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崩壊した世界の放課後、〇〇をネタに会話をしてみた  作者: ラノ
放課後、学校の委員会をネタに会話をしてみた
18/24

No.007 I tried to talk with the public relations committee.

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十二分。

 放課後、空き教室。

 初口、六条茜。

「はい、紬くん。今日もお疲れ様」

「ありがと……んぐ、んぐ、んぐ…………ぷはーっ! くあああ、この一杯の為に生きてるってもんだよなぁっ! ちくしょーっ!」

「ただのコーラだけどね」

「今唐突に思ったんだけど、こんな世界だから法なんてものは無いに等しいわけだから……ビール飲んでもいいって事だよねっ?!」

「んー、まぁ、いいんじゃないかな? ただ、どうして二十歳になってからって規則があるのかよく考えた事はある?」

「いや、特別考えた事は無いけど、なんだっけ? 身体が出来上がって無いとか、どうたらこうたら」

「どうたらこうたらの部分が重要なんだよ? いいかな、紬くん。私達のようなまだまだ子供がアルコールなんて刺激の強いものに手を出すと、依存し易いからって事なんだよ? 人間、二十歳を迎えて成人になる頃には、それなりの経験を積んで来ているだろうから、アルコールを摂取しても依存する事が少なくなる。そんな考えがあるからこそ、二十歳からって決まりなの、分かるかな?」

「とは言うけど成人まであと数年だろ? たった数年で変わる?」

「そのたった数年の間に、大人の階段を上る人は多いんじゃないかな? ほら、どお? 階段を上った人と、まだ階段の下にいる人では人生経験の違いが明らかでしょ?」

「……な、なんて説得力のある言葉なんだっ!」

「まぁ、成人してもまだ階段の下にいる人もいるだろうけどね」

「その言葉に今ぎくりとした人間がどれ程いるだろうか……ホント、毎度の事ながら、さらーっと厳しい事言うよね……」

「それはそれとして、紬くんに聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「お、おう、何だ……?」

「あ、残念ながら期待しているような楽しい、嬉しい質問じゃないからね?」

「先手を取らないでっ!

「後々分かるくらいなら、先の方がいいと思って」

「……お気遣い、アリガトウゴザイマス、ハイ。で、質問ってのは?」

「今も外にたくさんいるけれど、あの人達はどうして、生きている人間を区別して襲って来るのかなって。紬くんは外に出る回数が多いから、何か気付いた事でもあれば教えて貰いたいなぁって思ったんだよ」

「絶対ってわけじゃ無いんだけど、分かった事はある。アイツ等、目も耳も鼻も、まぁ五感は機能している。さすがに匂いとか味とかを感じているのか聞いたわけじゃないから、そこはたぶんって話を含んでいるんだけど、中でも耳が一番機能しているんだよ」

「へぇ、具体的には?」

「生きている人間の区別を、人間の出す音で聞き分けているんだ。僕達は普段気にしてなんていないけど、心拍音や血流音、筋肉が伸縮する度に発する音、そんな様々な人間が発している音を聞き分けて生きている人間の区別をしている……」

「…………」

「そんなバカな、って驚くだろ? でも、間違ってはいないはず。音を出さなければいいと思って、その場にじっとして試した事があったんだよ。でも……アイツ等、僕を真っ直ぐ狙って来た……」

「……他に大きな音が周りにあると、どうなっちゃうの?」

「その時は、音の大きい方へと向かって行く。でも、その音が途絶えるとそこまで。狙いを変えて生きている人間へと向かい始める。目も見えているっぽいけど、たぶん、見えていなくても……生きている人間を確実に区別してくるはずだ……」

「…………」

「きっとさ……耳障りなんだよ。生きている人間の発する音が。だから少しでも傷付けて、あっち側へ引き摺り込んで、同類にしてしまうと襲うのをパタっと止める……」

「そっか……それで思ったよりも、あの人達は五体満足なんだね」

「そう言う事」

「あまり想像したくは無いけど、食欲を満たしているわけでは無かったって事?」

「どうしてそんなイメージが定着したのか分からないけど、実際は食べる事がまず無い」

「実際こんな事態に遭ってみると、イメージとは全然違うわけかぁ」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十五分。

