黒曜 蒼真
「おぉ、神崎。どうかしたのか?」
秋葉はそう言ってかっこよく微笑んだ。ピンク色の髪を後ろで留めている。背は悠真より少し小さい程だ。
「………話がある………俺の本当の名は柊 悠真だ」
周りに聞こえないように小さく話す。と、秋葉は驚いた表情をした。それは当たり前だ。柊家といえば黒曜家のライバルのような存在だ。
「……何の話かは分からないけど、場所を変えた方が良さそうね」
その提案に乗り、場所を移動する。着いた場所は職員室だった。職員室には二、三人しか居なく悠真にとっては話やすい。
「それで、柊家の者が私達にどんな用なの?」
「…話す前に一つ言っておくが俺はもう柊家の者じゃない。ある事情によって俺は柊家を出た」
あえて柊家を追い出されたとは言わないでおく。理由はまだ完全に信用していないからだ。
「…なるほど。で、神崎君は私を呼び出してまでどんな用事なのかしら?」
「…昔、聞いた事がある。黒曜家には三人の子供がいると。一人はあんただ…そして後の二人はどちらもAクラスに居る、違うか?」
ようやく本題に入る。昔、悠真がまだ柊家に居た頃に何度か話を聞いた事があった。魔法使いはその殆どが魔法使いとしてどのレベルかが分かる暁学園へ入学する。だが名家は必ず入学させる。そこでAクラスになれば親に認められ、Bクラスになれば切り捨てられる。
悠真は何がしたいのかと言うとAクラスであるどちらかと戦いたいと思っていたのだ。勿論、勝てばAクラス行きだが負ければ負けた恥ずかしさとA、Bクラスからの厳しい目が待っている。
「その通り、私は黒曜家の長女で他にも妹と弟が居る。二人供Aクラスよ……でも今のままじゃ二人には勝てないわ…精霊王と契約していても、ね」
「………」
悠真は黙り込んだ。これだけハッキリ勝てないと言われると怒りが込み上げてくる。
「…姉さん」
大人しいそんな声が聞こえる。見ると黒い短髪の生徒が立っていた。この学園の生徒だろうが、決定的に違っている物があった。それは制服だ。黒髪の生徒は全体的に白い制服を着ていた。
「あら、蒼真。授業が始まるわよ」
「…いや。Aクラスの授業はまだ無い。普通のクラスとは時間割りが違うんだ」
悠真はAクラスという言葉に反応した。まさかこんなに早く出会う事になるとは思っていなく、悠真は微笑む。
「お前だな、黒曜の当主」
そう悠真が言うと黒髪の生徒は悠真を睨んだ。早くも出会った二人、波乱な予感が漂っていた。