シンデレラ、見つかりました。
中学校から家に帰ると、母親が誰かと話していた。
しかも男の人。
これは再婚!?
再婚あるのか!
ーーー母子家庭じゃなくなるのか。
・・・・・・・・母の性格を考えると、そこは微妙だなぁ・・・・・。
邪魔はしない・・・・・。そおっと、私は家の中に入る。
「葵、ちょっとこっちに来なさい。」
お母さん!?
ちょっと、空気読んで・・・・!!お邪魔しません、どうぞごゆっくり、おふたりで・・・・・
だが、手招きされてしまっては仕方がない。
見知らぬ男性もこちらを見ているし・・・・こんにちは。
軽く会釈をして、母の隣に座る。男の人とは正面に座る形だ。
居心地悪い・・・・なんで呼んだの、お母さん・・・・。
「葵、これから大切なお話があるの、驚かずに聞いてほしい。」
・・・・・・これは、結婚?
いや、再婚?再婚なの!?
ごーん、ごーん、と私の頭の中でウエディングベルが鳴る。
お母さんのウエディングドレス姿・・・・・おおぅ、歳をとると似合わないドレス多そう・・・・・。
「葵?」
痛い、腕をつねらないで!痛い!地味に痛いよ!お母さん!
笑顔の表情には、「何か、失礼なこと考えてない?」とある。
いいえっ!そんな事考えておりません、流石母親・・・・
私とお母さんが、目と目で会話していると、お母さんの結婚相手(仮)がごほん、と咳払いした。
「では、私は、こういうものと申します。」
名刺を渡された。しげしげと眺めると・・・・
弁護士、さん?
すごい、すごいよ、母さん!
こんな優良物件どこで見つけてきたの!?職場は・・・接点なさそうなのに!
おお、すごい・・・・弁護士という印籠に私はひれ伏した。
ははー、母を末長くよろしくお願い致します。
もう、全面降伏だ。喜んで差し出します、いえ、差し上げます。
このような母でよろしいのでしたら・・・・・・
「葵、落ち着いて聞いてほしいの。」
母が神妙な顔で切り出した。
あっ、顔に出ていたらしい・・・・つい興奮して、鼻息荒くなっていたらしい。
落ち着こう・・・・深呼吸、深呼吸。
うん。大丈夫。
母は頷くと、何度か口を開きかけては閉じる・・・・を繰り返した。
そんなに言いづらい事なの?
だいたい見当はついているんだけど・・・・。ちらっと弁護士を見る。
「・・・・・・葵、実はね・・・・あなたは、うちの子じゃないの。」
え。
静寂。時計の針の音が聞こえる。
嘘、
え、これは、本当?
母と弁護士の間を行き来する。
冗談を言っている顔ではない。ふたりとも大真面目だ。
思考が高速で動き出す。
え、やっぱり?いや、気づいてた?
なんて言うべき?
そう考えてみれば、私とお母さんは似ていない。
むしろ似てるって言われた事がないような・・・・でもそんな事・・・親戚付き合いも皆無だったし、むしろ親戚といえば・・・・あれ?
「・・・・・・・・」
結局、何も言う事が出来ない。
沈黙の三つ巴。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
・・・・・・?
やっと、自分で口に出した言葉は
「えっと、冗談なの?」
「冗談じゃない。」
即答だった。
こんなところで、冗談言わないでしょ、と顔が語っている。
分かってるよ、でもそれしか言う事ないもの、どうゆう事なの?
「説明させて頂きます」
今まで空気だった弁護士が、口を開いた。空気読める男!!
「貴女は、三原財閥のご令嬢です」
二度目の爆弾が投下された。
「・・・・・・・・・・・」
えっーーーと。
反応出来ない・・・・・
この雰囲気は、なに・・・・・・しかも、今度は裏切り者の予感。
横目でチラリと、裏切り者(候補)をみる。
もしかして知ってた?
おかーさーん。
ここで、頼れるものは家族。妹弟はいない。母だけだ。
おかーさーん。
「・・・・・だから、うちの子じゃないって言ったでしょ」
スパッと切られた。切れ味良すぎて、切られた事に気づけないよ・・・・。
じゃあ、私はどこの子?
私は救いを求めて、正面を向く。
弁護士は、その能面みたいな顔で言った。
「その通りです。」
・・・・・・・・・・・もう何も期待しない。
もう何も説明に、なってないから!