 放課後、空き教室。

 初口、式葉ヒトミ。

「ねぇねぇ、ナオやあかねっちの学校には広報委員会ってのはあった?」

「ん? 無かったけど、何すんの?」

「学校の広報活動ですよ。ホームページに載せる写真を撮ったり、掲示板のポスターを張り替えたり」

「私達の学校で言うところの新聞委員会、かな。活動内容が同じだし。学校行事の写真を撮影するんだよね?」

「そそ」

「でも不思議な事があるんですよ。どうしても腑に落ちない事が」

「と言うと?」

「いつネタとなる写真を撮影しているのか、分からないんです」

「いつって……行事がある度に、撮影しているに決まっていると思うけど?」

「いやいや、それがね、ナオ。うちの学校ではその目撃例がまっっったく無いのよ」

「全く無いって……じゃあ、どうやって撮影してるんだ?」

「だから不思議、なんですよ」

「そもそもあたしの学校の広報委員会メンバーってのが……誰なのかすら分からないのよ……」

「生徒会長してたヒトミがなんで知らないんだよ……」

「あたしが教えて欲しいくらいなんですけど……」

「それなのにしっかりと活動されていて、ホームページでも校内新聞でもその時々の写真が使われているんです…………」

「ちょっと……もうそれ、ホラーだろ……?」

「生徒だと思い込んでいるだけで、実は先生の内の誰か、だったって事は無いかな?」

「さすが六条、それ、いい線だっ」

「残念だけど、その線は無かったんです。でも……」

「でも……ごくり」

「カメラだけは借りに来たそうです」

「それなら先生は、広報委員会の生徒に会っているって事だよね?」

「それがね…………確かに借りに来た事は覚えているのに、誰が借りに来たのかって事だけは覚えていないって言うのよ……。周りの先生も含めて、ね」

「だ、大丈夫か……この学校…………」

「あれじゃないかな? ドローン、だったかな? それで空撮しているから誰も委員会の生徒を見た事が……って、その表情を見ると、この線も違う?」

「うん、残念ながらねー」

「もう幽霊の線しか無いだろ……」

「んーそれもどうかしら? 幽霊って存在を認めた上で言うけれど、幽霊が自分の姿を消せるように持っているカメラも消せるわけ?」

「ど、どうなんだ……なぁ、六条、そこんとこどう思う?」

「さぁ、どうなんだろう? さすがに分からないなぁ」

「私が思うところ、超望遠レンズを装着して、数キロメートル先くらいから撮影していると思います」

「さすがに幽霊の線は無いからなぁ。ユナの言う事が一番現実味がある、はず……だと思いたい」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十九分。

 放課後、空き教室。

 初口、宮原橋ユナ。

「ちなみにこれ、文化祭での出来事を撮影した写真なんですが……」

「ほほう、よく撮れているじゃないか」

「うん、そうだね」

「もっと良く見てください、ほら……ここ、ここですよ」

「んー?」

「あ……いる、ね」

「え……?」

「ナオさん、もっと良く見てください。ほら、この生徒の肩の辺りですよ……」

「おい………………マジ、か? これ」

「マジよ。お分かり頂けただろうか? 凄いでしょ、それ」

「どう見ても心霊写真だろ…………うぉぉ、怖……」

「ナオさん、次のを見てください」

「次? ……ひっひぃぃぃぃいいいっ!」

「うわぁ、これはまた……写っている生徒よりもアピールが凄いね……」

「どっちが心霊現象なのか分からんそっこれっ! って言うか、アピールし過ぎっ! Vサインしてるじゃんっ!」

「ほらほらぁ」

「やめっ、怖っ! 近付けるなってっ! 形相だけはマジちょー怖いからそれっ!」

「広報委員会の人が撮影した写真には、だいたいほぼ写り込んでいるんです」

「どう考えてもその広報委員会の生徒が、呼びこんでいる……いや、待てよ。もしかすると…………カメラ、のせいなんじゃないか?」

「おー、それは有り得るかもだね。ヒトミ先輩、この写真を撮影した時のカメラは?」

「職員室に行けばあるけどぉ、ねぇ」

「…………職員室行くまでにホラー的な人がいーっぱいいますね」

「やっぱり和風ホラーには洋風ホラーにはない恐怖感があるよね」

「ホラーとは言うけど……洋風側は実際起こっちゃってるけどな……」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時五十二分。

 放課後、空き教室。

 初口、紬ナオ。

「うちのとこは至って普通だったっけ?」

「そうだね。特別目立った事は無かったけれど、活動はしっかりしてた、かな」

「活動をしっかりしているなんて……有り得ないわよっ!」

「しっかりしてる方が普通なんだっ! お前のとこがおかしいんだっ!」

「ナオさんは、そう言うの得意そうですよね?」

「写真か? んー、得意……では無い。カメラ持ってるわけでも無いし」

「あれ? そうなんだ。二次元好きを豪語しているくらいだから、コスプレした子を撮影しに恥ずかしげも無く、痛々しさすら忘れて『目線くださーい』とか言っているのかと思ったよ」

