお題はどうだったかなぁ?」
「…………二人の考えが斜め上過ぎて、ツッコミ疲れたわ」
「嘘おっしゃい。私に散々ツッコミ慣れているくせに。あっちの方向で」
「あっちってどっちっ?!」
「ここと、ここと、後はここも、かしら」
「自分の身体を指差して説明をするなっ!」
「まぁ、私達も意外な組み合わせの出会いをしているのかもだよね~」
「そうね。紬くんの事なんて眼中に無いどころか、存在している事すら、記憶していなかったくらいだったわね。今はもう紬くんしか見えていないけれど、ふっ」
「うひゃうっ! イキナリ耳に息を吹き掛けないでっ!」
「と言いながらも、まんざらでも無さそうなのが、紬くんだよね~」
「でしょうね。六条さんなんて、出会いが胸から始まったのでしょう?」
「うん、胸に話し掛けていたくらいだから」
「ちょっとこらっ、勝手に変な出会いをでっち上げるなぁっ!」
次回予告 ギシンアンキ
「あなたが抱いた、その人への不安や猜疑心。それはただの思い過ごしでは無く、きっと真実……と言う話では無くて、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」