No.010 Let's play in tha situation where my sister can do.
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時二十八分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「彩瀬名、リカ、待ってたよ」
「どうやら六条さんから聞いているようね」
「次でって言われてた」
「そう、ならば話は早いわね。悪いけれど、少し手を貸してくれるかしら? 緋内さんはもう限界に近いのよ」
「あぁ、うん、分かった」
「…………ナオ、ごめん、ね」
「気にするな。座れそうか?」
「……う、ん。大丈、夫」
「彩瀬名はこれからどうするつもり? 露霧は自分の家に帰ったよ」
「ええ、露霧さんから聞いているわ。私は、そうね。緋内さんを連れて、適当な場所へ行くつもり。緋内さんの容態を考えると、あまり遠くまでは行けないだろうし」
「……い、いわよ。あたしの事は、放っておい、ても」
「ねぇ、紬くん」
「うん?」
「これも、ツンデレ特有のデレ、と言う事なのかしら?」
「あぁ、その通り。リカの発言は全てがデレに繋がっているんだよ。ツンデレだからな」
「だ、れが……ツンデレ、なのよ……」
「素直じゃない事もツンデレだから、と言う事かしら? まぁ、一人よりは見知った相手と最後を迎えるのも悪く無いし、悪いけれど、私に付き合って貰うわよ?」
「ちなみに彩瀬名のそれは、クーデレってところか」
「ええ、そうしておきなさいな」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十分。
放課後、空き教室。
初口、彩瀬名愛結。
「実の所、私もかなり無理をしているの。だから、さっさと今日の指令をしてしまいましょう」
「こんな時でも、しっかり指令はするのか」
「だって、それが私達の間で決めた事なのだから。それじゃあ、六条さんからの指令。『血縁関係の無い妹が突然出来る』シチュエーション、だそうよ」
「ほほー、そう来たか」
「どう……考えたって親が、再婚するしか考えられない、じゃないのよ……」
「だろうなぁ。でも、実際本当にそうなったらどうなるんだろう? やっぱり異性として見てしまうんだろうか?」
「年齢にも寄るのではなくて? 中学生や高校生くらいであれば、異性として意識するでしょうけれど、小学生低学年以下であれば、そうでも無い気がするわ」
「んー、一理あるかも」
「けれど、その妹が可愛いとは限らないわよね? どうしようも無いくらい絶望的な容姿だったらどうなるのかしら? 血縁関係のある妹よりもぞんざいな扱いになりそうな気もするわよね?」
「彩瀬名…………滅茶苦茶答えにくい事をサラッと聞かないでくれ」
「妹の立場からすれば……兄、になる方が、酷い有様だったら……絶対、再婚を阻止、するわね」
「リカ、ジッと僕の事を見るのは止めろ」
「あら、私は紬くんの妹でも全く構わないわよ? ねぇ、お兄様」
「うひぃあ! 腿を妙な指付きでなぞらないでっ!」
「べ、べ別に、嫌だなんて、言って無い、じゃないのよっ」
「あらあら、ツンデレの妹なんて、紬くんにしたら最高のシチュエーションじゃないの」
「まぁ……殴らないのであれば、な」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十二分。
放課後、空き教室。
初口、彩瀬名愛結。
「血縁じゃない他の方法があるとすれば、異世界から妹が転生してくる、とか」
「マジでっ?! 今すぐ転生して来て欲しいんだけどっ! 素直で純心で『お兄ちゃん』と呼んでくれる妹を! 今直ぐ、プリーズッ! ちょうだい妹っ!」
「うるさいわよっ!」
「うわっ、こらっ、ツインテールでビシビシするなっ!」
「ふーむ、これが噂に聞く、ツンデレキャラツインテールでビシビシアタック、ね」
「まんまだな、おい……だが、これが使えるようになってようやく、ツンデレキャラとして認められるんだよ。よく頑張ったな、リカ」
「あんたが鬱陶しいから、自然と上手くなったのよっ!」
「ぴぎゃあっ! 目がぁぁぁああっ! 目がああああっ! 目潰しはキツイってっ!」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十四分。
放課後、空き教室。
初口、緋内ハーシィーリカリッタ。
「そう、言えば……妹って、空から降って来るんじゃなかった、かしら……」
「何処からっ?! 今直ぐキャッチしに行って来たいっ!」
「ただし時速、七十キロくらいの速度、だったはずよ……」
「確実に紬くんの腕は持っていかれるわね」
「そして妹も……地面に激突して、あえなく……死亡、するのよ……」
「惨いからっ! 惨過ぎるから止めて上げてっ!」
「妹を手に入れるのも大変よね」
コチ、コチ、コチ、コチ……十六時三十五分。
放課後、空き教室。