「全国の撮影家に謝れっ!」

「意外よねー、まさかナオが撮影会? とかに行かないだなんて」

「ヒトミ先輩。紬くんはヒキニートですから、外には全く出ないんですよ」

「出るよっ! 出るからっ! それにたぶん……撮影しろと言われれば、撮影だって出来るっ! 二次元好きはその時何をすべきかによって才能を開花させる事が可能っ!」

「体育祭の場合だと、無駄にバストの写真とか多く撮影していそうですね」

「ふっ、甘いな、ユナ……胸だけの写真になんて…………需要は無いんだよっ! いいかっ! 必要なのは……表情! 表情が入っている上で胸も収める必要があるんだよっ!」

「良い事を言っている風には聞こえ無くもないけれど、なんだかんだいいながらも、胸はしっかり撮影するんだね」

「趣味だもんね」

「違うっ趣味じゃないっ! これは…………義務! 撮影する者とし、いかにして被写体の魅力を十分に発揮してカメラに収めるかっ! その刹那、一瞬、瞬間に反応して撮影するっ! カメラを手にした人間が成すべき……絶対的義務だっ!」

「無駄に熱いのが鬱陶しいわね……」

「撮影した事が無いとは言いながら、言ってる事はそれっぽいですよね」

「紬くん、二次元の中では通用する言葉でも、現実の世界で言われると引かれる事もあるから気を付けるんだよ?」

「六条さん……最近、ちょくちょくグサーっと来るけど、もう少し、こう、ね……少し言い辛いなぁとかさ、言うのが悪いなぁとかって言い方は出来ませんかねぇっ」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時五十四分。

 放課後、空き教室。

 初口、六条茜。

「この写真はまた別な物が写っているね」

「…………なんだ、これ」

「円柱状の未確認飛行物体、だそうです」

「新型のUFOね。こっちはもーっと凄いわよ」

「どれどれ…………なっ、こ、ここっ、こんなん有り得ないだろっ!」

「何が写っているの?」

「ど、ドラゴン……」

「うわぁ、本当に写ってる……」

「……こっちなんて『前に出るからっ!』とか『あんたって人は―っ』とか聞こえて来そうな物が写ってるし」

「こっちも凄いですよ。いつ完結するのか分からないまま、その存在が人々から徐々に薄れている汎用人型決戦兵器っぽい姿を捉えています」

「写真に写っている事よりも”次”はいつ来るんだよっ! もう今までの展開忘れちゃってるんだけどっ!」

「あんたバカね」

「ヒトミ、上手い事言ったと褒めて上げるけど、今までの話しを説明しろって言われてパッと説明出来るヤツなんていないから……」

「まぁ、この世界は崩壊しちゃっているから、もう”次”は生涯来ないだろうけどね」

「そ、そうだった…………だから、だから……世界は何が起こるか分からないし早く”次”をって願っていたのにぃっ!」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時五十七分。

 放課後、空き教室。

 初口、紬ナオ。

「さすがにドラゴン以降は合成、だよ……な?」

 とは思いたいけど、今見ている外の世界を知っていると、合成だとは言い切れない。

 人をあんなの変化させた細菌兵器同士の化学反応。

 それを考えると……人の姿をしている日本の中はまだマシ、だったりするのかも。

 もしかしたら発端となった某国はその周辺の国なんて、ここよりもっと悲惨な事になっていたりするのかも。

 人の姿を成していない…………。

 けど、それならそれで倒す事に躊躇う事が無くなるのかも。  

「やりにくいんだよな……人の姿をしているから…………」

「ナオ、夕飯出来たんだけど、その前にちょっといいかしら?」

「あぁ、うん。何?」

「なんかね、防火扉のロックがおかしいのよ。二、三回扉を締め直さないと掛からない事があって」

「あれって電子ロックだっただろ? 何かがロックの邪魔をしてるのかな? 夕飯行くついでに確認してみるよ」

「うん、そうして貰えると助かるわ」

「念の為バリケードの方をもっと厚くしておく」

「悪いわねぇ」

「これも僕の仕事だし……よっと、んじゃ早速行って来る」

「無事帰って来たら、あたしのぱんつ見せて上げるからちゃんと帰って来なさいよね」

「…………」

「もぉ、仕方ないわねぇ。ぱんつじゃ満足出来ないなら、ノーパンでいいわよっ」

「んな事されなくてもちゃんと帰って来るってのっ!」


次回予告 ナレ

「悪意ある言葉を使う事にナレる事、人を傷付ける事にナレる事、人を殺める事にナレる事、あなたは普段の言動で、他者を傷付けている事にナレていませんか? と言う話ではないけれど、未定」

「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」

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