話
重々しい空気。それはここに居る誰もが感じとっていた。だが、この空気はある二人から発せられている。無言で見つめ会う悠真と源十郎だ。
「…当主様。そろそろご用件を」
「そうだったな………………悠真、お前も知っていると思うがここへ呼んだのは兄である悠人の事だ」
悠人の名前が出ると悠真も少なからず反応する。
憎しみがこもった目で源十郎を睨む。
「……悠人は……悠人はこの柊を裏切って敵になったの。それでね、その…」
そこまで言って悠那は言葉を止める。
言いずらいのか、チラチラと何か言いたそうに悠真を見る。
「私が言おう。率直に言う……悠真、出来れば柊に戻ってきて貰いたい」
「なっ!」
柊当主である源十郎の理不尽さに朱里は言い返そうとするが悠真に止められた。
「………」
「…勿論、私がした事を忘れた訳ではない。
だが柊は十傑、今狙われれば簡単に落ちてしまう」
「悠人はね、柊を出る時に弟子や当主様を傷付けて行ったの。だから今は人手が少なくて…」
悠那の言う事も分かるがそれでも理不尽さはある。
たが最終的に決めるのは悠真なのだ。
「…俺は柊が潰れようがどうでもいい」
「悠真。やはり私を、柊を恨んでいるのか」
「恨んではない。家を追い出されたのは俺に力が無かったからだ」
悠真の言葉に源十郎は一瞬驚くが静かに笑う。
悠真らしい言葉だと朱里は思った。
「……話は終わりですね?
では私はご友人の元へお連れしておきますので。
それじゃあ、二人とも行こうか」
愁生の後に続いて悠真と朱里も立ち上がる。
「…そうじゃ、悠真。悠那から聞いたが学園でトーナメントに出るそうだな」
「お、お祖父様!?」
トーナメントの事はどうやら悠那が喋ったようだ。
現に慌てている。
「それが何か?」
「私も行って良いかな?」
源十郎の言葉に戦慄が走る。
一番驚いているのは悠那だ。まさか行きたいと言うなど思わない。
「凄いよ悠真!
もうOKしちゃおうよ」
「………勝手にすればいい」
それだけ言うとスタスタと出て行ってしまった。
残された朱里も一礼してから出て行く。
「ハハッ。当主もお人が悪い」
「…何の事だ?………それより愁生、分かっていると思うがくれぐれも…頼むぞ」
「……はい。それでは私はこれで失礼致します。
悠那、また後で」
「あ……はい!!」
悠那の笑顔に見送られ愁生は部屋を出る。
静まりかえった廊下はまるで愁生の心を表しているようだった。
「……っと、怖い顔してたら悠真にバレてしまう。
さてと……遅くならない内に戻るか」
悠真の仲間である朱里達が部屋で騒いでいる事を想像し、微笑みながら愁生は廊下を歩くのだった。




