拒絶
「こんな可愛い子が妖怪…」
「いえ、紫焔はどちらかと言うと神様ですね。朱里さんはどんな神様だと思います?」
驚く朱里を見ながら微笑む時雨は問題を出す。悩んでいるのか、うーん うーんとうねっている。
「正解は竜でした」
「えええ!!?」
「竜と言ってもまだ子供ですが。人間に化ける事は出来ますよ」
朱里は紫焔をまじまじと観察する。竜と言われると確かに面影はある。だが生き物の姿から人間になるのは信じられない。
「朱里さん、悠真を追いかけなくて良いのですか?」
「ハッ!! 追いかけます。ありがとうございましたー」
きちんとお辞儀をすると慌ただしく飛び出して行った。ポツンと残された時雨は一人、フッと微笑んだ。
――――――――…
「右 右 左 右 ここだぁ!!」
朱里は走っていた。広い龍王の家で朱里は何故か迷わずに一つの部屋の前に居た。
「……ここ、悠真の部屋なのかな? 何で迷わないで行けたんだろ」
疑問に思う事が多いがとりあえずこの部屋に悠真が居るのか確かめる事にしてみた。
ガチャッ
ドアノブに手を掛けてみると、鍵は掛かっていないらしくドアは簡単に開いた。開けると目の前には着替え中の悠真の姿が。
「!!」
「ひゃあっ」
入って来た朱里に気付いた悠真は素早く服を着る。その間、朱里は黙って後ろを向いた。きっちりとドアを閉め部屋の中で待機している。
(…悠真。一瞬だったけど体の傷……)
「何しに来た」
冷たく、低い声が響く。後ろを向いたままの朱里は答えられずモジモジする。そんな朱里に悠真はため息を洩らす。
「……た、立ち聞きした事…謝りに来たの」
「……その件はもう良い。その代わり、もう二度と俺に関わるな」
悠真の口から放たれた言葉は“拒絶”だった。何を言われても平気だった朱里だが“拒絶”は違った。心の底に突き落とされたような、そんな感覚に落ち入った。




