当主
さっきの本邸と違い、豪華な造りになっている。一度敷地内へ足を踏み入れると圧巻を受ける、それ程に魔力感知能力のない朱里でも膨大な魔力を感じるのだ。
「す、凄い………これが…当主の魔力」
「やはり流石と言う感じだな。
悠那も頑張って欲しいな」
そう言う愁生の瞳は真っ直ぐ本邸へ向けられていた。だが、まるで我が子を見守るような優しそうな瞳だ。
「………」
一方で悠真は本邸を無言で見つめていた。殺気は感じないが今悠真はどんな事を思って見つめているのかは本人しか分からない。
「さぁ、そろそろ行こう」
「はい!」
「………」
朱里は一度深呼吸をしてから愁生の後に続く。愁生がドアを開けるとやはり畳の匂いが鼻につく。そして目の前に着物を着た50代ぐらいの女性がお辞儀をする。
「お待ちしておりました。愁生様、悠真さん」
「…おい、何度も言っているが悠真だって同じ柊の人間だ。同じように振る舞うのがお前の仕事じゃないのか!」
悠真の為に怒る愁生は朱里の目にはカッコ良く映る。怒られた女性は深々とお辞儀をした後、訂正して悠真も様付けで呼ばれた。
そして今は女性を先頭に当主の部屋へと向かっていた。
「それにしても愁生さんが怒るなんて意外でした」
「そうか? 悠真が幼い頃から一緒に居たからな。
……掟を守り過ぎる柊は苦手なんだ」
愁生は苦笑いだ。
だが悠真がどれだけ愛されているのかが分かった。
「……当主様のお部屋はこちらです。
私は中へ入れませんので、何かご用があればお呼び下さい」
要件だけ告げるとすぐに行ってしまった。
だが悠真も愁生も気にする様子はない。
「悠真、それに朱里ちゃんも。準備は良いか?
開けるぞ」
「…はい」
「ははははい!」
サーーーッ
襖を開けると、正座で座る悠那と同じく正座で座る威厳のある老人が居た。
「あ朱里ちゃん! あっ」
思わず声を出してしまった悠那だが慌てて塞いだ。
座布団はちゃんと3つ用意されている。
「……ご苦労だったな、愁生」
「いいえ。これぐらい簡単な事ですから」
声を聞いてもやはり凄い。声だけで人を支配する事も出来そうだ。
「そして悠真、とそちらは前園の娘か」
「………」
「へっ? は、はい」
(うわっ。もしかして私、場違いなんじゃ)
「揃ったな。
始めるとしようか」
色々な思いが交差する中、当主に呼ばれた理由が判明する。




