いきなりハプニング!
「あちゃー」
「あちゃーじゃないわよ!?今の絶対に誤解されたわよ!?」
さぁ、いまからこの国の王様の悪評を払拭するぞー!って時に、まさかの悪評をさらに広めるようなハプニング!が起こってしまったでござる。イアは俺の肩を掴んでぐわんぐわんと揺らしてくる。寝起きということもありめっちゃ頭が揺れる。
「あわわわ」
「ちょっとどうするのよこれ!?」
「どうするもなにもねぇ」
「急にあんたの言葉が信じられなくなってきたわ」
「あっははは!」
「って、何笑ってんのよ!?」
そりゃだって笑うしかないでしょ。事後だもん、どうしようもないもん。俺だってこういう時の対応方法なんて知らないよ!完全に今日は悪評を少しずつなくす予定だったのに!そういえば、この前読んでたラノベでこういう展開あったな。とかしみじみ思いながらこの先どうするか改めてかんがえだすのだった。ふと、静かになったと思ったらイアが真剣な表情でなにかブツブツと言っていた。
「どうしよう、このまま誤解した情報があの子の耳に入ったら…」
「?」
「あ、いやなんでもないわ!そ、それよりどうするの!」
「どうするって言われてもな」
ちなみにさっきのブツブツ事はしっかりと聞いていた。大事なとこだけ聞けなかったze☆みたいな鈍感なラノベ主人公がやらかすことはしない!たぶん。
「このままじゃあんたの悪評はむしろ広まっていくわよ?」
「知ってる、だから今考えてんだよ」
うーむ、この事件の後で今更いい人ぶっても遅いだろう。なら、逆方向から試すのもありだな。
「いやいい、誤解は解かなくてもいい」
「は!?どういうことよ?」
イアは俺の意見に驚くもちゃんと理由を聞いてくれる。なんかそこらへんはイアは出来てる女って感じがするな。なんか、言葉遣い的にツンデレポジションかこいつともおもったが…。どちらかというと話聞いてくれるあたり頼りがいのあるツンデレだよな。結論、ツンデレに変わりはなかった。
「つまりはな、いっそのこと悪評を広めていった方がいろいろと行動しやすいということだ」
「なんでよ」
「俺はあの日記?とりあえず黒い本を読んでわかったが、ここの歴代の愚王はいろいろとやりたい放題やってたみたいだし。それなら俺もいっそのこと、先に歴代の愚王と変わらないやつだと思ってくれた方が後々動きやすい。この立場じゃないとできないこともあるにはあるからな」
「前の王様たちの立場じゃないとできないこと、ね。それは重要なことなの?」
「重要といえば重要だな。それにこんなことになってしまった後だ。今更俺があのメイドさん達に何言っても説得力ないし、イアが言っても口封じかなにかとしか思われない。それに、俺がそうしろと命令したかもしれないと思われる。俺が愚王と変わりがないのはすぐに広まるだろう」
「そんな、たったこんなことだけで」
「仕方ないさ、過去の愚王がそれを物語ってるんだから」
俺は落ち込むイアの肩を優しく叩いてやる。あの子、とは恐らく友達か誰かのことなのだろう。仕方ないがここはイアに諦めてもらうしかない。
「それにな」
「?」
「今の俺にはイアがいるだろ?今はイアが俺のこと知ってくれてるだけで大丈夫だ」
まぁなんと女たらしのセリフなんでしょうか。自分で言ってて恥ずかしいなこれ。まるでプロポーズみたいだな。
「そ、そうね!今のあんたには私がいるものね!」
「あぁ!そのうちちゃんと誤解も解くから今は我慢してくれ」
イアはまた黙って考え込む。やがて、顔を上げてニッコリと返事をする。いや、その笑顔は反則級だな。あるよな、ツンデレキャラが素直に笑顔になった時の顔が無茶苦茶可愛い時って。ラノベ限定だけどな!
