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きみは一輪の花のように  作者: 名上 叶人
4/5

第4話 ~ エルフの男 ~

やっと山場に到着です。


「これの持ち主を知らないか?どこにいるか知っていたら、教えてほしい」


そういってエルフの男が差し出したのは、そのこぶし。にぎっていた手を上に向けて開くと、そのてのひらにはあの祖母の指輪が乗っていた。

男は驚いて声をあげた。


「どうしてあんたがそれを!?」


これを持っていた黒い猫はどこに行ったのか。


男は慌てて湖から上がりエルフの横に立った。


んな~ん


慌てる男の足元で猫の鳴き声がした。男が声のした方を見ると、エルフの足元にいるあの黒い猫と目が合った。

どうやら無事だったらしい。ひとりほっとする男をよそに、黒い猫は濡れてしまった自らの毛皮を必死になってなめている。

男は黒い猫を指差しながらエルフに尋ねた。


「そいつ、あんたのペットなのか?」


「いいや、部下だよ。ちなみに人の姿にもなれる」


その証拠しょうこに、エルフがぱちんと指を鳴らすと、一瞬で黒い猫は18歳くらいの青年の姿になった。黒い猫は一度きれいなおじぎをしてから、また猫の姿に戻った。

感心した男が拍手をすると、エルフは得意になったようだ。


「まあ、これくらい大したことない」


男が感心したのは黒い猫に対してであって、エルフに対して感心したのではないが、そこは言わぬが花だろう。

男がそんなことを思っていると知らないエルフは、こほんと咳払いをして話題を元に戻した。


「わたしは部下に「この指輪の持ち主を連れて来てほしい」と伝えた。しかし部下である彼は、指輪の持ち主ではなく、この指輪だけをわたしのところに持って来たんだ。君はこの指輪の持ち主が今どこにいるか知らないか?」


会ったこともないこのエルフが、男に一体何の用があるというのだろうか。

男は不思議に思いつつも、このエルフが悪い妖精には見えなかったので、エルフの質問に正直に答えた。


「この指輪の持ち主はぼくだよ」


「そんなはずはない。これはある女性が持っていたはずだ」


「たしかにその指輪の前の持ち主は女性だよ。以前はぼくの祖母のものだったんだけど、祖母は昨年亡くなって、今はぼくが持ち主ってわけ」


「・・・彼女の名前は?」


「祖母の名前は「立石 洋子」」


男がそう言うと、エルフの顔がくしゃりとゆがんだ。


「・・・ヨーコは、昨年死んだのか」


エルフの目から、一粒の涙がこぼれ落ちた。男が気づいたときにはもう、エルフの涙が滝のようにあふれていて。エルフは胸を押さえ声をあげて泣いた。

男は慰め方などわからず、戸惑いながらエルフに尋ねていた。


「ぼくの祖母のこと、どう思ってたの?」


「・・・ヨーコは、大切な、ひと、だった。愛していたよ!

結婚して、一生、いや、死んでからだって一緒にいたいと思うくらいに!」


エルフは泣きながらそう叫んで、それなのに・・・、と言葉を詰まらせた。エルフは涙に濡れた宝石のような瞳で指輪を見つめた。


「この指輪は、わたしとヨーコをつなぐ橋だったんだ」


指輪を見つめるエルフの横顔があまりに切なくて、男は胸が痛くなった。





もっと短く終わる予定が、意外と長引いている事実・・・。

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