秘密 3
襖の向こうには悠真と時雨の姿が見える。部屋は和室で畳の匂いが漂う。そこに悠真は座布団に座り、時雨は壁に寄り掛かっている。
「…それで、今回の修行で精霊王の力をどれぐらい使ったんですか?」
「…………」
悠真は不満そうに机に頬杖をつく。そんな悠真を見て時雨はやれやれと首を左右に振る。
「……分かっているでしょう? 精霊の力は人間にとって強大過ぎる、あなたの場合は体にかかる負担が大きくなります」
まるで子供に言い聞かせるかのように優しい口調で話始める時雨だが悠真の方は聞いているのかいないのか分からない。
「その話はもう聞いた…………最低でも一回は使った。これで満足か?」
キリッと悠真の鋭い瞳が時雨を睨む。朱里は自分が別世界に居るかのように錯覚してしまいそうだった。
悠真が立ち上がる。時雨が止めるよりも早く襖に向かって歩いて来る。ヅカヅカと速足でこちらに向かって来る悠真に朱里は慌ててしまう。
(どどどどーしよう! 逃げる所なんて無いよ)
「待ちなさい!」
慌てたような時雨の声に悠真は足を止める。朱里は思わず安堵した。
だが状況は変わっていなく、二人の空気はピリピリとしている。
「………」
「悠真。気分を悪くしたのなら謝ります…すいませんでした……質問を替えます。あなたは今まで精霊王の力を何回使いましたか?」
「……さぁな。覚えていない」
今度の質問にはいい加減だがきちんと答えた悠真。時雨の表情が柔らかくなる。
「そうですか……では最近、体に異常は?」
「ない」
(…あれ? これって健康診断?)
「……幸い、まだ体に異常は表れていないようですね。正直に言うと悠真…異常が表れる前に精霊王の力を使うのは止めなさい。でないと……死にますよ」
「…くっ」
(え………死ぬ?)
時雨はまだ悠真に何かを言い続けているが朱里には入ってこない。頭の中では“死”という言葉が繰り返される。
足元がおぼつかなくなる。視界が揺れる。
バランスを崩した朱里は尻から床に倒れこんだ。
「!!……誰だっ」
襖一枚で隠れていた視界が丸見えになる。朱里を見放したかのように見つめる冷たい悠真の目。ただ驚く時雨。不思議な事に朱里は冷たい目で見つめる悠真を怖いとは思わなかった。