「わかったわ。でもちゃんと誤解は解きなさいよ?」
「約束する」
俺はイアにそう約束して今日をスタートさせるのだった。
★
あれから何事もなく時が進んだ。イアはやらなきゃいけないことが出来たからと言って部屋を出ていった。その後、俺はイアが出ていくタイミングを見計らっていたようにメイドさん達が来て朝御飯ができたこと告げられた。ちょうどお腹が減っていたところなので俺は椅子にかけていた学ランを着てメイドさんについて行くのだった。終始怯えっぱなしだったが。というか、昨日より怯えてたかもしれない。そんな光景に俺は朝から溜息をつくのだった。昨日の食堂(今命名!)に到着し席に着く。なんか、意外に順応している自分がいて呆れ半分尊敬半分な気持ちである。ちなみに、朝ごはんはシンプルに野菜と果物とパン?みたいなものがでてきて普通に嬉しかった。昨日のわけのわからないモンスターの肉とか魚とかでたらどうしようかと思った。ただ、パンモドキみたいなものは非常に気になったが。形的には食パンと変わりないし味も大差なかった。ただな、生きてるみたいにピクピク動いてた…。最初こそわからなかったけど触ろうとした瞬間跳ねた。それはもう高く、高く跳ね上がって天井にぶつかった後、動かなくなった。俺もうほんとに怖かった。朝から恐怖体験させるなよ!という憎悪込めた視線でシェフ姿のポルマを睨みつけるのであった。ポルマは澄まし顔で「お口に合いませんでしたか?」などと聞いてくるので殴ってやろうかとも思ったがやめといた。恐らくだが、こいつは挑発役なのだろう。なんのために挑発しているのかはわからないが王様の機嫌を損ねるのが今のこいつの役だな。昨日のこいつなら少なくともこんな挑発みたいなことはしないと思う。俺は結構な人を親の仕事の都合上見てきたからわかる。特にこういう奴の方が俺的にわかりやすい。ポルマはシェフという仕事に恐らく誇りを持っている。それ故に昨日の晩飯のような高級素材をふんだんに使った超豪華料理を作った。それが一変してこれである。おまけにあのセリフである。でも、それを恐怖なくやってのけるポルマは相当すごいやつだと思う。うん。まぁ、つまりだけど、もう広がってるな。朝の誤解話が。
「ごちそうさま」
俺はなんとか朝食を全部平らげて席を立った。すると、そそくさとメイドさん達が俺の食べ終えた皿を片付けに来る。さっきポルマを睨んだせいか皆ビクビクと怯えていた。俺がどこかに行こうとすると大臣がついてきた。そして皆がいない廊下に出ると話しかけてきた。
「これからどうなさりますか?」
大臣は俺がこれからどう動くのか知っておきたいのだろう。
「そうだな、手始めに街を見てるみるとする」
「かしこまりました」
俺がいかにも傲慢な態度で答えると大臣は恭しく頭を下げてどこかに立ち去った。愚王の演技というのもなかなかにきついものがある。だって獣耳っ娘に怯えられた目で常時見られるのは心にくるものがあるからね!?好きな人に冷めた目で見られる感じ?いや、なんか違うような喩えではあるけれどそれと一緒なんじゃないかなぁ。俺は一度王室に戻り出かける準備をする。って言っても準備するもなんて何も無いけどな。でも一応、この黒日記には鍵をかけておく。間違って誰かが見たらいけないからな。俺がある程度心の準備をして外に出ようかなと思った時ドアを叩く音が聞こえた。
「だれだ?」
「大臣です」
俺は大臣だとわかってドアを開ける。すると、大臣の他にもう一人見たことのない美少女が立っていた。まず最初に目がいったのはもちろんケモミミ、恐らくだけど猫の耳だろう。ただしその耳は垂れ曲がってる。猫の種類で耳が垂れ曲がってるのは俺が知ってる種類の中ではスコティッシュフォールドしか知らない。恐らくそれであってるだろう。尻尾も普通の猫と比べてモフモフ感がある。身長は俺より少し小さいぐらいかな?髪の色は綺麗な藍色だ。顔も綺麗に整っているし体型も女性として完璧な部類に入るんじゃないだろうか。髪型は天然なのかところどころクルッとしてる部分がある。なにより目を惹くのが彼女の目。これもまた綺麗なサファイアみたいな色の瞳だ。その瞳には恐怖がなかった。メイド服を着てるからてっきりまた怯えられるんじゃないかと思ってたけど全然違った。この子に怯えの色なんてなかった。むしろ、表情がなくて怯えてるのかどうかちょっとわからない。けど、その瞳に怯えの色はなかった。
「その子は?」
俺は隣に立ってる美少女を見て大臣に聞く。
「この者に街の案内をさせます」
「そ、そうか」
どうやら案内役の、というか恐らくお目付け役のメイドさんだろう。朝のあれが広がったせいで一人で行かしてはいけないと大臣は判断したのだろう。まぁここで追い返すことも出来るだろうけど、せっかくの案内役だし利用させてもらおう。なにせ、右も左もわからないからな。
「じゃあ、案内してもらおうか」
「かしこまりました」
ネコミミ美少女は恭しく頭をさげる。俺が外に出ていくと自然と彼女もついてきた。
「さてと、まずどこからいくか…」
「…どこかいかれたい場所があるのですか?」
おずおずとネコミミ美少女が後ろから聞いてくる。行きたい場所って言ってもな…。
「あ、そういえば名前聞いてなかったな。なんていうんだ?」
「ミウといいます」
「ミウか、じゃあミウ、街には何があるんだ?」
「市場や洋服屋等です。街の外れには神社があります」
「神社?」
「はい、巫女様がいる神社です」
「巫女…だと…」
巫女×ケモミミといえば!もちろん九尾かあるいは狐だよな!?ちょっと神社にいくのが楽しみになったな。
「そうだな、じゃあ街の市場に案内してくれ」
「かしこまりました」
ミウは無表情ながらも恭しく頭を下げて先導する。俺はその後ろを当然のようについていく、のだが。フリフリと振られてるモフモフな尻尾が目の前にある。右にー左にーと揺れている。その揺れがより一層衝動を駆り立てる。どうしよう…。むっちゃ触りたい。モフモフしたい!
