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崩壊した世界の放課後、〇〇をネタに会話をしてみた  作者: ラノ
放課後、学校の委員会をネタに会話をしてみた
12/24

No.001 Let's introduce others and talk to each other.

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十分。

 放課後、空き教室。

 初口、式葉ヒトミ。

「あ、やっぱりここにいた」

「ん? 何か用?」

「別に用事ってわけじゃないけど、どうせする事も無いでしょ? 外は相変わらずあんなだしさ」

「校舎内だって結構入って来るってのに、ヒトミ達はよく今まで生存したよな……」

「ドアに机とか椅子とか引っ掛けてたし、案外大丈夫なものだったわよ」

「でも、防火扉だなんてよく気付きましたね」

「あぁ、ユナも来たのか。防火扉は六条が思い付いたんだよ」

「成績優秀って話でしたもんね」

「ま、勉強もこんな世界じゃ意味無くなっちゃったけど」

「勉強は出来ないにしても、ヒトミはもっと考えて行動すべきだ……」

「誰も出来ないなんて言っていないでしょーっ」

「え、式葉先輩、勉強なんて出来たんですか?」

「楽勝よ、らくしょー」

「嘘だろ……」

「嘘ですね」

「何よっ二人揃ってっ! あたし、年上なのよ?! もっと敬意を払うべきなんじゃないかしらっ?!」

「ほう、敬意なんて言葉を知っているんだな」

「年の功、ですね」

「敬意のけの字も無いんですけどぉっ?!」

「確かに一個上だけど……なぁ」

「ええ」

「何その、二人して通じ合っちゃってる感ぎゅんぎゅんのアイコンタクトっ」

「ぎゅんぎゅんなんて使ってる時点で、なぁ……」

「ええ」

「むきーっ!」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十三分。

 放課後、空き教室。

 初口、紬ナオ。

「せっかくこうして集まったんだ、改めて二人は自己紹介をしてやってくれ」

「は? いったい誰に?」

「そうですよ。ナオさんと茜さんにはちゃんとしたじゃないですか。何を今更」

「そう言わずにさ……色々あるんだって。とにかく自己紹介をよろしく頼むよ」

「何だか釈然としないけど、まぁ、いいわ。してあげるわよ」

「ナオさん、式葉先輩が『釈然』なんて言葉を使っていますよ?」

「やばいな…………明日はきっとゾンビが遂に飛行する進化を遂げるぞ……」

「それくらいの言葉、あたしだって知ってるわよっ!」

「ん、偉いぞ、ヒトミ。知的な所をアピールしたところで、自己紹介を頼……あ、いや、ちょっと待って。他己紹介にしよう」

「と、言う事は、私が式葉先輩を紹介する、と言う事ですね?」

「そう言う事だ…………ヒトミ、他己紹介って知ってる、よな?」

「あ、当たり前でしょっ! あたしがユナを紹介するって事だもんね。それくらい知ってるから!」

「突っ込む気にもなれませんが、とりあえず、式葉先輩を紹介しますね。名前は式葉ヒトミ先輩。一つ上の高校三年生。性格は底無しの鬱陶しい明るさ、と言うか、おバカキャラと言うか」

「あたし、三年生っ! 年長者だよっ?! もっとこう敬ってもいいと思うんだけどぉっ?!」

「敬えと言われても……ねぇ、ナオさん」

「だな……」

「むきぃっふががが」

「よし、ユナ。ヒトミの趣味についても頼む」

「んー、すいません。そこまでは知らないんです。式葉先輩と私って、まだ出会ってそんなに長く無いので」

「そうなのか、仲は良さそうだから付き合いは長いのかと思ったんだけど」

「ふぐぐぐっ」

「こんな世界ですから、否応なくそれなりに仲良くなりますよ」

「それもそうだよな、んじゃ、本人から趣味を聞こう」

「ぷあっ! 殺す気っ?! あたしが死んじゃったらゾンビになっちゃうんだよっ?!」

「なんだろうなぁ、ヒトミはそれを超越して、普通に死ねる気がしてならない」

「はい、同意見です」

「見てなさいよぉ、あたしは幽霊になってあんた達を呪って上げるんだからっ!」

「そんな幽霊に憧れる式葉ヒトミさんのご趣味は?」

「料理っ! 裁縫っ!」

「神様ってのは、誰にでも何かすら取柄を与えてくれるんだな、って理解出来た瞬間だったよ」

「そうですね。確かに料理と裁縫の腕は尊敬に値しました」

「でしょっ?! あたし、凄いよねっ?! もっと褒めてっ! もっと、あたしをいい気分にさせてっ!」

「この性格が無ければ……なぁ」

「ホント、神様ってのは取り得と共に、要らない事も付与するんですよね……」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十七分。