初口、彩瀬名愛結。
「錬金術を使えばいけるんじゃないかしら?」
「それ、ダメな奴でしょっ?! 錬金術で人作っちゃうと、ホムンクルスって言うヤツになっちゃうんだからっ!」
「別にいいじゃない。ホムンクルスだろうと人造人間だろと、しっかりと人間の形をしているのだから、どこに不満があると言うのかしら?」
「そう、よね……しかも、大抵死なないんだから、いいじゃない……」
「お、お前ら……錬金術を題材にした二次元コンテンツを、完全にディスってるだろ?」
「別にそんな意図は無いわよ。ただ、錬金術とやらでちゃんとした人間が錬成出来るストーリーがあっても良いと思うわ」
「それか……悪魔召喚の術式で妹を召喚する、とかね」
「…………魔王の娘が出て来そうな展開」
「そしたら、精力がきっと強いわよ?」
「…………」
「ナオ、あんた今、ちょっと想像したでしょ?」
「…………」
「ちょっと、何であたしを見るわけ……」
「あらあら、妄想の中で緋内さんが紬くんに襲い掛かっているようね」
「なななっ、何、バカな事言ってるのよぉっ!」
バチーン、コチ、コチ……十六時三十八分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「……おい、言ったのは僕じゃないだろ」
「全部、ナオが悪いっ!」
「彩瀬名、見たか? この理不尽さがあってこそ、ツンデレキャラでもあるんだぞ?」
「ふーん、ツンデレって色々と大変なのね」
「リカ本人はそれが普通だから、全く大変じゃないんだろうけどな。さすがツンデレだぜっ!」
「もう一遍、死んでみるっ?」
「……遠慮させていただきます」
「まったく、あんたみたいなのが兄だったら、その妹が可哀そうでならないわね」
「それは聞き捨てならないな……僕、めっちゃ妹大事にするよ? そりゃもう、過保護なくらい」
「うわ、キモ……うざ…………やっぱり、キモ」
「二回も同じ事言わなくていいんだよっ!」
「ただ、それは血縁関係に無いからでしょう? 実際、血縁関係のある妹がいたら、きっと扱いがぞんざいになると思うわ。その逆もしかりでしょうけれど」
「ナオの場合は、妹の尻に敷かれて、いるでしょうね。毎日、ただのパシリ」
「そんな事は絶対に無いっ! 兄としての威厳はきっとあるってっ!」
「どうかしら? その妹がとても腹黒くて『お兄ちゃん、リカ、少し具合が悪いんだけど、アイスクリームが食べたいな』なんて甘い声で言われたら、全速力で買いに行くでしょう? 単純に利用されているだけだと言うのに」
「なんで、あんたなんかに、あたしが甘ったるい声を出さなくちゃならないのよっ!」
バチーン、コチ、コチ……十六時四十一分。
放課後、空き教室。
初口、紬ナオ。
「おい、彩瀬名。僕がいる前でツンデレキャラのリカを弄るのは止めろ。僕だけが一方的に被害を被るじゃないか……」
「くすっ、それを知っているからこそ、弄っているんじゃない」
「お前はもっと自分の気持ちを包み隠せっ!」
「そんなの私らしくないじゃない。それに、どうせこれで最後なのだから」
「そう、よね…………まぁ、なんだかんだあったけど、あんたといた時間は悪く無かったわ」
「リカ、行くのか……?」
「ええ、さすがに……無理っぽいから………。ナオ」
「うん?」
「ちゃんと……あたし達の分まで、生きて、よね。途中で、投げだしたら……承知しないんだからっ」
「あぁ、分かってる」
「最後だから言っておくけど、別に、あんたの事なんて何とも思って無かったんだからっ! 勘違い、しないでよねっ!」
「それは僕の台詞だっ」
「ふんっだ……じゃあね、ナオ」
「うん…………」
「緋内さん、先に行って待っててちょうだい。すぐに行くから…………さてと、あの様子じゃ本当にもう持ちそうも無いから、手短にしておくわ。とりあえず、緋内さんの事はまかせておきなさい。独りにはしないから」
「彩瀬名って、言い方は冷たいけど、一番友達思いだったんじゃないかって思うよ」
「さぁ、どうでしょうね。私自身、独りが寂しいから、彼女を利用しているだけ、なのかもしれないわよ?」
「その言い方、彩瀬名らしいな」
「世界はおかしな事になってしまったけれど、それでも、緋内さんと同じで、あなた達と過ごした時間はそれなりに楽しかったわ。もっと早く仲良くなっていれば良かった、と思う程にね」
「……そっか」
「名残惜しいのが素直な気持ちだけれど、私もかなり限界が近いから、もう行くわ」
「送ろうか?」
「いいえ、ドアの所で六条さんが待っているから、あなたはここにいて。ついて来られると余計名残惜しい気持ちが増しちゃうもの」
「分かったよ…………」
「それじゃぁ、これで。もしも転生出来たら、また遊びましょう」
「……うん」
「さようなら」
次回予告 スクイ
「もし殺める事がスクイとなる時、あなたは親しい人でも、躊躇い無く殺める事が出来ます多雨? と言う話では無いけれど、未定」
「それでは次回も、崩壊した世界の放課後に会いましょう」