「ひゃ!?」
「ん?」
いきなりミウが悲鳴を上げてこちらを見ていた。え、どゆこと?と思いながら自分の手を見てみると。がっちり掴んでいた。なにをっていうとミウの尻尾を。いかん!衝動に負けて無意識のうちにミウの尻尾に触ってしまった。こころなしかミウの表情が怒っているようにも見える。俺はしまった!と思いすぐに離そうと思いやめる。今の俺は愚王だ。ここはむしろモフるべきでは?俺の中の邪心が訴える。今お前は愚王なんだ!ここは思う存分もふっとけって!なかなかない経験だぞ!やるならいまだ!ということで俺は容赦なくモフることにした。モフモフ、むっちゃモフモフしてて気持ちいい、こういう枕とかベッドで寝たい。
「ひぁ!んぅ!」
なにやらミウがとてつもなく艶めかし声を出しているのだが。紳士の中の俺が流石にこれ以上はやばいと止めに入る。ので、俺は名残惜しいがモフモフをやめることにした。
「はぁ、はぁ…」
ミウはというと顔が真っ赤になっていた。無表情なのに顔が真っ赤でしかも艶っぽい吐息もしてて。あ、やべぇ、やっちまった。絶対にモフっちゃいけない部分の一つだったよこれ。しばらくしてミウが平静を取り戻すと何事も無かったように歩き出す。どうしよう、無茶苦茶気まずいんだが。こんなことなら愚王の演技なんてするんじゃなかった!その後もミウは変わらず無表情で街を案内していたが俺の心は気まずさでいっぱいだった。
☆
「はぁ〜」
俺は一通りミウに街を案内してもらった後、おもむろに王室に戻ってベッドにダイブしていた。
「疲れたぁ」
ずっとあれからあの雰囲気のまま街を案内されたから精神的にきついものがあった。時々俺を見る目が怖かったけど…。でもまぁ、とりあえずこの国の大体の場所はわかった。ただしどこと共通しているのは、やはり王様は恐れられる存在だということだ。俺が行くだけでその場が凍りつく。いままで明るかった市場が一瞬にして冷える。みんなが怯えだす。俺は改めて決心した。さっさとこの状況を変えようと。ただ、一つ不思議に思ったところがある。神社だ。楽しみにしていたのに結界が貼ってあるやらなんやら近づくことすらできなかった。けれど、一ついい情報も手に入れた。この世界は魔法みたいなものがあるということ。ただ、それが俺に使えるかどうかまではまだわからないが。もしかしたら、なにかの練習をすれば使えるようになるかもしれないし無理かもしれない。それはまだわからないが。とりあえず不思議な力が存在するということ。そして、人族はそれが使えないということ。代わりに武器は所持してるみたいだが。獣人族は武器が扱える者は少ないがそのぶんみんな基礎体力が人族よりもはるかに高い。だから、戦争で獣人族が負けることはないんじゃないかと思った。実際、それまで人族から何度も戦争を挑まれているがこの負け以外は一度も負けてない。恐らくこの時に何かがあったんだ。その時の話を詳しく知りたい気もするが、今は俺がこの国の味方だということを示すのが先だ。だがしかし、現状は最悪。朝のイアとの誤解もあるしミウのあれも恐らくだけど広まってるだろう。どうしたものか…。そう考え事をしながら俺は頭を冷やそうと思って廊下を歩いてた。んだが、いつの間に知らない所に来てしまっていた。周りは暗く薄気味悪い雰囲気を漂わしていた。俺はすぐに引き返そうと思ったが途中で一つのドアを見つけた。こんなところになんだろう?俺は気になってそのドアを開けることにした。俺はてっきりなにかの倉庫部屋かと思って開けたのだが、そこには綺麗な銀髪の狼のケモミミを持った美少女がいた。
こちらも無茶苦茶遅れてすみません!全く持ってプロットなしで書いてた俺得なオレケモでしたが、今回は三人目のヒロインの名前とキャラ設定に苦戦してました(汗
あと今後どうゆう展開にするかは一応決まっていたんですがそこまでの繋げ方が難しくて苦戦中です!頑張って書いていきます!こちらは金曜日の午後六時に投稿していこうと思います!読者の皆様これからもよろしくおねがいします!