可愛い少年
「……俺は」
悠真が決断を鈍る理由が分かる悠那だがそれでも当主との約束を守らなければいけない。
それに悠真も逃げていては駄目だ。
「悠真、無理にとは言わないよ」
「……いや。行く」
意外にもすんなり決断した悠真に少しばかり驚いた悠那だったがそれが嬉しかった。
学園から中央都市に向かうバスに乗り込む。
その間、久しぶりの外という事で朝日が子供のようにはしゃぎ、それを氷乃がたしなめると言った行動を繰り返していた。
「でも悠那、いきなり押し掛けちゃって大丈夫?」
バスの一番後ろに座る悠那と朱里ははしゃぐ朝日を笑いながら話をしていた。
「それは大丈夫。家は弟子を取っててね、よく連れてきた友達も混じってたから!」
悠那の言葉にどんな家なのか想像してしまう。
だが上手く想像出来ない。テレビではよく柊家の事を聞くが考えてみれば家を知らない。
「そっかー……ねぇ、悠真は大丈夫かな」
前の席に座る悠真に聞こえないように悠那の耳元で話す。
「…うん、どうだろ」
悠真は何か考えているのか窓の外を見ていた。隣の席に座る皐月は爆睡だ。
不安を抱えたままバスを降りた悠那達はそのまま徒歩で商店街を抜ける。
商店街にはたくさんの店があり、食欲をそそる匂いが至る方向からする。
「おっ、悠那ちゃん! お友達も一緒かい」
「悠那ちゃん。新しい果物あるよ」
「新鮮な魚を旦那に食べさせてやりな悠那」
通る度に悠那に声を掛ける店主達。それを無視せず一人一人にちゃんと返事をする。
悠那がどれぐらい好かれているのかが分かる。
商店街を抜け、市街地へと出る。
高い塀に白い壁が延々と続く。
「んー。それにしてもあれだね、ここってお金持ちが住む家?」
「違うよー。ここはもう柊の敷地内だよ」
悠真と悠那以外は愕然とする。
いくら名家の柊とは言え、少なくとも学園一つ分程の大きさがある。
「やっぱすげーな。ん?」
少し歩くと前方に人影が見えた。
近づくにつれて容姿が分かって来る。
サラサラそうな茶髪に白い肌。顔立ちは幼く小学生のようだ。見慣れない制服を着てキョロキョロと挙動不審な動きをしている。
「…あっ、悠那様っ!」
そう言った少年は嬉しそうに微笑んで駆け寄ると今度はうるうるとした瞳で悠那を見据える。
「げっ! ユーリ」
思わず顔を歪ませる悠那を見て少年はますます泣きそうな表情をする。
「うぅ……酷いですよ悠那様! デパートへお出掛けの時だって僕を置いてお一人で向かわれて。どうせ僕は役立たずですよ」
誰も口に出していない事を自分で言って自分でダメージを受けている。慌てる朱里とは対称的に朝日は吹き出しそうだ。
「こちらはどなたです?」
「あっ、すいません!
ほらユーリったら自己紹介」
「ふへ?
はっ、はい! 僕は楠 勇里と申します」
さっきまで涙を流していた勇里は涙を吹き、ビシッと自己紹介をする。




