一年生トーナメント 決着
朱里・悠那VS高坂・塚本の戦いが始まろうとしているのをチラッと見ながら悠真は次の手を考えていた。
「……仲間が気になるか? 梓と大我は強い、零堂は……不思議な奴だが強い。少なくともCクラスに負けるような柔じゃない」
「………だが、絆ならこちらが上だろう」
「…絆……だと?」
悠真がそんな事を言うと思わなかったのだろう、目が泳いでいた。悠真が言った事はあながち嘘ではない。たが、それが隙を生んだ。
「…ル・シェル・シュレッド」
赤い魔法陣が現れ、鎌鼬の原理で炎の鎌鼬が東藤を襲う。隙を突かれた東藤は攻撃を受けてしまった。服が切れ、同時に皮膚が焼かれる。軽い火傷状態になった。
「ぐっ……絆、というのは嘘か……俺とした事が…」
(………まぁ、嘘という事にしておこう)
「……さぁ、どうする? 高坂と塚本は組むみたいだ。それで、お前はどうする?」
「……ぐっ」
兄貴はクソリーダーと戦ってる。だからと言って柊と前園には頼みにくい。一人でこいつを倒せる…のか?
「……つまらない。だから終わらせるよ………おい、自分で自分を攻撃しろ…」
「なっ……うっ…あ、兄貴ぃ」
あの時と同じだ。
俺のせいでまた…また負ける。あんなに頑張ったのに……嫌だ……負けるのは嫌だ…。
「い、いや…だ……お、れは……」
「…ほぅ、抵抗するか。少しは成長したようだな……でも、僕の命令には逆らえない……お前が尊敬する神崎を攻撃しろ…」
「あ……や、やめ……ぐっ…」
体が勝手に兄貴の方に向く。兄貴は東藤の戦いに夢中で気付いてない。柊や前園も同じだ……このままじゃ兄貴を俺が…。
「ほら、早くしろ」
「く……ディ…リ、リーザス……ル、フレイ、ドぉ!!」
月宵の力によって強制的に詠唱を唱えた皐月は動けないまま鋭い氷の塊が造られるのを見守る事しか出来なかった。そして、
「…フッ……さぁ、発射だ」
「うっ……あ、兄貴ぃ……避けて下さい!!」
皐月の叫び声も虚しく、造られた氷の塊は悠真に向かって飛んで行った。
戦っている朱里達も思わず動きを止めた。それは敵も同じだった。ただ、信じられないと言った様子で二人を見ている。
ただ、倒れている東藤に何が起こったのか困惑している。当事者である皐月を除いては。
「………何をした」
「…ふぅ。別に何もしてねーよ………ただ気合で踏ん張っただけだ」
本当にそうだった。
兄貴に向けて魔法を撃とうとした時、もうダメだと思った。そしたら今までの修行が頭に浮かんだ。最後の最後で兄貴から東藤へ対象を移したんだ。
「そんな………負けた…の?」
「…………そうだな。少し零堂に頼り過ぎたみたいだ」
「えっ………勝った?」
「うん、皐月君がやってくれたんだよ」
何より一番嬉しいのは皐月だろう。
前回戦って負けた相手に勝ったのだから。
皐月は上を見上げていた。涙を堪えてるのか、表情は見えない。
『今、決着がつきました! 勝者はなんと、Cクラスです。Bクラスに勝利しました』
会場中に歓声が湧く中、朱里と悠那は感情が高まって泣いていた。
「……兄貴」
「…皐月………よくやった」
「…へへっ」
子供のように無邪気に微笑む皐月に釣られて悠真も微笑んだ。




