本邸
橋を渡り家門をくぐると左右に少し古い建物があり、小学生から高校生ぐらいの弟子達が大人に指示を受けているのが見える。
敷地は想像していたより広く、本邸の方はまだ見えない。真っ直ぐと道が続いている。
「おーおー。家と比べ物にならないぐらい広いな!さすがは柊」
「朝日。いちいち驚いていたら持ちませんよ」
「あはは。取り合えず本邸に急ごっか……」
悠那は周りを警戒しながら真っ直ぐ続く道を指差した。悠那を先頭にしばらく歩くと階段が見える。だがその階段は見上げても上が見えない程ある。
「お、おいこれ……何段あるんだ?」
「え? 600段だけど」
顔色一つ変えずに返事を返す悠那だが慣れていない朱里達にとっては最悪だ。
「何だよその数!ここは寺かっ!」
「皐月君、うるさいよ。本邸はここ昇ればすぐだから頑張ろっ」
その通り。
本邸に行くにはこの階段を昇るしかないのだ。
朱里達はブツブツと文句を言いながらも昇り始める。
~~1時間後~~
朱里達は死ぬ思いで昇りきった。
体に染み付く汗が気持ち悪いが悠那がちょんちょんと後ろを指差すので振り替えってみる。
「…うわああぁ」
恐らくこの地区で一番高いであろう本邸から見る景色は凄かった。さっき自分達が通った道が小さく見える。
「ご苦労様。
ちょっと私はお祖父様の所に行って来るからユーリ、皆の案内お願い」
「はい。皆様、こちらです」
階段からすぐ目の前に古そうな広い屋敷があった。だがどうやらここに悠那の言う当主は居ないらしい。勇里にこの場を任せると屋敷の中へ入らずどこかへ行ってしまった。
「お邪魔します」
「あら、お客様ですか」
ドアを開けると人が居た。
着物が似合う年配の女性だ。
「サクノさん。こちら、悠那様のお友達の方達です。悠那様から案内を頼まれました」
少し緊張しているのか表情が固い。それは悠真も同じだった。もしかすると怒らせると怖い人なのかもしれない。
「あら…悠那様がお戻りになっているのね…………それにあなたまで」
「……お久しぶりです」
サクノの視線の先には悠真が。
目が合った悠真はお辞儀をするがサクノは冷たい瞳で悠真を見る。
「…お久しぶりです……悠真さん」
(えっ?)
朱里はふと、サクノの言葉に疑問を抱いた。
だが今はとてもじゃないが口に出せるような雰囲気ではない。重い空気が漂う。
「…で、では失礼します。
皆様はこちらです」
気を利かせた勇里は慌ただしくサクノに告げると再び足を進めた。
「…―――――――――」
「!!」
一番後ろを歩いていた朱里が置いていかれないように付いて行こうとサクノとすれ違った時だった。一人言のように呟いたサクノの言葉は少なからず悠真の悪口だった。
“…どうして今更、落ちこぼれが”
確かにそう聞き取れた。
サクノは朱里が聞こえてたとは知らず、真っ暗な廊下を歩いて行った。
「……どうした」
「…………何でもないよっ」
立ち止まる朱里に足を止めて声を掛ける悠真。
心配させまいと朱里は一度深呼吸をすると振り返り笑顔で答えた。




