昔話
長い廊下をひたすら進んで勇里は一つの部屋の前で立ち止まる。
「応接間はここです。どうぞ」
慣れた手付きで襖を開けると畳みの匂いが鼻を刺激する。中は旅館のように質素だが使われている家具はどれも高級そうだ。 例えば当然のように置かれている机は木の匂いが強く、艶やかだ。こういった事から柊の家柄が分かってくる。
「わぁ!良い部屋ね」
「何せ応接間ですから、眺めにはこだわっているみたいですよ」
勇里の解説も虚しく誰一人として聞いていない。
「……ね、ねぇ悠真。そろそろ悠真の事を聞いて良いかな?」
一定の距離を置き悠真の隣に正座で座る朱里。
話題を聞き付けた朝日達は詰め寄る。
「………お前に話す必要があるのか?」
はっきりと伝わる拒絶。
だが朱里は諦めない。
「……お願い! せめて悠真と柊の関係だけでも良いから教えてっ」
「朱里がこんな頼んでんだから話してやれよ」
「………ハァ。必要な所だけだぞ」
こうして悠真の過去の話が始まった。
「……俺は確かに柊で産まれた。だが柊にとって俺は異質だったんだ」
「い、異質?」
「……柊は魔法の名家、十傑の一つだ。悠那とは双子だが悠那は魔力を持ち、俺は極僅な魔力しか持たなかった」
柊は昔からの風習が強いと聞いていた。
だが悠真から聞かされた話は信じられないような本当の出来事だった。
「そ、それ本当の話し?」
「………あぁ」
柊の家に産まれた悠真だったが極僅な魔力しか持たず、隔離されて育った。だが悠真が十歳の頃に追い出されてしまったという話しだった。
「……悠真様」
タッ、タッ、タッ、タッ
誰かの足音が聞こえる。
何か慌ててるようだ。足音はだんだんと近づいてくる。
「?」
タン
足音が部屋の前で止まった。
固唾を呑んで襖を見守る中、襖は大きく左右に開いた。