 放課後、空き教室。

 初口、式葉ヒトミ。

「じゃあ、今度はあたしがユナを紹介する番ね。えっと、宮原橋ユナ、高校一年生。苗字を意識して発音しないと、舌を噛んじゃいそうなのが厄介なのよぉ」

「僕はだから、名前で呼ぶようにした」

「私自身が言うのも何ですけど、自己紹介をする場面では自分でも気を付けていましたよ」

「ユナがそうだったように、あたしもユナの趣味については何にも知らないわ」

「私は特別趣味って言える事はしていませんでした。ほどほどに適度に、毎日を平穏に過ごせればそれで良かったんです」

「そんな平穏も、もう三か月前、か。に、壊れっちゃったのよね」

「そうですね。本当に、たまったものじゃないですよ……と言っても、こうなる前も、平穏だったかどうかも微妙ですよね」

「と、言うと?」

「学生は勉強、社会人は仕事、よくよく考えれば追われている毎日だったと思いませんか?」

「まぁ、そうかもなぁ」

「そんな事を考えなくて済むようになったのは、なんだかなぁって感じよねー」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十九分。

 放課後、空き教室。

 初口、宮原橋ユナ。

「私達がナオさん達と出会ってから、もう一カ月。お二人のおかげで、今ではかなり安心しながら過ごせるようになりました。式葉先輩はこんな性格だから、行き当たりばったり感が半端無くて苦労したんです」

「…………その大変さ、察するよ」

「でも、ちゃんと生き延びたわけでしょっ? 結果オーライじゃないっ!」

「強運と言うか悪運だけは飛び抜けていますもんね」

「そうなの?」

「はい。襲われそうになった時、天井が崩れてゾンビだけを圧し潰しちゃうとか、追い掛けられた時、何故か式葉先輩が通った後の地面にぽっかりと穴が開いて、ゾンビを落としちゃうとか、もうそれはギャグの領域でした」

「…………お前、凄いヤツなんだな。世界が崩壊する前に、宝くじとか買ってみれば良かったのに」

「宝くじ? あ、あー、そうだ。そう言えばそう言われて思い出したけど、崩壊する前に、あたし買っていたんだった。ちょっと待って、確か鞄の中に…………あ、ほら、これこれ。十枚だけね」

「確かにこれ、今年のだぞ」

「ちょっと待ってください。えっと、あ、まだ当選番号の発表されているサイトが通信出来ますよ」

「こんな時にもし当たったって、何も意味無いじゃない。鼻紙にでもすればいいわよ」

「……………………おい、これ……当たってるぞ」

「え? そうなんですか? 何等が?」

「い、一等…………」

「またまたぁ、ご冗談を。見間違えているんですって…………あ、本当に当たってる」

「その宝くじ、連番なのよ」

「って事は…………七億っ?!」

「おほー、あたし凄いっ!」

「こんな世の中じゃなければ、式葉先輩はもう一生遊んで暮らせましたよ?」

「そうなんだろうね。でも、きっと、人生なんてそんな上手く行ってないんじゃないかしらね? 世界が終わる事の無い世界であったなら、この当選番号だって、何かすらの作用が関係して違う番号になっていたって考えられるじゃない?」

「ナオさん。式葉先輩が哲学的な事を言っていますよ?」

「あぁ……これは、もしかすると、世界が復活するかもしれん」

「せっかくカッコいい事言ったのにっ、二人とも酷過ぎっ!」

 コチ、コチ、コチ、コチ……十六時四十二分。

 放課後、空き教室。

 初口、紬ナオ。

 そんなこんなで始まった、別の地域の別の校舎の空き教室での生活。

 六条と二人で僕達が通学していた学校を出てから、数日後の事。

 まぁ、色々あって、二人と出会いこうしてまた以前のような生活を送っている。

 この生活がいつまで続くかは分からないけれど、またしばらく他愛も無い会話をして、終わった世界の中、面白おかしく過ごして行こう、と言う事に、僕を含めた四人の間で話が纏まった。

 そして…………周期が来た時に、自分でこの場を離れる事も……もう決めている。

 彩瀬名、リカ、露霧の三人とは、たくさん……本当にたくさん会話をした。

 不安な事、怖い思い、生きたいと願う感情。

 何もかも八つ当たりのように、話し合ったっけ……。

 話しあっても解決出来ない事を、それぞれみんなが知っていて、どうして上げる事も出来ない事を理解しているから、もうその時の苦しい気持ちや辛い思いをしたく無いと思っていたのに、またこうして、新しい知り合いを作ってしまっている。

 たぶん、この世界から人が滅亡するか、それとも僕が先に死んでしまうか……そうでも無い限り、繰り返してしまう事なのかもしれない。

「ちょっと、ナオっ! 聞いてるっ?!」

「あ、あぁ、ごめん。何?」

「もおちゃんとしなさいよね。今後はどうするのかって話よ」

「今後も変わらず、他愛の無い話でもしながら過ごして行くつもりだよ。誰かと話す事ですら、いつかは出来なくなるかもしれないわけだから」

「そうですね、私もそれには賛成です」

「だいたい六条が指令を出してくれるから、それについて思い思いに会話をする、こんな感じだ」

 バカだよなぁ、僕も。

 親しくなればそれだけ別れるのが辛いって事を、思い知ったってのに。

 でも、そうだと分かりきっていても、精一杯生きなくちゃいけない……みんなと約束したんだから。

 そうだよな、彩瀬名、リカ、露霧。

 僕は辛い思いも含めて、しっかり、この終わりに向かって行く世界の中を生きていくよ。


次回予告 サツイ

「あなたは親しい知り合いの行いが許せないと感じた時、少しでもサツイを抱いた事がありますか? と言う話ではないけれど、未定」

「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」

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