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キノコの娘大賞を狙っていた三作品。

雪降る森で

雪が降っていた。だいたい昨日からずっとずっと降っていた。ずっとずっと降っていたから雪は大人の膝の辺りまで積もっている。


雪は森に降っていた。これくらいの時期になるとこの土地では毎年雪が降る。そしてこの雪は初雪…ではなくおよそ8回目の雪だった。


そんな雪降る森を目指して、平原を男が歩いていた。男は白く輝く雪の中、緑色の分厚い上着を着て茶色のこれまた分厚いズボンを履いていた。パッと見たら木のような色合いだ。そして木の様な格好の男は、背中に大きな籠を背負(せお)っていた。その籠はまだ空っぽだ。


男はやっとのこと森の前まで着いた。この森は深く険しいことで有名だったがそこまで深く入る用はない。用があるのは、ほんの少し森に入った辺りにあるキノコだった。この男、背負ってきた籠にキノコをたっぷり入れる算段のようだ。


男は森に入ろうとした。


しかし転んだ。男は雪の大地に顔から突っ込んだ。


「ぶはっ!」


男は顔を雪から上げた。雪はとても冷たかった。身体を起こそうにも、この深い雪ではすぐに起き上がれない。


するとどこからか声がした。


「引っかかったね。犯罪者くん。」


「だれだ!?」


男は咄嗟(とっさ)に声を上げた。


「私か?私は…」


どこからか聞こえる声は一人でに悩み出した。そして、うーんえーと…と悩んだ挙句答えを出した。


「私は、キノコの守り神だ。うん。そういうことにしておこう。」


男は、(自称)キノコの守り神が悩んでいる間に声の出処を探っていた。そしてすぐにそれが自分が転んだ雪の辺りだと分かった。


「おい。キノコのなんだか知らねぇが俺は犯罪者じゃねぇし、てめぇに罠を仕掛けられる(いわ)れもねぇ。とっととその雪の中から出てこい!」


「雪の中?それは違うぞ。」


声の主、(自称)キノコの守り神は男の足元でそう言った。男はもう居場所が分かっていたので雪を掘って声の主を出してみることにした。


「やっやめろ!そう!残念だったな!そこはただレコーダーが埋まっているだけで!」


掘ってでてきたのはレコーダーなどではなくグレーの瞳の女だった。同じグレーの前髪が左目を隠している。その髪は灰褐色でロシア風の帽子を被っていた。


「…」


灰色の瞳が男を見つめる。


「…」


男はその瞳をじっと見ていた。


「ばれてしまったようだ。そう私は見ての通りキノコの()(たいらの) 和歌恵(わかえ)だ。」


女改めキノコの娘、平 和歌恵はそう言った。


「いや分かんねぇ。」


キノコの娘?ノ○ノコじゃないの?ク○ボーよりは強そうな名前だ。と、男は思った。失礼極まりない奴だ。


「分からないのか?いつも私のキノコを採っているくせに。」


もそっと上半身を起こして出てきた帽子と同じ灰褐色のコートの雪を払いながら和歌恵は言った。


「え?しめじのことか?」


確かにこの前に森に来た時たくさんキノコが生えていたのでそれを少しばかし頂戴した。そのキノコはしめじだと思っていたのだが和歌恵曰くそうではないらしい。


「しめじ?とても失礼だな。犯罪者くんが採っているキノコは『平茸(ひらたけ)』だ。そして私はそのキノコの娘、平 和歌恵。」


そう言いながら和歌恵はもそもそと雪から足を出す。雪から出した足は灰色で白い縦縞のズボンを履いていた。


「ふむ。わかった。頭痛い娘、平 和歌恵さんね。」


キノコの精霊みたいなものだと男は認識できなかった。和歌恵は地面に座った状態のまま話し出した。


「では何故(なぜ)、君が犯罪者くんと呼ばれているか話してあげよう。君は私の森のキノコを35株も()っただろう?()ったのではなく()った。」


「採取の『(さい)』の字ではく窃盗の『(とう)』の字と、言いたいのね。」


男は「頭痛い娘」と言われた事を怒るかと思い、そしてその事を期待していたのに流されて悲しくなった。しかし頭の痛い娘は、こういうものだと思いそのままにした。


「その通り。そして何より犯罪者くんは、平茸をしめじとして認識していた…」


和歌恵の口が少しつんとした。


「それは悪う御座いました。すみません。」


男は正直に謝った。


「君は平茸の素晴らしさを何も知っていない。」


和歌恵は声を張って言う。


「まぁ美味かったのは確かだ。鍋の具として人気だった。」


男はその味が忘れられずまたこの森に来たのは言うまでもないし言ったら面倒臭い事になりそうなので言わなかった。


「煮るだけではない。平茸は煮て良し、揚げて良し、炒めて良しの素晴らしいキノコなんだよ!ちょっとお高いけど、その美味たる風味はまさに平茸。よし。今から平茸についての授業を開始しよう。」


すっと和歌恵は立ち上がり森の中へ男を手招きした。


「う…分かりました。」


男は立場上断るにもいかず、授業を受けることにした。もしかしたらまた平茸が食べられるかもしれないと思いを馳せて。

いかがだったでしょうか?少しでも楽しんでいただけたら幸いで御座います。


キーワードにも書いてあります通り、こちらの作品は「二次創作」。私がキノコの娘大賞を狙う私の三本の矢の一本です。つまり他に二本あります。さて、当たるかどうかは、審査員のみぞ知ります。


自信はありません。しかしやるだけのことはやりました。それでも自信がないのは、他にもっと素晴らしいものが有るはずだと思っているからです。正解は全く見えません。それが物書きの魅力の一つですよね。書いていて楽しいです。


誤字脱字はお知らせください。


それでは、みなさん良い一読を。

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